特集

『稲作生産に大きく貢献するMY-100』

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長期残効と高い安全性に魅力の水稲用除草剤

 水田の重要雑草とうたわれているノビエに対して卓越した効果を示す水稲用除草剤原体(有効成分)の「MY―100」(一般名:オキサジクロメホン)が市場投入から9年目に入っている。JA全農が初めて農薬原体を所有したもので、「低コスト、安全・安心」を確保し、JAグループの農薬事業における最重点品目の一つに位置づけられている。現在、「MY―100」混合剤のアイテム数は相当数におよび、使用現場に適した薬剤が選択できる魅力があるほか、SU(スルホニルウレア)抵抗性雑草にも対応した製品が豊富にラインアップされている。特別企画として、水田雑草防除を巡る情勢と問題点を探りながら、改めて「MY―100」およびその混合剤の横顔を見ることにした。

◆水田雑草防除を巡る情勢と問題点

今日の水田雑草防除を巡る情勢と問題点を探ると、一番に挙げられるのがSU(スルホニルウレア)除草剤抵抗性の問題。1990年代の中頃からにわかにこの問題が指摘されるようになった。
しかしながら、抵抗性雑草は多くの除草剤で確認されているようなSU剤に特異なものではなかった。
抵抗性とは、「現存する雑草群の中から通常の除草剤の処理薬量に耐えられる雑草バイオタイプとして自然発生的に遺伝子を獲得すること」と話すのは、(財)日本植物調節剤研究協会の横山昌雄常務・研究所長。
「バイオタイプ」とは、明確な遺伝的変異をもつ、ある種の個体群のこと。
ともあれ、SU抵抗性雑草問題は、北海道を皮切りに、宮城県など東北地方を中心に指摘されるようになっていった。
コナギ、アゼナ、ミズアオイ、イヌホタルイなどで問題が指摘されたもの。一概には言えないが、「同じ有効成分の連用が主な背景としてあった」(同)と思われ、水田雑草も種族(属)保存の法則にのっとり、限りなく抵抗性を強めていったものと見られる。
また、ごく最近では、SU抵抗性雑草として「オモダカ」において、にわかに問題が指摘されるようになった。宮城県の一部地域を中心に、東北の各県からの指摘だった。
対抗策としてはクロメプロップ、プロモブチド、ベンゾビシクロンなどを有効成分とした薬剤が有効であり、「初期処理に限定される」(同)ことから、ベンタゾンなどの中・後期防除でのフォローが重要となってくる。
いっぽう、最近ではSU抵抗性雑草だけでなく、畦畔など水田の周辺に生息し、水田に侵入してくる雑草が増加してきている。
除草剤の種類も豊富になってきていることから、ほとんどの雑草を防除することができるが、除草剤の使用が増えること、散布の手間がかかることなどを考えると、水田の周辺や畦畔、灌漑施設の管理などを徹底し、水田への侵入を未然に防ぐことにこしたことはない。
その他、環境問題などへの配慮から、除草剤の散布から7日間は、「かけ流し・落水(らくすい)」させないことを、本紙でも指摘しておきたい。

◆広い処理適期幅 環境にも優しく

2000(平成12)年9月7日は、JA全農およびJAグループにとって極めて歴史的な日となった。「MY―100(オキサジクロメホン)」を含有する水稲用除草剤の上市記者会見が行われたからだ。JA全農が初めて農薬原体を所有したことが「歴史的な瞬間」の所以。
「MY―100」の発見は92(平成4)年のこと。JA全農とローヌ・プーラン油化アグロ(株)(当時・現バイエル クロップサイエンス(株))が共同開発したオキサジノン系の除草成分であり、現場からも早くからその登場が待たれていた。
有効成分であるオキサジクロメホンは、ノビエの発生前から2・5葉期までの処理適期幅をもち、かつ約50日以上の残効を示す優れたヒエ剤としてさっそうとデビューした。
しかも、10a当たりの投下薬量は4〜8gと、先行したヒエ剤の中でももっとも少ないレベルにあった。また、土壌吸着力が強いため地下水や河川への流出が少ないなど、環境にやさしい水稲用除草剤に仕上げられた。
高い除草効果と環境への負荷が少ないといった特長を有していることから、農水省の『親農薬開発促進事業』に除草剤として初めて取り上げられ、21世紀型の水稲用除草剤として国からも大きな期待が寄せられたことは記憶に新しい。
「MY―100」の特長は前述に加え、もう一つの側面として使用現場に適した薬剤が選択できるといった大きな魅力にある。SU抵抗雑草への対応や難防除雑草への対応にいち早く取組み、そのアイテム数を増やしてきた。
1キログラム粒剤、フロアブル剤、顆粒水和剤、ジャンボ剤など極めて豊富なバリエーションにもっていったことが特筆でき、最近では大型規格も登場させ、担い手や大規模農家にも柔軟姿勢で対応できる態勢も整えつつある。
生産者の生の声を集約したJA全農およびJAグループの水稲農薬に強いこれまでの蓄積をいかんなく発揮しているとの印象だ。

◆万全な抵抗性雑草対策 主な「MY―100」剤

◇ホームランキング(ゴウワン) MY―100によるヒエに対する残効性と、ブロモブチドとクロメプロップの相乗効果による抵抗性広葉雑草への安定した効果が期待できる一発処理剤。
◇ミスターホームラン 抵抗性アゼナやホタルイに効果があるMY―100剤。長い残効性のある一発処理除草剤。
◇シリウスターボ 藻類に効果が高いジメタメトリンの効果で田んぼがきれいになる。ベンゾビシクロンとジメタメトリンの相乗効果でSU抵抗性対策も万全。
◇キチット MY―100とSU抵抗性アゼナ・ホタルイに効果の高いベンゾビシクロンを配合した一発処理剤。
◇パットフルエース 抵抗性対策も万全。250g剤は豆粒状製剤で省力的に散布できる。ジャンボ剤も25g(10個/10a)と使いやすい。
◇黒帯 クロメプロップとブロモブチドを含有しており、SU抵抗性雑草に対して高い効果を発揮する。

(2009.04.06)