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戸別所得補償制度への期待と不安―現場からの声(2)

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戸別所得補償制度への期待と不安―現場からの声(2)  計画生産への取り組み重視して〜齋藤隆幸さん(山形県)

農事組合法人りぞねっと(山形県)
代表理事 齋藤隆幸氏

 新政権の農業政策の目玉、戸別所得補償制度は平成23年からの本格実施に向けて、来年度から米戸別所得補償制度と水田利活用自給力向上事業がモデル事業としてスタートする。現在、制度設計が検討されているが、生産現場では期待と同時に不安もある、と聞かれる。今回から同制度に対する産地の声を紹介していく。今号は東北地方の意見を聞いた。
 第2回は、山形県の農事組合法人りぞねっと代表理事の齋藤隆幸さん。「 原点は日本人の胃袋の大きさと供給する側の生産量をいかにイーブンにするかだと思います。主食用米を何十万トンも多く作り、直接支払いをしますから、ということでは財布(財政)はパンクする」という・・

農事組合法人りぞねっと(山形県) 原点は日本人の胃袋の大きさと供給する側の生産量をいかにイーブンにするかだと思います。主食用米を何十万トンも多く作り、直接支払いをしますから、ということでは財布(財政)はパンクする。
農事組合法人りぞねっと代表理事齋藤隆幸氏 だから来年はいかに計画生産を達成するか、が大きなテーマではないですか。今、JAグループの役割は大きいと思う。しかし、今年の例からも、踏切料があっても生産調整に参加しない人はいることが分かりましたから、JAグループとしては超過達成をする。そしてその分の所得は補償してもらうという仕組みができないか。そうやって手取りが公平になるようにする。
 米粉用・飼料用米などの生産も主食用米の生産調整への参加とリンクさせるべきです。水田を計画的に利用して自給率を上げることが目標ではなかったか、と思うからです。トウモロコシや小麦の輸入をどれだけ抑えることができたか。その数字が食料自給率として反映されてくる。つまり、今回の直接支払い制度はだれかが利益を得るということではなくて、輸入穀物に対して競争力を持つための仕組みづくりだと思います。
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 飼料用米でもSGS(ソフト・グレインサイレージ)は、籾殻つきで乳酸発酵させる方法でこれは牛に使えます。地元では今年2年目で畜産農家も積極的になってきました。だから今、飼料用米は鶏には籾殻付きで、豚には米粒で、牛にはその両方が使えるようになってきた。SGSは肥育には利用できませんが繁殖と乳牛には使えますから、自給率向上に貢献できる。
 米粉の普及は食文化として定着させる必要もあります。自給率向上のためだという国民運動的な取り組みがも求められると思います。
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 戸別所得補償制度は個々の生産者に直接支払う仕組みと盛んに言われますが、どの水田に何をつくるか、水田台帳ベースで明確にならなければ支払いはできないはず。
 結局、自分たちの地域でどういう生産をするかを描くことが大事だということに変わりはないと思っています。地域の水田をどう使うか、しっかりした生産計画が大事だと思います。
 導き出された農業政策の上で農業者それぞれが水田を守ってどう自給率を上げていくか努力していこうということです。現場から声を上げていくことが大事だと思っています。

(2009.11.13)