特集

シリーズ・地域と命とくらしを破壊するTPP―その本質を考える
TPP賛成?反対?

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【緊急調査】全国市町村長に聞く―TPP問題  農業・農村の壊滅を強く懸念

・TPP参加で「農業に悪い影響」は84%
・賛成はわずか7% 人口ウエイト集計
・農業と商工業の対立
・農村と都市の対立
・「どちらでもない」派の困惑の意味とは?
・政府は説得できていない
・拙速なTPP参加決定は止めよ

 小紙では政府が昨年11月に「包括的経済連携に関する基本方針」を閣議決定して以降、この問題を幅広い視点で考えるため昨年末から「シリーズ・地域と命とくらしを破壊するTPP その本質を考える」を連載してきた。
 今回は、全国の首長らはTPP問題をどう考えているかを探ろうと、3月から4月にかけて緊急アンケート「全国市町村長に聞く どう考えるか? TPP参加問題」を企画し、全国の首長あてにTPPとその影響についての意向調査を行った。ただし、3月11日に東日本大震災が発生したことから、東北地方の一部自治体への依頼はあらかじめ控え1650の首長あてとした。回答は638の首長から寄せられ、7割が「TPP参加に反対」を表明した。

緊急調査
回答638人 「参加反対」が73%


TPP参加で「農業に悪い影響」は84%


 回答を寄せた638人の市町村長のうち、TPP参加に「強く反対」が226人、「反対」が239人だった。一方、「強く賛成」と「賛成」は合わせて28人。
 そのほか「どちらでもない」と態度を明らかにしなかった回答が121人だった。
 無回答も含め態度を明らかにしなかった回答を除いた集計では、「反対」が85%、「賛成」が15%と圧倒的に反対が多い結果となった。
 また、賛成、反対、あるいは「どちらでもない」という回答者も含め、TPPに参加によって「農業に悪い影響がある」と考えている回答は84%を占めた。
 関税撤廃を原則とするTPP参加に農業・農村への打撃を懸念する声も大多数を占めているのが現状だといえる。
 以下では、森島賢立正大学名誉教授にアンケート結果を分析してもらった。この集計では市町村の人口数を勘案している(本紙編集部)。

TPP賛成?反対?


 本紙は、3月から4月にかけて、全国の全ての市町村長を対象にして、TPPについてのアンケート調査を行った。東京は特別区長を対象にした。その結果、638人の市町村長から回答が得られた。これは、全市町村長の36%に当たる。
 この種の調査では、異例ともいえるほどの多数の市町村長の協力が得られた。ここで、改めて感謝申し上げたい。
 アンケート調査の結果の詳細から、多くの市町村長がTPPに反対していることが明らかになった。ここでの集計結果は市町村の大きさを反映するように、人口をウエイトにした割合で示した。


◆賛成はわずか7% 人口ウエイト集計

 まず第1に注目されるのは、TPP参加に対して圧倒的に多くの市町村長が反対していることである。反対が39%に達しているのに対して、賛成は僅か7%に過ぎなかった。
 態度を決めかねている市町村長を除いて集計すると、反対が83%で賛成が17%になる。つまり、6人のうち5人が反対で1人が賛成になる。
 しかし、54%の市町村長が態度を決めかねている。この点も見逃せない。


◆農業と商工業の対立

 態度を決めかねているなかで、多くの市町村長は、TPPは農業に悪い影響があると考えている(56%)。農業に良い影響があると考えている市町村長は1人もいなかった。TPPに参加して、日本の農産物を海外に売り込もう、などという一部の評論家に賛成する意見は皆無だったようだ。
 だが、その一方で、工業や商業には良い影響がある、と考えている市町村長が少なくない(27%と14%)。
 TPP参加問題には、農業と商工業との利害の対立がある、と考えているのだろう。前外相が言ったように、TPPに参加しないことは、わずか1.5%の第1次産業のために、第2次産業と第3次産業が犠牲になることを意味する、と考えているように思える。


◆農村と都市の対立

 この対立は、第6、7面で地域別に詳しく示したように、農村と都市の対立のようにも見える。
 北海道、東北、九州・沖縄などの農村部では、農業にも商工業にも、つまり日本の全産業に悪い影響があると考えている。しかし、南関東、東海、南中国、東四国の県のなかには、農業には悪い影響があるが、商工業には良い影響がある、と考えている市町村長も少なくない。
 こうした対立を残したまま、TPP参加を決めることは、対立を深め、将来に大きな禍根を残すことになるだろう。


◆「どちらでもない」派の困惑の意味とは?

 前に述べたように、過半数の市町村長は、TPP参加に賛成でもなく、反対でもなく、「どちらでもない」と回答している。態度を決めかねているのである。
 農業と商工業の利害が対立し、農村と都市の利害が対立する、と考えているので、困惑しているのだろう。


◆政府は説得できていない

 政府は、農業とTPPを両立させる、と言っている。つまり、農業と商工業、農村と都市は対立させない、両立させる、と言っている。前外相のように、対立したままで農業を犠牲にする、と考えているわけではない。
 だが、多くの市町村長は両立できない、と考えている。政府と市町村長の考えが、くい違っているのである。その理由は、政府の説明に説得力がないからである。両立できるなどと、もともと無理なことを言っているからである。


◆拙速なTPP参加決定は止めよ

 こうした中で、政府はTPP参加を決めようとしている。TPP参加を検討する政府の会合は、東日本大震災で中断していたが、12日に再開した。
 首相は、6月までにTPP参加・不参加を決める、といっていたが、期限を先送りするといった。しかし、油断はできない。
 検討が不十分のまま、拙速に重要な決定をすることは、首相の得意技である。警戒しなければならない。
(森島 賢 立正大学名誉教授)

 (下図)
人口ウエイトによる都道府県別集計結果

人口ウエイトによる都道府県別集計結果人口ウエイトによる都道府県別集計結果 

P6-7-map.jpg

人口ウェイトによる分析 

新しい国の形が見えない政府の情報、議論不足に不満


地方経済の崩壊を危惧する 声多数


アンケートの概要

アンケートの実施概要
○方法 郵送による質問表送付
○対象・地域 全国の1750市区町村長(東京都の特別区23を含む)
○期間 平成23年3月11日〜4月18日
○回答総数 638(回答率36.4%)
○アンケートの設問
1.あなたは、TPP参加に賛成ですか? それとも反対ですか?1強く賛成 2賛成 3強く反対 4反対 5どちらでもない
2.仮に、日本がTPPに参加すると、あなたの市町村にどのような影響があると思いますか?次のa〜jについて、それぞれよい影響、悪い影響、影響なしの3つから選んでください。a.農林水産業 b.工業 c.商業 d.医療 e.介護 f.保険 g.福祉 h.雇用 i.教育 j.財政
3.自由コメント欄

地域区分
○北海道(北海道)
○東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
○関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川)
○中部(新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知)
○近畿(三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
○中国(鳥取、島根、岡山、広島、山口)
○四国(徳島、香川、愛媛、高知)
○九州・沖縄(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)

【アンケート結果について】
 ここでの分析は、原則として1首長1票ではなく、各自治体の人口ウェイトに従って得票割合を変えて算出した結果を元にしています。そのため実際の回答数やその割合と、ここでの分析データの数値は異なります。
 東日本大震災の被災地については、諸般の影響で一部アンケート用紙の送付が適わなかったり、お願いを取りやめた地域もあります。被災地の皆様には改めてお見舞い申し上げます。

アンケートの実施状況 


 農業協同組合新聞では3月から4月にかけて全国の1650市区町村長(東日本大震災の被災地にはアンケートのお願いを取りやめた)に対し、緊急アンケート「市区町村長に聞く どう考えるか? TPP参加問題」を行い、全体で638の回答が寄せられた。
 アンケート結果を単純集計すると賛成4%、反対73%と圧倒的になったが、ここでは回答を出して頂いた首長の市区町村ごとに人口による加重をかけた分析結果と、TPPに対するコメントを元に、地域別の反応と併せて解説する。分析結果からは、人口の多い大都市の意見で偏りが出ること、国からの情報不足や政府内での議論が未熟であることで判断を決めかねていることが浮き彫りになった。


◆「賛成」多数は東京都のみ

 TPP参加の賛成・反対については、東京都を除く46道府県で「強く賛成」「賛成」よりも、「強く反対」「反対」の回答が多く、全国的に反対が賛成を大幅に上回った。地域別では北海道、東北、九州で「反対」が多く、「賛成」は関東、中国、四国に多い。
 ここではアンケート結果の数値を1自治体1票ではなく、各自治体の人口ウェイトに従って算出しているため、人口の多い大都市の回答に比重がかかる。単純な数の集計では「反対」が7割以上と圧倒的に多かったが、都市部で「賛成」や「どちらでもない」の回答が集中したため、賛成は全体の7%にあがり、「どちらでもない」・無回答を含めて態度保留の答えは54%と半数以上に伸び、反対はわずか39%に半減した。
 この結果から、人口の多い一部大都市の参加を求める声が、全体に強く影響していることがわかった。


◆政府の統一見解・試算は?

 反対の理由には、「食料主権の放棄につながる」、「(TPPは)アメリカ主導による日本経済破壊のシナリオだ」、「日本の伝統文化が破壊される」、「大国の論理であるTPPは、自然豊かな日本の国土を荒廃に導く」、「亡国の道だ」など、TPP参加によってこの国のあり方が変わりかねないことへの危機感を訴えるものが多かった。また、「富の分配が偏る」、「都心のIT産業や自動車産業だけが生き残る」、「都市部への人口一極集中がより顕著になる」、「大都市から遠いところは悪影響が免れない」など、都市部と地方との格差がよりいっそう広がることを懸念する声も多かった。
 賛成の理由は、「貿易自由化や経済連携は大きなチャンス」、「日本経済は工業製品の製造、輸出で成り立っている」など、貿易によるメリットを挙げたものが多かった。
 一方、もっとも比率の高くなった「どちらでもない」について、その理由は、「現在、勉強中である」、「24の作業部会の情報すらわからないのでなんともいえない」、「根拠となる数値がまちまちだ」など、情報不足により判断できない、という意見が大勢だった。そのほかにも、「農水省と経産省とが全く逆方向の影響試算を示している」、「政府として統一の試算・説明を出してほしい」、「国の将来像が見えない」、「政府は何をしたいのかわからない」など、政府内部での議論不足や政策の不整合さを指摘する声も多く寄せられた。


◆28道府県で「賛成」ゼロ

 「賛成」の回答が1つもなかった地域は28道府県あった。そのうち「強く反対」か「反対」との回答が95%以上を占め、はっきりと反対の声を打ち出していたのは、北海道、青森、宮城、福井、島根、宮崎、鹿児島、沖縄の8道県だった。
 「強く賛成」か「賛成」の回答が1つ以上あった17都府県についても、ほとんどの府県で「反対」が「賛成」の倍以上あった。
 「賛成」と「反対」が拮抗していたのは次の4県。埼玉が19%と22%、静岡が12%と14%、岡山が19%と31%、香川が14%と16%。それぞれわずかに「反対」が上回っているが、4県とも「強く賛成」との回答は1つもなかった。
 全国で唯一、「賛成」が「反対」を上回ったのが東京で、「強く賛成」10%「賛成」23%で計33%、「強く反対」3%「反対」13%で計26%と「賛成」が7ポイント上回った。しかし、5割以上の回答は「どちらでもない」だった。


◆各分野の影響わからない

 アンケートでは、農林水産業、工業、商業、医療、介護、保険、福祉、雇用、教育、財政の10分野について、それぞれ日本がTPPに参加した場合の影響をどう考えるかを聞いた。
 全体として農林水産業はほとんどの市区町村長が「悪い影響」があると回答。そのほか「悪い影響」があるとの意見が多かったのは雇用と財政だった。商業は「良い影響」「悪い影響」ともに半々。工業では「良い影響」が「悪い影響」の倍ほどになった。そのほかの医療、介護、保険、福祉、教育についても総じて「悪い影響」があるとの答えが多かったが、6〜7割が無回答・わからないだった。


◆TPP賛成でも農林水産業への悪影響を懸念

 農林水産業に「良い影響」があるとの回答はゼロで、「悪い影響」との答えが56%。「影響なし」が5%で、無回答が39%だった。
TPPに「賛成」と答えた市区町村長も、半数ほどが農林水産業に悪影響があると答えており、基本的スタンスとしてTPP参加は賛成だが農林水産業への支援や農政の改革を前提とする、との意見が大勢を占める。
 ブロック別に見ると、北海道では100%が「悪い影響」と回答。次いで「悪い影響」との答えは、四国が95%、中国が83%、東北、九州が75%と高い。
 農林水産業への「悪い影響」を懸念する声が高かった地域は、地域総生産に占める農林水産業産出額が高い地域だ。北海道は県内総生産18兆4600億円に対し農林水産業産出額が6950億円と3.76%。全国平均の1.11%より格段に高い数値だ。同様に東北が2.71%、四国が2.41%、九州が2.32%で、以上が全国平均よりも高い地域となる。中国地方は1.05%で農林水産業産出額の占める割合は全国平均よりも低いが、全人口に占める就農者の割合が2.79%で全国平均の2.03%よりも高い地域だ(下図参照)。
 一方、農林水産業に「悪い影響」があるとの答えがもっとも低かった関東は、地域総生産に占める農林水産業の割合が0.59%、人口に占める就農者率1.09%と、ともに全8ブロック中もっとも低い。

ブロック別経済基盤、人口、就農者


◆工業製品の輸出は本当に増える?

 農林水産業とは逆の結果になったのが工業だ。
 全体25%、つまり4人に1人が「良い影響」があると答えた。「悪い影響」との答えは15%、「影響なし」が7%、無回答が53%あった。TPPに反対とした人の中にも工業では「良い影響」があると答えた人も多かった。
 ブロック別で「良い影響」との意見が多かったのは、中部と四国がともに45%、中国が42%だった。このうち四国では「悪い影響」との答えも24%あった。
 中部は地域総生産に占める製造業の割合が33.67%、中国は27.13%と全国でも突出して高い地域だ(全国平均は21.23%)。また中国、四国には従業員1人あたりの製造品出荷額が高い県が多く(山口1位、岡山6位、広島9位、愛媛8位、香川16位など)、全体として製造業が強い地域だと言える。
 ただし、上記3地域でもTPP参加による工業への影響については、意見が割れた。
 「輸出が増えれば中小企業への発注も増える」、「グローバル化がすすめば好影響がでる」とTPPによる工業製品の輸出増に期待を寄せる意見がある一方で、「現時点でも自動車以外の家電製品などは国産品がそれほど売れているとは言えない。関税が撤廃されたからといって輸出が簡単に増えるとは思えない」、「産業の海外流出と空洞化が加速するだけだ」と、経産省試算への疑問の声も多い。
 一方、工業でも「良い影響」より「悪い影響」と答えた人が多かったのは北海道、東北、九州の3地域。とくに北海道では「悪い影響」が63%で「良い影響」はわずか2%。東北、九州はそれぞれ「良い影響」が9%と10%で、「悪い影響」がそれぞれ28%、22%だった。
 これらの地域では、「農業支援にかかる莫大な財政支出に比べればその他の分野のメリットは少ない」、「プラス面、マイナス面あるがマイナスが大きい」と総体として悪影響が大きいという意見から、「基幹産業の農業が壊滅的打撃を受ければ他の多くの産業にも影響が出る」、「農家がいなくなれば地域経済は崩壊する」と、あらゆる分野で良い影響は皆無だとの意見もあった。


◆雇用情勢は悪化する

 その他の8分野で回答やコメントが多く集まったのは雇用だ。
 全体で30%が「悪い影響」があると答え、調査した10分野の中でも農林水産業に次いで2番目に高い数値だった。「良い影響」との答えは7%ほど。
 ただし、地域別にその理由には差が見られる。
 「悪い影響」との回答が70%の北海道、58%の東北では、農林水産業とその関連産業の崩壊により失業者が増えるという意見が多数を占めた。
 一方、それ以外の地域では、大企業の海外進出や海外からの安い労働力の流入によって多くの市民の雇用機会が奪われる、との意見が多かった。「悪い影響」との回答は、関東13%、中部31%、近畿24%、中国40%、四国48%、九州45%。「(TPP参加で)雇用を増やすというが、一体だれを雇用するのか、はなはだ疑問だ」、「経済活動の自由化が進めば安い海外労働力を確保することができるので、国内の失業率はいっそう高まる」と心配する声が目立った。
 雇用問題に関連して、「外国人労働者を受け入れることで、日本の技術を受け渡すことになってしまう」、「経済がグローバル化すれば国内企業の低賃金化が進み、生活基盤が崩壊する」といった二次的損失を危ぶむ声や、「雇用情勢が悪化し、農村部よりも都市部の方が生活は困難になるのではないか」という意見もあった。


◆農林水産業が強い県ほどTPPに高い関心

 今回の調査で、他の地域と比べてもっとも特徴的な結果が出たのは北海道と東京だ。
 北海道はTPP参加への反対は99%。10分野の産業別影響についても「良い影響」との意見はほぼ皆無で、農林水産業以外の9項目についても、「悪い影響」との意見が5〜8割あった。
 東京は唯一TPP参加への「賛成」が「反対」よりも多く、産業別影響でも農林水産業以外の9分野すべてで「良い影響」が「悪い影響」を上回った。
 北海道農政部では昨年10月、TPPに参加した際の影響として損失額2兆1254億円、雇用喪失17万3000人、農家戸数3万3000戸減との試算を出した。北海道経済連合会もTPP参加へ慎重な姿勢を表明するなど内地と異なる反応を示しており、農林水産業分野だけでなく社会・経済全体に渡って高い危機感を持っていることが明らかになった。
 同じく、TPP反対が95%以上、10産業分野のすべてにわたって「悪い影響」があるとの答えが5割以上を占めたのは、青森、宮崎、鹿児島、沖縄など4県。このうち青森、宮崎、鹿児島は総生産に占める農林水産業の割合が4%以上と北海道よりも高く、屈指の農林水産業が強い県だ。同割合が4%以上の県は他に高知があるが、高知は10分野ですべてで「悪い影響」が5割以上だったが、TPPの反対が85%だった。鹿児島、沖縄では、離島における経済・社会の崩壊を憂う声が多かった。
 逆に同割合が1%未満の全13都府県のうち8都県はTPP反対の意見が5割以下で、さらに6都県が10産業分野の影響についてもほとんど無回答だった。東京の同割合は0.03%。
 農林水産業が地域の基幹となっている地域ほど、あらゆる分野にわたる情報収集や分析が進んでいる反面、そうでない地域では適切な情報収集ができておらず、判断材料が不足している現状が顕著になった。

 

 

農林水産業への影響

 

 

工業への影響

 

各分野への影響日本の食料基地を失っていいのか?
 北海道天塩町・浅田弘隆町長
 町の基幹産業である酪農畜産業を中心に第1次産業が壊滅的な打撃を受け、第2次、3次産業へその影響が波及し地域そのものが崩壊しかねない。日本の食料自給率を北海道が担ってきているなか、日本の食料基地を失うこと必然である。


命育む大切な「食」の問題
 北海道美唄市・板東知文副市長
 私たちの生活にとって毎日欠かすことができない「食」、この命を育む大切な「食」を巡る大きな問題がTPPです。米など重要品目に例外措置が認められなかった場合は、農業だけでなく、地域経済・雇用にも大きな影響を及ぼすものと考えている。世界の食糧需要の増大や食料輸出国の輸出規制など不安定な要素が増すなかで、単に経済的な理論だけでTPPを進めるべきではないと考えています。


町の経済そのものが厳しくなる
青森県横浜町・野坂充町長
 町は農水産業が主産業。TPPが行われると町経済そのものが大変な状態になります。猛暑によるホタテの大量弊死、農産物の収量減、そして、東日本大震災、と死活問題であり絶対TPPは行うべきでない。


昨年3月の「閣議決定」を堅持すべき
 岩手県八幡平市・田村正彦市長
 昨年の3月の閣議決定どおり自給率50%は国策として堅持すべき。貿易交渉はFTAを中心とした2国間交渉による自由化をめざすべき。

だれを「雇用」するつもりなのか?
 福島県浅川町・須藤一夫町長
 TPP参加で自給率50%確保の担保は? 一に雇用、二に雇用…というが、誰を雇用するつもりか、はなはだ疑問。


農地ない都市だが「国」の根幹の問題
 千葉県浦安市・松崎秀樹市長
 本市は全国で唯一農地のない都市であり、農林水産業の本市への影響は直接的にはないと思われるが、食料安保を考えた時、国の根幹に関わる大問題であると思われる。国民の信頼を得ていない菅政権の元で議論すべきではない。


戦後の諸制度を崩す亡国の道
 東京都狛江市・矢野裕市長
 TPP参加は農業が打撃を受けるだけでなく、国民生活や戦後積上げてきた諸制度を根底から崩していく亡国の道です。


1次産業の衰退は国の危機招く
 秋田県八峰町・加藤和夫町長
 町の基盤産業は農林漁業でありTPP参加による影響は大きい。食料は戦略物資であり自給できる状態を確保すべき。第1次産業の崩壊は他方の衰退につながり、やがて国の危機となる。


目先の利益追求は、ビジョンにならない
 山形県長井市・内谷重治市長
 TPP参加国のほとんどは農業国であり、かつ、資源国。金融面においても国際的な中心機能を持っている国もあり、その意味で日本は「持たない国」になりつつあり、加盟によって対等的関係が成り立つか疑問。目先の利益である「工業製品が売れる」という理由ではビジョンにならない。国内農業が大打撃を受け、食料自給率が大幅に下がった場合、今までどおり安全・安心される食材を確保できるか、教育現場も大変心配しています。

 

TPPは均衡ある国土発展の妨げ
 新潟県津南町・上村憲司町長
 関税撤廃し例外なき農産物の自由化がなされた場合、津南町を含め日本から「米」はなくなると思う。
生鮮野菜は直接的な影響は少ないと考えられるが、自由化された作目が野菜等に置き換わることにより価格が大幅に下落することになり、農業全般に壊滅的な打撃を与える。米の作付けがなくなることで中山間地域の荒廃が進み均衡ある国土の発展が妨げられ、農業だけの問題で済まなくなる。


全国民が協力して解決策の議論を
 東京都中野区・田中大輔区長
 グローバル競争の時代、加工貿易しか生き残る道のない日本にあって、TPPは、参加か否かの選択ではなく、どれだけ自国にとって有利な仕組みするのかの戦略の問題だと思います。農業など派生する課題が大きいことはよく分かるが、全国民が協力して痛みを分かち合って解決する方策を議論するべきです。


原発災害で「開国」幻想は打ち砕かれた
 長野県中川村・曽我逸郎村長
 国内法等で煮つめてきた仕組み、ルールを十把ひとからげにして一挙に米国ルールに置きかえてしまうTPPはあまりにも乱暴。原発災害で日本の農水産物も工業技術も信頼は地に落ち、ブランド力は破壊された。「TPPで開国だ 輸出立国だ」などという幻想も打ち砕かれた。


兼業農家を守るべきだ
 大阪府河南町・武田勝玄町長
 参加ならどんなメリット・デメリットがあるかを、もっとオープンにして議論すべし。日本農業を守るには、もっと別の策がある。私は兼業農家を守るべきだと考えている。アメリカ式の大農営ではなく、日本のモノづくり中心企業の発想だ。このまま行くと、日本の食の安全・安心のすばらしい農業技術がどんどん海外に流出してしまう。


あるべき国際ルール 日本が提言すべき
 京都府京丹後市・中山泰市長
 参加、不参加以外に、TPPの在り方自体について日本の方向を踏まえて提言すべき。制度は生き物。専ら所与のものとして対応を後手後手に考えるだけでなく、日本としてあるべき国際的制度のあり方について提言し働きかけるべき。


一丸での復興こそ。TPP議論する時か?
 佐賀県小城市・江里口秀次市長
 東日本大震災で今後長期的に日本が一丸となった復興支援が必要となってきます。当然、農業政策も国策として思い切った政策を打ち出さなくてはならないと思う。今、TPPに参加するとかしないとか云っている場合じゃない!!


震災からの復興ビジョンが最優先課題
 徳島県上勝町・笠松和市町長
 最優先される課題は、東日本大震災への復興ビジョンと原発事故が最悪の事態に至らない措置。日本は本来、内需大国でGDPに輸出が占める割合は2割にも達しない。デフレ脱却に必要なのは輸出ではなく内需拡大。未曾有の大災害に対し積極的な復興支援事業で内需拡大を図り一日も早い被災地復興とデフレ脱却を。

 


離島にとっては壊滅的影響
 鹿児島県屋久島町・日高十七郎町長
 関税撤廃による離島への影響は、生産活動をはじめ壊滅的な打撃を受けることは自明である。過分な生産・流通コストの軽減見直しが先決。島々にとっては死活問題である。

 


TPP参加は百害あって一利なし
 鹿児島県喜界町・加藤啓雄町長
 本町は外海離島で農業、とくに防災面からのさとうきび生産が中心であることからTPP参加は百害あって一利なし。

 


【おことわり】 今回のアンケートには、全国の市区町村長の皆様から大変多くのコメントが寄せられました。改めて御礼申し上げます。紙面の都合上、すべてのコメントを掲載することができませんでしたが、後日引き続き市区町村長の皆さまから頂いたご意見を掲載させて頂きます。

(2011.04.28)