特集

女性特集 第54回JA女性大会−いきいきした町づくり・村づくりをめざして
食料安保への挑戦(4)

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【第54回JA全国女性大会特集】
女性の皆さん 今こそ出番だ

東京大学名誉教授 今村奈良臣

◆女性が輝くJAはすぐれたJAである ...

◆女性が輝くJAはすぐれたJAである

 私はこれまで色々の機会に全国各地のJAの活動の姿を見てきた。その経験を通してみると、女性が輝き、活発に色々の分野で活動し、着実な実践を行っているJAは、共通してすぐれた成果をあげているJAであると確信している。
  「農業ほど男女差の無い産業はない」と青森のJA田子町の常務理事佐野房さんは言われたが、まさに的を射た発言だと私は痛感した。統計で見ても、農業の58%は女性が支えているし、他のどの産業をみても、これだけ女性が支えている産業は農業以外にはない。
  地域農業の活力の源泉は女性にあるし、その女性の持つエネルギーを活かしているJAはすぐれたJAである。

◆逆風が無いとタコは揚がらない

 「農業をめぐる環境はますますきびしい」とJAの男性の役員たちの皆さんは口を開けばこう言っている。たしかに昨秋のアメリカに発した金融危機、それを引き金とする不況の深化等々、日本経済をめぐる状況、JAをめぐる状況は厳しい。逆風が吹いているのである。
  しかし、逆風がなければタコは揚がらない。景気が悪くなれば農産物は売れないか。決してそうではない。人間の生存にとって不可欠な多彩な食料品は必ず売れている。台所を預かる女性は、都市でも農村でも同じである。すぐれた農村の女性の皆さんたちは、そのことを見抜いていて、「逆風が無ければタコは揚がらない」と堂々と言い放っている。このことを合言葉に、農業興し、地域興しに頑張ろうではありませんか。

◆女性の力で地域農業の六次産業化に全力を

 いまから14年前、私は全国の農村の皆さんに向かって「農業の六次産業化を全力をあげて進めよう」と呼びかけた。六次産業化とは、「一次産業×二次産業×三次産業=六次産業」のことである。農産物を単に農産物として売るのではなく、色々と加工して、販売しようということである。付加価値をふやし、所得をふやし、就業の場、雇用の場を農村の中に創り出そうという提案である。この提案は農村の女性に受け入れられ、燎原の火の如く農村に拡がった。農村の女性起業は平成9年度には4040事業体であったものが、同18年度には9444というようにいまや1万の大台に達しようとしている。さらに、地産地消をスローガンにした農産物直売所は、いまや1万3538(2005年農業センサス)と激増した。農産物直売所を本当に支えているのは農村の女性だと私は考えている。食と農の距離を縮め、次代を背負う子どもたちに食農教育を教え、食の安全、安心を更に追求するエネルギーは、農村の女性の皆さんの双肩にかかっていると私は信じている。

◆女性の皆さん、全員名刺を持とう

 名刺は「情報発信の原点である」と私は考え、名刺を作ろうと皆さんに訴えてきた。「たかが名刺、されど名刺」である。日本の農家の皆さんは、男性でも、農協の役員や農業委員などにならない限り名刺を持っていなかった。もちろん、女性で持っている人は皆無と言ってよかった。
  しかし、そうであってはならない時代になったと思う。自分の実践している仕事、自分の活動している内容を、肩書きにしっかり表現した名刺を作って、農村から都市へ、農村から消費者へとPRすることが欠かせない時代になっていると思う。名刺作りを印刷屋に頼むことはない。自分で作れないなら、子供さんやお孫さんに頼んでパソコンで簡単に、美しい名刺が作れる時代になった。自らの活動の内容が判る名刺、地域の活動を社会に広く伝えたいカラフルな名刺を是非作って欲しい。そうすれば名刺に恥じない活動を更に推進しなければ、と新しい意欲が次々と出てくると思う。それが、地域の活動の輪を更に拡げることにつながるのではないかと思う。

◆ピンピンコロリ路線の推進を

 農村の高齢化は一段と進んできている。それを嘆いていてはならない。私は農村の高齢者を決して高齢者と呼ばずに「高齢技能者」と呼んできた。農村の高齢者は生まれてから現在に至るまで頭から足の先までの五体の中にすぐれた技能と智恵を摺り込み養ってきた人々である。その技能と智恵を活かし生き生きと活動してもらうためには、女性の皆さんの支援とリーダーシップが必要である。農産物を作るのはうまいが売るのは下手だというお年寄りは多い。女性の皆さんの支援、協力のもと、老人ホームなどへ送り込むのではなく「ピンピンコロリ」路線を農村の各地で実現してもらいたい。

◆「Change」を「Chanceに」

 世の中は変った、困った、不況の嵐だと嘆いてばかりいても良くはならない。たしかに世の中は変った=Change=のであるが、それを好機=Chance=に変えようではありませんか。gをcに変えるだけで、新しい展望、新しい希望が生まれてくる。女性の皆さんのリーダーシップが、今ほど求められている時代はありません。今こそ出番です。

(2009.02.05)