特集

平成22年度 農薬危害防止・安全防除運動

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【農薬危害防止・安全防除運動】 登録農薬選び、ラベル記載事項をしっかり守ろう

飛散低減ノズルの使用、散布機具の洗浄、保管管理などの徹底を
・住宅地・公共施設周辺では農薬飛散防止の措置を
・農薬を適正に使用することが、農家・農産物・環境の安全につながる

 平成22年度農薬危害防止・安全防除運動が、6月1日〜8月31日の3カ月間、農水省や厚労省、各都道府県およびJAグループなどを挙げて実施されている。
 農作業が忙しくなる6月をさらに気を引き締めて防除作業を行うための推進月間に位置づけているもの。
 防除に当たっては、農薬の適正使用が基本。使い慣れた農薬でも、使用する前には必ず農薬容器のラベルを再度チェックしよう。農水省・農薬対策室、JA全農 肥料農薬部 農薬課にご寄稿いただき特集とした。

農水省・農薬対策室

住宅地・公共施設周辺では
農薬飛散防止の措置を

 
 農林水産省は、本年度も、厚生労働省及び都道府県との共催で、農薬の適正な使用や環境への影響に配慮した使用を推進するため、農薬の使用機会の多い6月から8月にかけて「農薬危害防止運動」を実施しています。
 農薬を使用している皆様は、日頃から農薬の適正な使用に努めてくださっていることと思いますが、残念ながら農薬の使用に伴う人や家畜などに対する被害が依然として見受けられますので、以下の点に注意し、農薬を適正に使用してください。
 農薬による危害を防止するためには、登録のある農薬を選び、容器などに付されているラベルに記載された使用方法に従って、正しく使用することが基本です。使い慣れた農薬でも、使用者の慣れによる油断など、不注意により中毒事故などが起こりますので、再度ラベルの注意事項を確認し、使用しましょう。
 農薬を使用する際には、農薬用マスクや防護メガネなどの防護具を適切に着用しましょう。また、使用する場所の周辺で栽培されている他の農作物への飛散を防止するため、飛散低減ノズルを用いるなど必要な措置を講じましょう。さらに、農薬の使用前後に散布機具が洗浄されているか確認しましょう。
 農薬の保管管理も重要です。誤用されることがないよう、農薬は鍵のかかる場所で保管しましょう。特に毒劇物にあたる農薬は、区分して保管しましょう。また、誤飲されることのないよう、ペットボトルなどの食品の空き容器などに小分けしたり、移し替えて保管するようなことは、絶対にやめましょう。
 住宅地や学校などの公共施設の周辺で病害虫防除を行う場合は、防虫網の使用や人手による害虫の捕殺など、できるだけ農薬を使用しないようにしましょう。やむを得ず農薬を使用する場合は、近隣に影響が少ないと考えられる天候や時間帯を選び、風速、風向きやノズルの向きに注意するなど、農薬の飛散を防止するために必要な措置を講じましょう。
平成22年度 農薬危害防止運動 また、チラシや看板などで、散布する日時、使用する農薬の名称などを、周辺の住民の方々に事前にお知らせすることも重要です。
 土壌くん蒸剤を使用する場合は、薬剤が揮散し周辺に影響を与えないよう、すぐにビニールなどでしっかりと被覆しましょう。
 水田で農薬を使用する場合は、農薬の効果を十分に発揮させるとともに、河川など周辺環境への影響を少なくするために、ラベルに記載された止水期間を必ず守り、畦畔の整備を行った上で適切な水管理をしっかりと行いましょう。
 また、近年、減少が問題となっているミツバチの放飼場所や放飼時期に十分留意して農薬を使用しましょう。養蜂家と農薬を使用する方との間で農薬の使用に関する情報交換が行われるような仕組みを作りましょう。
 このような取組を通じ、農薬の適正な使用について、関係者の皆様の一層のご協力をお願いします。

農薬事故発生件数の推移   原因別農薬中毒事故割合


JA全農 肥料農薬部 農薬課


農薬を適正に使用することが、
農家・農産物・環境の安全につながる

 

 病害虫・雑草の防除対策の基本は、病害虫の発生しにくい環境を整えるとともに、病害虫の早期発見と適期に効果的な防除で農作物の被害をより少なくすることができます。
 防除手段はいくつかありますが、安定的な農作物生産のためには農薬は必要な防除資材であるものの、使い方を誤ったり注意を怠ると農作物や環境などに悪い影響を与えてしまいます。
 JA全農では昭和42年より安全防除運動を展開しており、農薬を正しく適正に使用していただくための取り組みを続けています。
 農作業が忙しくなる6月をさらに気を引き締めて防除作業を行っていただくために、推進月間と位置づけ資料の作成や各生産現場での指導を行っています。


◆農薬の適正使用が基本に


 農薬は、使用できる作物や対象とする病害虫・雑草とともに、収穫時には残留農薬基準以下となるよう使用時期・使用量・回数、散布方法などが決められています。また、効果や薬害、安全性などが試験によって確認されれば使用方法が変更されます。したがって、使い慣れた農薬と思っても、農薬を使用する前には、必ずその農薬容器のラベルで、使ってよい作物なのか使用時期は適切かなどを確認し、適用範囲で使用することです。
 防除内容を正確に記録しておくことも大切です。成分ごとの使用回数、収穫前日数などは、農薬散布前に日誌を活用しチェックします。さらに、出荷時の的確な防除を行っていた証明にもなります。


◆周辺への配慮とていねいな散布作業を

 農薬を適正に散布していても飛散を防ぎきれない場合もありますが、事前の防止対策、散布時のきめ細かな対応によりリスクを減らすことはできます。より飛散の少ない剤型や周辺作物にも適用がある薬剤への切り替え、風や散布方向に注意するなどの飛散防止の基本となる散布方法をしっかり行なうことが大切です。水田で農薬を使用する場合は、安定した効果とともに水系への農薬流出を防ぐために、農薬散布後7日間の止水管理を徹底して下さい。
 さらに、住宅地や公共施設、養蜂場など圃場近くにある場合は、農薬散布を事前に連絡し、被害防止のための対策を地域一体となって実践して下さい。


◆管理の徹底が安全につながる

安全防除啓発チラシ(裏面) 生産者の健康管理、散布機具の整備、農薬の保管・管理と、あらゆる場面で管理を徹底していくことが事故をなくし、安全につながります。
 農薬を使用する時は、面倒と思わず保護具をしっかり着用してください。
 さらに、散布器具は日頃から整備しておき、使用前の確認、使用後の確実な洗浄で安全な散布作業を実施していただきたいと思います。
 安全防除のための啓発チラシを作成した。特に注意していただきたい事項を記載(裏面・画像左)したので活用していだきたいと存じます。

(2010.06.16)