特集

新たな協同の創造とJA共済事業
JA共済事業特集

一覧に戻る

【人材育成:共済事務インストラクター】
事務処理の適正化・迅速化で顧客対応力を強化

 「ひと・いえ・くるま」への保障を提供するJA共済事業は、「形のないもの」を提供する事業である。もちろん仕組内容や掛金の額が加入にあたっての大きな要素となるが、最終的には人の魅力に負うところが大きい。そういう意味で文字通り「事業は人なり」といえる。JA共済連では19年度からの3か年計画で「組織活性化に向けた人材育成」を重点課題の一つとして掲げ、JA共済事業に関わる各部門・各階層ごとにさまざまな研修活動を含めた人材育成活動を展開してきている。
 今回はその中から、「共済事務インストラクター」について紹介することにした。

◆事務担当者もJA共済事業を支える力

JA共済事業を支える人といえば多くの人は「LA(ライフアドバイザー)」を思い浮かべるだろう。もちろんLAはJA共済事業を代表する人であることは間違いない。
しかし、JA共済事業で組合員や利用者と接しているのはLAだけではない。JA支所の窓口担当者(主にスマイルサポーター)や事務担当者も毎日、組合員や利用者と接しており、この人たちの対応がJA共済への信頼を深め絆を強めていることは間違いない。窓口担当者や事務担当者の対応が悪いと「JA離れ」となる可能性が極めて高いともいえる。
言葉を変えれば、LA、スマイルサポーター、そして事務担当者の3者がそれぞれに力を発揮し協力し合えるときに、JA共済事業が組合員・利用者からもっとも信頼され、選ばれることになるといえるのではないだろうか。
JA共済では、組合員や地域の人たちから選ばれるJA共済であり続けるために、顧客満足度(CS)向上をはかり、JA共済の信頼性を高めることがもっとも重要であると考えている。
しかし、JAが合併し広域化するなかでは、同一JA内であっても合併以前の歴史的な経過や職場風土が異なり共済契約に関する事務処理の手法は必ずしも事務処理に要する日数など均一化されていない部分がある。そのため合併後のJAでは事務処理の平準化を早急にはかっていく必要がある。
そのため組合員・利用者との接点となる全国のJAでは、共済契約の事務処理の適正化・迅速化、お客様対応力の強化、JA共済としてのコンプライアンス態勢の強化、を課題としてとらえ取り組んできている。

◆3年で倍増、全国に1855名のインストラクターが

これらの課題について、「全国のJAが自らの工夫や努力」によって、いち早く課題解消をはかっていくための一つの手段として、平成18年度にJA共済連は「共済事務インストラクター」制度を設定した。
この制度は、各JAが、JA職員の中からいままでの業務経験などにより、「共済契約の事務処理に精通した職員」を「共済事務インストラクター」として配置。JA本所(本店)や支所(支店)の共済担当者に、共済事業に関わる専門的な情報の提供や事務処理の適正化・迅速化に向けた支援・指導を行うことで、スマイルサポーター(窓口担当者)を含む共済担当者の業務知識のさらなる向上や顧客対応力の強化をはかることを目的として設定された。
また、継続して共済事務インストラクターの活動によるJA内の支援・指導を実施することで、共済事業に携わるJA職員一人ひとりのコンプライアンス意識のいっそうの向上や、共済契約の事務処理の適正化・迅速化がはかられるとJA共済連では期待している。
共済事務インストラクターは、JAの共済契約の事務処理に関する指導的立場にある人なので、JA共済の内部資格試験による共済契約の引受業務にかかる資格を取得し、連合会が実施している共済事業の事務処理全般に関する研修会を履修した人が認定される。
制度が制定されて3年が経過したが、共済事務インストラクター数は、18年度末の全国812名、19年度末1245名と着実に増加し、20年度末(21年3月末)には、18年度の2倍以上の1855名の共済事務インストラクターが、事務処理の適正化・迅速化、顧客対応力の強化に向けて全国のJAで活躍している。

◆契約保全と普及推進は車の両輪 JA京都にのくに

JA京都にのくに本店
JA京都にのくに本店

京都府のほぼ中心にある綾部市に本店を置くJA京都にのくには、平成9年9月に3市内の8JAと1専門JAの9組織が合併して誕生した広域JAだ。
JA共済事業は、JA経営にとって大きな柱であることから、合併当初から共済の普及推進にJAとして力を入れ、LAを増員するなど推進体制を強化してきた。
同JAの共済部門の各部署を経験してきた荒木本店共済部長は、「JA共済事業の普及推進と契約保全は車の両輪である」であると常々考えていたという。つまり、LAだけではなく、スマイルサポーターも事務担当者も育ち、「共済部門内で、それぞれが専門性をもたなければいけない」と考えていた。
だから18年度にJA共済連から「共済事務インストラクター」制度が提案されたとき「ドンピシャリ」だと思った。そして19年度からJAでも導入することにしたという。
現在、本店共済部業務課に2名の共済事務インストラクターが配置されている。原則として1件別案件処理には加わらず、係長などと同行して13ある支店(内、3統括支店)への巡回指導、共済担当者が日常業務で生じた不明点に対する電話などによる支援・指導。支店担当者やスマイルサポーター、LAの集合研修会を企画し、タイムリーな情報提供を行ったり、共済担当者同士の交流や情報交換をはかることが、主な役割だという。
支店巡回のときには、その支店の強みや弱みなどの状況・課題を把握し、本店共済部内にフィードバックして、各課が連携した解決策の検討を行うなど、本店共済部内でのコーディネート機能も果たしているという。
とくに効果があるのは、新入組職員や他部門から共済部門に異動してきた「新人への支援」だと荒木部長。そして、各支店における事務処理の適正化・迅速化に向けた意識が高まってきているとも。

◆秋には全国交流集会も計画

JA共済連では、こうしたJAの共済事務インストラクターの活動をバックアップするために、各都道府県本部に「共済事務指導員」を設置している。この共済事務指導員は、各都道府県本部の事務指導部門職員のなかから、共済契約の事務処理全般に関する研修会を履修した人を認定している。そして、共済事務インストラクターの活動を支援すると同時に、共済事務インストラクターと連携することで、JAにおける共済契約の事務処理の支援・指導も行っている。
JA共済連では、毎年開催される「LAの甲子園」ともいわれる「JA共済優績ライフアドバイザー全国表彰式」、昨年から開催された「スマイルサポーター全国交流集会」に続き、今年度は「共済事務インストラクター全国交流集会」を11月に開催する予定にしている。
これは各JAで個別に活動している共済事務インストラクターが各県から集まることで、互いの情報を交換し、今後の活動の一助にしてもらおうというものだ。さらに、事例集や日常活動で使用するマニュアルを作成する予定もある。
さらに22年度には、共済事務インストラクターを対象に、事務処理のさらなる改善に向けた提案活動を行うためのスキル習得を目的とした研修会を開催する予定にしている。ここでは、各支所・支店における事務処理の強みや弱みを把握・分析し、それに即した改善提案ができるような人材育成に取り組み、インストラクターの個人のスキルアップをはかっていくことにしている。
これからも各JAの共済事務インストラクターの活動が着実に進み「普及推進と契約保全はJA共済事業の車の両輪」として、JA共済事業をさらに伸長させていくのだろう。

各部門・階層ごとにさまざまな研修が
人財育成のためにJA共済ではさまざまな研修を行っている。その主なものを紹介する。
昨年度から始ったJAの新任役員を対象とした「JA共済担当役員セミナー」の第4回が10月15
17日、第5回が11月57日、いずれも幕張研修センターで。
将来の共済事業を牽引していくJAの中堅職員を対象とした共済基幹職員「次世代リーダー養成コース」は、第9期前期7月13
17日・後期10月2630日。第10期前期7月2731日・後期12月1418日。第11期前期8月2428日・後期1月1822日。第12期前期9月711日・後期1月2529日に幕張研修センターで。
自動車指定工場の損害見積技術を競う「第35回全国フロントマン選抜技術競技会」が11月19
20日、幕張研修センターで。
LAを対象にした研修会「共済機関職員研修LAステップアップコース」が、9月28
10月9日(170期)、11月3012月11日(171期)、22年2月1526日(172期)、3月112日(173期)幕張研修センターで。

(2009.05.19)