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私と農業

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......農業を目指す若者に、未来を......

その4(最終回)

 研究学園都市であるつくば市は、約7割が農業振興地域という田園都市でもある。その農村地帯に居を構えて7年。窓の外にはネギ畑などが広がる一方、夜景に浮かぶマンションやショッピングモールの明かりが都市を感じさせる。この居住地区の4割弱は農家となっているが、年々ただ耕すだけの畑が目立つので、本当に農業を営む家はもっと少ないと感じる。この辺りでも、耕作放棄地は、市の統計によると、耕地の1割を超えている。

 娘の婿さんJ君が結婚を機に、農業をやりたいと言い出した。土地も資金もない彼に農業で生計が立てられる未来はあるのか。当面の生活については、娘が看護師の資格を取り、しばらくの間は髪結いの亭主で凌ぐことで、新規就農がスタートし、3年目に入った。
 農地については、地域もご多分にもれず、担い手不足や高齢化により、借りることは容易である。借地は5km、4カ所以上に分散しているものも、合計すると1haを超える。親からの僅かばかりの資金援助を元に、トラクターを購入し、育苗用のハウスや井戸などを、わが家の近くに整えて、1人で頑張っている。最小限の資本の投下のため、収益性の低い露地栽培が中心で、冬のネギ、春のソラマメ、夏のカボチャ、秋のサツマイモなどを生産し、法人経営の直売所に出荷している。収益が計上できるのは、もう少し先である。
 これからの農業を目指すこのような若者が、今のわが国の社会構造のなかで、本当に経済的に自立していけるのか、確信はない。諦めないで地道に地域の信頼が得られるよう頑張って欲しい。消費者には、わが国の農業を育てるために、生産者が再生産できる価格を支持して欲しい。国には、農業を基幹産業として位置付け、優良農地が都市開発などに転用されないように守ること、そして何よりも訴えたいのは、厳しくとも安心して農業が続けられるよう、生活の基盤となる教育・医療などの社会福祉制度の充実である。

その1その2その3はコチラから)

【著者】小川 奎
           財団法人 日本植物調節剤研究協会会長

(2009.05.28)