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2009年の重大ニュース

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農政・農協・農業界の2009年重大ニュース

 2009年が幕を閉じるにあたり、今年本紙で取り上げた農政・農協・農業界の重大ニュースをピックアップして紹介する。

(1)選挙による初の政権交代が実現

 自民中心か、それとも民主中心か―。真夏の政権選択選挙となった第45回衆議院選挙は8月18日公示、30日に投開票が行われた。結果は民主党が308議席を獲得して圧勝。日本政治史で初めて国政選挙で野党が民意を集め政権交代が実現した。
 社民党、国民新党を加えた鳩山由起夫・民主党党首を首相とする連立政権は9月16日に発足。農政では赤松広隆農林水産大臣をトップに新体制がスタートした。
 赤松農相は就任会見で「農業・農村再生のいちばんの柱は戸別所得補償制度。国民との約束であり着実に実行していく」」と強調。22年度予算概算要求に戸別所得補償のモデル事業実施予算を盛り込んだ。


(2)「新たな協同の創造」をめざす
 ―第25回JA全国大会―
 
第25回JA全国大会 10月8日東京・渋谷のNHKホールで3年ごとに開催される第25回JA全国大会が開催された。今大会のテーマは「大転換期における新たな協同の創造」。昨年に秋の米国発金融危機をきっかけに「米国型の市場原理主義への過度な偏重を見直す動きが強まっている」ことを大会議案は指摘し、協同組合理念に基づく事業・活動が再評価される環境が生まれ始めているとの時代認識を示した。
 大会議案ではJAグループが具体的目標として「消費者との連携による農業の復権」、「JAの総合性発揮による地域の再生」、「協同を支える経営の変革」の3つの柱を掲げた。
 前日の7日にはパシフィコ横浜を会場に記念シンポジウムや分科会を開き一般消費者も参加、2日合わせて延べ約5000人が集まった。大会では「地域で必要とされる組織として機能を発揮していく」などの特別決議も。今後のJAグループの実践が期待される。


(3)農地法が大改正
 ―JAの農業経営も可能―

 農地法等の一部を改正する法律が国会で可決・成立し6月に公布、12月15日から施行された。
 今回の改正は農地の「所有」と「利用」を分離し最大限に有効活用を図っていくのが大きな狙い。農地についての権利を持つ者について「適正かつ効率的な利用を確保しなければならない」との責務規定や、地域との調和に配慮した権利取得の促進を明記したうえで、貸借規制を緩和し一般企業による農業参入にも道を開いた。
 一方で農地の公共施設への転用についても協議制とすることや、違反転用の罰則を強化し罰金300万円を1億円に引き上げた。
 農協よる農業経営も可能になり、合わせて農協も改正され一定の条件で組合員の合意があれば直接経営できる。第25回JA全国大会決議でも地域農業維持の観点からJAによる農業経営への取り組みを進めることを盛り込んだ。
 21年7月15日現在の460万9000ha。前年より1万9000ha減少した。

(4)21年産米 作況「98」
 ―北海道では不良―
  
21年産米作況 21年産米の作況は全国で「98」となったが、北海道では7月中・下旬の低温の影響による不稔もみの発生に加えて、その後も低温傾向が続き登熟不良となり作況は「89」となった。北海道で作況が「不良」(94以下)となったのは平成15年の「73」以来。
 作付け面積は162万1000haで前年並み。主食用作付け見込み面積は159万2000haとなった。転作にカウントされる新規需要米の作付けは米粉用2300ha、飼料用4100haの見込み。
 12月8日公表の統計では収穫量は846万6000tでこのうち主食用は830万9000t。6月末現在の主食用需要見込みは821万tとされたことから、不作でも約10万tの過剰となっている。
 農林水産省は11月末に22年度の主食用生産数量目標を813万tとした。


(5)世界金融危機、信用事業に打撃
 農林中央金庫が5000億超の損失

 世界的な金融危機の影響で農林中央金庫の09年3月期決算内容は経常損失6127億円、当期純損失5657億円となった。経常利益が赤字になるのは1996年3月期以来、13期ぶりのことだった。保有する株式、証券化商品で減損処理が発生したことによる。
 農林中央金庫は全国のJAなど会員から1兆9000億円増資を3月末までに実現。河野理事長は「会員の絆の強さを実感した」と記者会見で強調した。
 増資にともなって今年度から4年間の「経営安定化計画」を策定。強固な財務基盤の構築と会員への安定的な収益還元、農林水産業を基盤とする協同組織中央機関としての農林水産業への貢献、を柱とした。
 11月に公表した今期の半期決算では経常利益は1120億円、半期純利益は618億円と業績は回復した。
通期では経営安定化計画で目標とした500?1000億円の経常利益達成を見込む。

(6)大手町に新JAビルが竣工

新JAビル 昭和39年に竣工してから長きにわたり農協運動の拠点となってきた東京・大手町のJAビルが5月7日、同じ大手町に完成して新ビルに移転した。
 新JAビルは37階建ての高層ビル。JA全中のほか、JA全農、農林中央金庫の事務室があるほか、4階には農業・農村情報とJAグループの活動を発信する農業・農村ギャラリーもオープンした。
 4月22日には竣工披露式典があり、麻生前首相や各政党の代表者も招かれた。
 茂木JA全中会長は「広く国民に対して安心で安全な食料を安定的に供給するというJAグループの使命を果たすための拠点にしたい。気持ちを新たに業務遂行をすすめていきたい」と誓った。


(7)新型インフルエンザが発生

 メキシコで発生した豚由来のA型H1N1の新型インフルエンザは4月に日本でも感染者が確認されるなど、瞬く間に世界に拡大した。
 農業分野では鳥インフルエンザの発生が懸念され今年も5月に愛知県でウズラに被害をもたらす高病原性鳥インフルエンザが発生した。愛知県の発生例は移動制限がすべて解除されるなど終息をみたが、高病原性鳥インフルエンザの発生リスクには注意が必要なことに変わりがないという。
 一方、豚由来の新型インフルエンザに対して農林水産省は5月に養豚農場に対するサーベイランス実施を都道府県に依頼するなどの対策をとった。これまでに新型インフルエンザの感染例の報告はあったが大きな被害にはいたっていない。
 これに対してヒトへの感染は厚生労働省のまとめによると11月中旬までに国民の14人に1人程度がインフルエンザで医療機関を受診したと推定されるという。受診者の1200人に1人が入院、入院患者の16人に1人が重症化し受診者14万人に1人が死亡したと推計されている。


(8)今年の豪雨、台風、地震被害

 今年は低温、日照不足による農業への影響が懸念された地域もあったが、7月末からは豪雨、台風、地震による被害もあった。
 7月19日から26日にかけて山口、福岡両県を中心とした中国・九州北部豪雨(7月27日気象庁命名)では7月末時点で死者29人、行方不明者1人、負傷者25人とされ、水田への冠水など農林水産被害額は約300億円となった。
 8月中旬の台風9号は近畿・中四国を中心に被害をもたらし20名以上の死者、負傷者が出た。また、農林水産関係被害も約140億円にのぼった。
 10月初旬には大型の台風18号が愛知県に上陸し列島を縦断。上陸地の愛知でビニールハウスの損壊などの被害が大きく約278億円の被害額となった。
 そのほか、8月下旬には駿河湾を震源とする地震が発生。約10億円の農林水産被害が出た。

(2009.12.28)