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第51回全国家の光大会
第51回全国家の光大会

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文化と協同の力で守ろう暮らしと地域

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(社)家の光協会は2月10日、横浜市のパシフィコ横浜・国立大ホールで第51回全国家の光大会を開いた。大会では第59回家の光文化賞受賞JAや20年度普及実績表彰などが行われるとともに、全国から選ばれた記事活用、普及文化活動の体験発表が行われた。記事活用体験では初めて男性が農林水産大臣賞を受賞。教育文化活動の新たな展開を全国に発信する大会となり、参加者は改めて協同の大切さとJA運動の輪を広げることを誓い合った。

◆先人たちの奮起を想起する時代

江原正視会長
江原正視会長
茂木守JA全中会長
茂木守JA全中会長
石井清JA神奈川県中央会会長
石井清
JA神奈川県中央会会長

 『家の光』は今年5月号で創刊1000号を迎える。創刊時の大正14年は第一次大戦後の経済不況で農家の生活は厳しく、協同の大切さと当時の産業組合の仕組みを分かりやすく解説するために創刊された。その後、昭和初めの世界恐慌でさらに事態が深刻化するが、産業組合の拡充運動実践の学習・情報資材として位置づけられ、この厳しい時代に『家の光』は100万部を達成する。
 開会のあいさつで江原正視会長はこうした歴史に触れ、金融危機に端を発した景気後退や、予断を許さないWTO農業交渉の動向、食の安全・安心への関心の高まりなど「今日の状況は産業組合に結集し、農家生活と農村社会の危機を克服しようとした先人たちの奮起を想起させる」と述べ、歴史を胸に刻み、農業・農村・JAの理解促進のための情報発信や、JAの組織基盤と地域貢献活動を強化する「教育文化活動への支援に一層努めていく」と強調した。
 来賓の茂木守JA全中会長は「行き過ぎた市場原理が経済と地域環境を壊し、地域社会を崩壊に追いやった。社会全体にゆがみを引き起こしている今こそ、協同組合の出番。JAグループが気持ちをひとつにして取り組めば必ずや明るい展望が開ける。そのためにも引き続き教育文化活動を実践、強化していくことが必要不可欠」などと述べた。
 また、石井清JA神奈川県中央会会長は、「今、JAの組織基盤の強化のため、JAグループの特質である組織活動を各地域で展開することが重要になっている。教育文化活動が組合員・後継者に受け入れられる活動として大いに期待され、『家の光』にはそのヒントが詰まっている。今日の大会も活動のレベルアップと学習の場にし、横浜からさらに活動が全国に広がることを祈念したい」と話した。

◆男性で初めて大臣賞に輝く

三森伸治さん(JA阿蘇)
三森伸治さん
(JA阿蘇)

 記事活用の部で農林水産大臣賞を受賞したのは熊本県代表の三森伸治さん(JA阿蘇)。「実現する! 夢のかたち」と題した発表では「ライフプラン」づくりに取り組んだ成果を話した。
 きっかけは離農を決意した盟友に「夢を持って農業を、と自信を持って言えない自分」に気づいたこと。悩むなか、女性部活動では人生設計をつくる「ライフプラン」セミナーがあることを知り、JAと相談し青壮年部の研修としても計画。最初は消極的だった盟友たちも「10年後」を描くことの大切さを知るようになる。
 三森さん自身も自分の経営を分析するなかから、収益性の高い経営像を具体的な目標として掲げた。同時に「ライフプランには家族の夢を盛り込むことを忘れてはならない」と毎年の家族旅行も目標に。
 ライフプランづくりに取り組んだ盟友たちには、露地野菜から施設園芸へ、畜産の一貫経営へなど経営の高度化のほか、マイホーム、結婚などの夢を実現する仲間も。
 三森さんの活動で注目されたのは、このライフプランを「青壮年部の10年後」を描くことへと発展させたことだ。子どもたちに手作り料理を食べさせようと男の料理教室を開いたり、学校給食への野菜提供、防犯パトロールなどへと活動を広げていった。
 家族や仲間で夢や目標を話し合うなかで共通の意識と理解が生まれ、絆が深くなることで「夢が現実になる」。「厳しい時代に漠然と考えていては不安を生む。不安を安心へと変えていく。地域のライフプランにまで発展させていけば、農業がもっと楽しくなる」と話していた。

太田原高昭北大名誉教授
太田原高昭
北大名誉教授

 審査委員長の太田原高昭北大名誉教授は「ライフプランを作ろうした動機、取り組み内容、成果が極めて鮮明」と指摘、「ライフプラン」づくりは家族全体で取り組むことが課題となるなか「現実は先に進んでいる、新しい展開を示した」と評価した。
 記事活用の部での男性発表者が農水大臣賞を受賞したのは初めてのこと。


◆組織活動こそ協同を学ぶ場

濱地佳子さん(JA福岡市)
濱地佳子さん
(JA福岡市)

 普及・文化活動の部でJA全中会長賞を受賞したのは福岡県代表の濱地佳子さん(JA福岡市)の「教育文化活動は地道に! 継続的に〜組織の元気はJAの元気!」。濱地さんは入組5年。本店生活福祉課で女性部活動の新たな企画提案や支店担当者のフォローアップ業務を担当してきた。
 教育文化活動関係の研修会参加体験をきっかけに濱地さんは、『家の光』の記事活用を女性部の新たな活動に、と思い切って各支店担当者に提案。例年どおりの活動でいいのでは? と考えていた女性部に少しづつ変化が起き、環境問題、介護など新しい活動へ取り組む動きが起こる。それはやがて全支店に。「ちょっとした提案が全体へと輪を広げた。組織で活動するということは、協同の学びの場そのものだと実感しました」。
 その後、『家の光』に焦点を当て、食農教育や地域住民も参加できる料理教室などでの活用を図ると、組合員以外でも『家の光』に注目する人が増え「消費者との交流の幅も広がった」。
 こうした経験から普及の大切さを感じ「協同の精神を学ぶ教育資材」であると訴えてJA全職員の購読推進への取り組みや、JAの関係業者、学校へ見本誌を送るなど、JAグループの協同活動の情報発信に取り組む活動も展開している。
 普及率も年々伸び、20年度は30%超に。女性部を中心とした食農教育、文化活動などが活発になってきたが、そこには「地道な取り組みが基礎となった。女性部、文化指導員などの参加、協力もあったから。池に投げ入れた小石の波紋は初めは小さいけれど徐々に広がる。組織という池にちょっとしたアイデア、工夫を投げ入れることで組織が元気になるのかもしれないと思っています」と話した。
 太田原委員長は「JA職員としては駆け出しだが、女性部の活動には限りない可能性があると素直に受け止め、自ら提案。組織が変わり自分もまたそのなかで成長している」と審査委員会の評価を述べた。

◆地域での活動に「確信」を

家の光文化賞を受賞した3JAの代表者
家の光文化賞を受賞した3JAの代表者

 大会では、第59回家の光文化賞の受賞JA、「JA士幌町」(北海道)、「JAあいち知多」(愛知)、「JAながさき県央」(長崎)が表彰された。
 家の光文化賞は昭和24年に制定、これまでに延べ254組合を顕彰してきた。受賞JAには賞状と正賞(置時計)、副賞(賞金300万円)と、「ブラジル・コチア産業組合中央会記念賞」が毎回授与されている。ブラジル・コチア産業組合中央会記念賞は、第二次大戦後の日本の惨状を知った同組合の組合員、職員有志が農協の発展のために、と基金を集めて家の光協会に使途を一任した浄財をもとに創設された。

麻生大輔君
麻生大輔君

 また、今年の「ちゃぐりん」愛読者特別発表は千葉県・JAいすみ管内在住の麻生大輔君(小3)が同誌で地球温暖化を学んだ体験を発表。フードマイレージの考え方を知り、緑を増やすことやリサイクルが温暖化防止に重要なことを知った。農業の大切さについて「大人になったらお父さんのように米や野菜を作りたい。ここに生まれてきてよかった」と話し大きな拍手に包まれた。
 大会では「協同することの大切さを学び、JA運動に参加・参画する仲間と理解者を増やしJA運動の輪を広げる」などの申し合わせを確認した。

(2009.03.09)