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特集「生産者の所得向上とJA全農の役割〜国産農畜産物の販売力強化をめざして〜」

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【全農特集】Aコープ―コンセプトの明確化で事業強化を

・販売拠点として産地開発も積極的に
・新しいタイプのAコープに挑戦
・イベントや品揃えでも相乗効果高める
・最大のメリットは「直売所がある」

 「組合員の暮らしを守る拠点」として各JAが運営してきたAコープは、県域・ブロック域で一体化、会社化、再編をすすめ、平成19年4月1日に全国Aコープ協同機構を設立した。21年度末で17社1県本部と農協流通研究所、JA全農が加盟し、全国で556店舗、総販売額は3314億円となっている。
 今年度からのJA全農3カ年計画で最大のテーマは「国産農畜産物の販売力強化」だが、Aコープにはその販売拠点として、その役割の明確化と新しい業態の出店などによるさらなる競争力の強化が期待されている。

徹底的に地産地消を推進し
国産農畜産物にこだわる


◆販売拠点として産地開発も積極的に

 

 Aコープが一般的スーパーと一線を画すのは、「JA(農協)グループのお店として、農と地域に根ざした店づくり」をめざしている点だ。このコンセプトは、JAグループ内におけるAコープの位置づけにもなっている。
コンセプトの明確化で事業強化を その具体例の一つが国産農畜産物へのこだわりだ。
 全国Aコープ協同機構では生鮮野菜・精肉の「国産こだわり宣言」を掲げている。
 まず第一に取り扱うのは地元産、それが無理なら県内産、国内産、と徹底して地産地消を推進している。精肉の取り扱い品目は100%国産だ。生鮮野菜についても、国内ではどうしても生産できないものや、端境期で調達できない品目など一部を除いては輸入品を並べない。
 さらには、そういったブロッコリー、レモンなど一部品目を「輸入ガイドライン野菜」として定め、輸入に頼らなくても商品を揃えられるよう、産地の開発にも積極的に取り組んでいる。

 

◆新しいタイプのAコープに挑戦

 

 機構では「生産者直売コーナーの100%設置」をすすめている。
 これはAコープ店内に地元産品の直売所コーナーを設け、「国産こだわり宣言」や国産原料を優先的に使うエーコープマーク品の推進とともに国産品を応援し、地元生産者を支援する取り組みだ。
 しかし近年、大型のJAファーマーズマーケット(FM)出店が全国的に広がり、Aコープ直売コーナーとの間で組合員や顧客の競合が起きてきた。また消費者の国産農畜産物ニーズの高まりに伴い、同業他社でも直売事業を始めたり直売コーナーを設置する店舗が増えた。
 このままではAコープの独自性が薄れるとともに店舗事業全体が落ち込むとの危惧から、Aコープの役割とJAグループの社会的機能を最大限に発揮するため、JAFMとAコープをセットにして協同出店することにした。
 これが新しいAコープの形である「直売所併設型店舗」だ。
 新型店舗の第1弾は、昨年12月に沖縄県那覇市にオープンした「(株)JAおきなわAコープ Aコープマルシェなは店」だ。
 インショップ型の直売所が簡素な木組み棚などで直売所のイメージや独自性を演出する一方、Aコープはオシャレな雰囲気の売り場づくりをしている。運営はJAおきなわAコープだが、生産者の募集や営農指導などの面ではJAが積極的にかかわっている。
 7月には新型Aコープ2店舗目となる「Aコープファーマーズうえだ店」が長野県上田市にオープンした。
 今後も全国各地のJAと協同しながら、「競争力ある店舗展開」をめざす方針だ。新しい施設を建設するだけでなく、各地の要望に応じて、「既存店舗でも、Aコープ売り場の面積を減らしてでもこのタイプの併設型店舗を拡大させたい」(機構担当者)考えだ。

 


JAにしかできない店舗づくりで差別化を

Aコープファーマーズうえだ店

左がAコープ。右にJAの直売所が併設されている(写真)左がAコープ。右にJAの直売所が併設されている


場所:長野県上田市国分80番地(上田市立第一中学校隣)
TEL:0268-27-5580
営業時間:平日9時30分〜20時30分

 


◆イベントや品揃えでも相乗効果高める

 Aコープファーマーズうえだ店は、長野県下34店舗目のAコープとして7月9日にオープンした。
 Aコープに地元JAのFMを併設する新しいタイプのAコープだ。県内最大規模を誇る売り場面積640坪のうち150坪が、地元のJA信州うえだが運営するFM「マルシェ国分(こくぶ)」になっている。
 現在、マルシェ国分に出荷している生産者会員数は約450人。新たなFMができるとあってJAが改めて出荷希望者を募ったところ、これだけ多くの生産者が名乗りをあげた。
 店内の壁には会員の顔と名前が一覧掲示されており、「安心安全な地元農畜産物」をアピールしている。店の敷地に面した幹線道路が昨年開通したことや、高速道路の上田菅平ICから約5分というアクセスのよさから、生鮮品、加工品のほか、遠方からの来訪者をターゲットにした地元のお土産品コーナーも充実している。
 大型FMが併設されているため、Aコープ売り場内の生鮮青果物は、時期的に地元で採れないものや贈答用などが中心で売り場面積はやや控えめだ。
 一方、Aコープ売り場ではFMでの取り扱いが難しい精肉が充実しており、JA信州うえだ管内にあるタロウファームのSPF豚などを中心に、地元産にこだわった品揃えをしている。店内でつくる惣菜なども地元食材にこだわり、マルシェ国分内にも特設コーナーを設けている地元産米の「今摺り米(いまずりまい)」を使ったお弁当も人気だ。
 同敷地内のJA資材店舗では、毎週金曜日に家庭菜園講座も開くなどJAならではのイベントも開催し、様々な点で地元JAとの協力を図りながら店舗併設の相乗効果を高める工夫をしている。

◆最大のメリットは「直売所がある」

7月9日のグランドオープンの様子(マルシェ国分店内) 上田駅周辺や市街地には大型スーパーがあり、郊外には昔ながらのローカルスーパーが根強い人気を保つ。この地域には競合他社が多く、競争は激しい。
 それをどう勝ち抜くか。同店の依田稔店長は「直売所がある、というのが何よりの強み。他社ではマネできないほど、地元産を取り揃えている点も重要だ。こういったJAグループにしかできない店舗づくりをすすめて、他社との差別化をすすめたい」という。またこれからの課題については、「直売所とAコープとでそれぞれバランスよい品揃えを維持するため、直売所を運営するJA営農部との計画づくりが大事だ」と述べた。
 Aコープを運営するJA全農長野県本部でも、今後は県内各地で同タイプの店舗を拡大していく考えだ。
 また同店は大型FMを併設しただけでなく、惣菜や鮮魚の調理が手元まで見えるオープンキッチンスタイル、新しい床材やLED照明を取り入れた省エネ対策、高齢者でも手軽に扱えるアルミ製買い物カート、そのほかショーケースや陳列方法など、あらゆる点で先進的な試みを取り入れた「新型Aコープ店舗づくりのモデル」にもなっている。効果が認められればすぐにでも他店舗へ水平展開し、Aコープ全体の店舗事業強化につなげていく方針だ。

(写真)7月9日のグランドオープンの様子(マルシェ国分店内)

(2010.09.07)