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3Q訪問活動による絆の強化と仲間づくりを――JA共済事業がめざすもの
3Q訪問活動による絆の強化と仲間づくりを ――JA共済事業がめざすもの

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対談 今日の農業・JAの現状とJA共済の役割 その1

組合員・利用者の豊かな生活づくりに貢献できる強靭な事業基盤を構築
野村 弘 JA共済連経営管理委員会会長
今村奈良臣 東京大学名誉教授

 組合員・利用者に選ばれ、信頼されるJA共済の実現に向けて、JA共済事業は昨年度から新たな3か年計画に取組んでいる。「3Q訪問活動」を行動の核とし、平成19年度は生命共済で18兆円を超える新規契約を実現、建物更生共済(建更)と合わせた新契約実績は2年ぶりに30兆円台となった。こうしたJA共済の取組みとこれからの課題、そして事業基盤である農業・農村について、野村弘経営管理委員会会長と今村奈良臣東京大学名誉教授に忌憚なく語ってもらった。

今村氏(左)×野村氏(右)

厳しい環境下、2年ぶりに30兆円台の実績上げる

◆生命共済が目標 大きく上回る

野村弘 JA共済連経営管理委員会会長
野村弘
JA共済連経営管理委員会会長

 今村 この特集は、19年度の共済事業で優秀な実績をあげられたJAを表彰する場で配られるそうですが、19年度の実績はよかったようですね。
 野村 19年度は生命共済が目標を大きく上回り9年ぶりに18兆円を超える新規契約実績をあげました。これは18年度に比べると71%も伸びたことになります。建物更生共済(建更)は需要が一巡りしたこともあって目標を達成することができませんでしたが、生命共済と合わせた実績は31兆円となり、2年ぶりに30兆円台を回復しました。
 また、自動車共済も国内における自動車の新車販売台数が伸び悩み、損保各社が苦戦する中で、ほぼ昨年度並みの実績を残せましたし、自賠責共済では台数・掛金ともに目標を達成することができました。
 今村 共済・保険を取り巻く環境が厳しいなかですから立派なものですね。
 野村 いま原油価格と飼料や肥料の原料価格が高騰し、農家経営が圧迫されています。また、共済・保険業界においては、郵政民営化や保険の銀行窓販の開始によってさらに競争が激化するなど、JA共済を取り巻く環境は厳しい状況にあります。そのなかで、これだけの成果をあげることができたのは、LAをはじめとするJAの役職員の方々やJA共済連の役職員が、このような環境に負けまいと努力された結果だと思います。
 そして、全ての組合員・利用者を訪問する「3Q訪問活動」の成果がでてきたのかなと思います。
 今村 支払共済金の額も相当なものですね。
 野村 19年度の支払共済金は満期共済金と事故共済金などを合わせて3兆8278億円となりました。それだけ全国の組合員や利用者のお役に立つことができたと自負しています。
 今村 満期共済金のお支払いが多いようですね。
 野村 はい、件数で約260万件、金額で2兆3000億円強になります。生命共済の場合、30年とか長期の契約になるわけですが、それが途中で解約されることなく、満期を迎えたことは、ずっと信頼していただいたことになりますので、そのことに感謝しています。

◆米がつくれるのは一生に50回程度 農業はゆっくり進む

今村奈良臣 東京大学名誉教授
今村奈良臣
東京大学名誉教授

 今村 私は難しい問題に直面したときには、こういう発想をもって考えます。それは時間軸と空間軸の二つの基本視点を踏まえてじっくりと考えることです。時間軸はそれほど長くはありませんが、少なくとも戦後から今日までですね。空間軸は、欧米からアジア、さらに日本の各地域を見ます。
 そこで日本農業を時間軸で考えてみると、戦後の農地改革から今日まで60数年が経っています。農地改革から昭和40年代の高度成長時代の農業・農村は、一言でいうと「人多地少」つまり人が多くて土地が少ない時代でした。
 それが、この十数年来変わりまして「人少地多」つまり人が少なくなって土地は耕作放棄地が出るなどということになっています。また、少子高齢化が進み、若者が農業を継がない時代になってきたと思います。
 しかしながら、地域によっては優れた若者がいまして、そういう地域の農業は伸びていると思いますね。それから女性ががんばっている地域もよくなっていますね。
 私はこの60年をみてそう感じていますが、野村会長はいかがですか。
 野村 農地改革から始まった戦後の改革は、今村先生のお話のとおりだと思います。そして、今回の農政改革も大変な改革だと思います。この改革が本当に良かったのかどうかという判断をするには時間が必要だと思いますが、現時点で考えると、ちょっと急いだのかなと思います。
 製造業などの企業であれば、早いテンポの改革でもついてこれるかもしれませんが、農業の場合はどんなベテランの農家でも、一生のうちにできる米づくりは50回から60回くらいというように、農業はじっくり時間をかけて行うものです。そういう農村へ「改革ありき」で農政改革をすすめましたから、農村から見たら違和感があったし、それが昨年の参議院選挙の結果にも表れたのではないでしょうか。
 今村 なるほど。
 野村 もう一つ私の経験という時間軸でみると、私がJAの職員になったころは、夏でまだ日が高いときに仕事を終えて帰ろうとすると、農家の皆さんが田植えをしているので、田んぼに入って手伝いをしたりしました。今はそういうことが全くありませんね。そういうところをみると、農村というか、ムラ社会そのものが変わってしまったなと思います。
 今村 そうですね、かつては“<RUBY CHAR="結","ゆい">”とか互いに助け合うものがありましたね。
 野村 そういうものが影を潜めてしまいましたね。そして今は担い手を中心とした農業政策をすすめていくことになっていますが、本当に地域で信頼された人が担い手になっているかというとそうともいいきれないと思いますね。田舎の集落をまとめて農業を守りましょうというより、なかには儲かるときは儲けようという利益追求型の人もいますね。
 昔の笑い話にもありますが「ヒエとイネの区別もつかない」ような、農業の現場を知らない人が政策を考えているのではないかと思うことがときどきありますね。

◆「親切だ」と喜ばれている「3Q訪問活動」

 今村 改めて戦後からの農業をみて、そして今日の時点で共済事業の位置や役割、課題について考えた場合、いかがですか。
 野村 万が一の場合や災害が発生したときに保障の提供を通じて組合員・利用者の方々を支えるのが共済事業の役割ですが、JA経営にとっても共済事業は大きな支えになっていると思います。金融で融資が焦げ付いたり、経済事業で過剰投資をしてしまったりすることはありますが、共済事業の場合JAでは共済金の支払責任への備えについては、何の心配もいらないわけです。
 今村 そうしたなかで昨年度から「3Q訪問活動」に取組んでいますが、その意味はなんですか。
 野村 組合員・利用者にJA共済は認知されてきていると思います。しかし、30年満期というような長期にわたる契約をしていただいている方々が、万が一のときにどういう保障がされるか、契約内容を十分に理解していただいているのか心配です。
  ご契約をいただいているみなさんに、今一度契約内容をご理解いただくために「3Q訪問活動」を展開しましょうと決めたわけです。だから、このことで契約が増えるとは考えていません。
 今村 全国的にすすんでいるのですか。
 野村 まだ県ごとの温度差がありますが、21年度までの3年間でやるということになっていますから、この20年度が大事だと考えています。
 20年度の事業計画では、「絆の強化と仲間づくりの取組み」として、「3Q訪問活動」の実践を徹底することと、それを通じた「世帯内未加入者解消運動」や「紹介者依頼活動」を展開し、ニューパートナーを69万人以上獲得することを目標として掲げていますので、ぜひこれを実践していただきたいと考えています。
 今村 お客様としては、わざわざ訪ねてこられたら嬉しいですよね。
 野村 確認のために訪問するんですが、「親切だ」といってとても喜んでいただいていますね。
 今村 JA共済がこういう施策を掲げた後から、生保会社でも同じような取組みを打ち出して、PRしていますね。しかし、テレビで宣伝するだけでは効果は薄いですよ。ちゃんと訪ねて、あなたの契約はこうなっていますが、保障は十分ですかなど、アフターケアをすることが重要です。その結果、新しい契約が増えればとてもいいと思いますね。

◆組合員の暮らしに貢献しているJA共済

 野村 JAという組織は、JA職員と組合員の絆の強さが命なんですよ。だから、一人ひとりの職員が、組合員や利用者から信頼されていれば、仕事がものすごくスムーズに進みます。かつてはそういう絆がとても強かったですね。例えば、LPガスが残り少なくなるとLPガスの担当部署に連絡するのではなく、共済掛金の集金に訪ねてきた職員に頼むというように、信頼関係ができていたんですね。
 ところがいまは、コンプライアンスの問題から、なるべく集金は減らし口座振替に変更しようということになり、「JAは銀行と一緒だ」と組合員から苦情がでるような状況になってしまい、絆が弱くなっていますね。
 今村 JAは不特定多数ではなく地域のメンバーシップ制で、全員顔見知りという関係ですね。
 野村 その通りです。保険会社と違うのは、メンバーシップで運営しており、農家組合員などの地域を支える人々の暮らしに貢献していることだと思いますね。19年度のJA共済の共済金は、農林予算より多い3兆8278億円も支払っているんですよ。

◆歴史的経験踏まえ新たな挑戦をした新潟

 今村 最初に時間軸とともに空間軸の視点が重要だといいました。世界ということではなくて地域という空間軸を考えてみると、各地で台風や地震などの自然災害による被害が発生していますね。特に新潟県中越地震で大きな被害を受けた長岡市や旧山古志村では多くの人が建更に加入していて、その共済金が災害復興の資金となり、とても喜ばれたと聞いていますが。
 野村 JA共済としては契約していただいた方々にお支払いしただけのことですが、「JA共済があったおかげで町を復興することができ、本当に良かった」といって、新潟県知事から招待され、感謝の会を催していただきました。
 そのときに知事から聞いた話ですが、地震で大きな被害を受けたある県から「お互いに協力して地震に備える保険をつくりませんか」という提案があったそうです。それに対して知事は「私どもにはJA共済がありますから」と断わられたそうです。
 今村 本当に感謝されているのですね。
 野村 新潟はその後も中越沖地震が発生したことから、当分推進も大変だろうなと思っていましたが、昨年、新潟県の生命共済と建更を合わせた新契約実績が1兆円を超えました。JA共済の実績で1兆円を超えているのは、全国で埼玉・神奈川・長野・神奈川・新潟・静岡・愛知・兵庫・福岡の8県しかありませんから、大変なことです。
 今村 歴史的な経験を踏まえて、新しい可能性に挑戦しているといえますね。 野村 しかも建更だけではなく、生命共済とバランスよく契約されているんです。
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(2008.05.15)