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全農特集「国産農畜産物の販売力強化」実現のために

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【JA全農 生協との提携】 日本を食卓から元気にするためにコープネットエリア―8都県JA連絡会

・産直野菜のエリア内地産地消率が56%に向上
・青果集品センターの充実でクレームが減少
・各県ごとにより密な関係が築かれている
・お米育ち豚など多様な取り組みも
・産地の価値を消費者に伝える提案を

 国産農畜産物の販売力強化のために全農は生協や量販店を含めてさまざまな取り組みを行ってきている。今回はそのなかから関東信越8都県の生協が加盟するコープネット事業連合とそのエリア内のJA全農都県本部が、エリア内の地産地消推進を目的に結成した「コープネットエリア8都県JA連絡会」について取材した。

◆産直野菜のエリア内地産地消率が56%に向上

 この連絡会が設置されたのは2008年のことだった。それは中国製冷凍餃子事件が起きて、生協組合員の国産を求めるニーズととも、食料自給率への関心が高まってきた時期でもあった。コープネットは「日本を、食卓から元気にしたい。」をメインテーマに、「食料自給力向上」「産地を元気に―地産地消」「むだをなくす」という3つの目標を掲げ、それを推進するために、エリア内の全農8都県本部との提携を行った。
 地産地消といっても千葉県や茨城県など多くの野菜を県内産で地産地消できるところもあるが、東京のようにそれが難しいところもある。そこでコープネットでは、コープネットに参加する生協がある8都県をエリアとした地産地消を行うことで、エリア内の産地を元気にしようと考えた。
 全農各県本部との連絡会設置当時のエリア内地産地消野菜の割合は40%台だったが、現在は55.7%(2010年度、09年より2.4%増)に増え、成果があがってきていると内田一樹コープネット商品業務管理統括部長。


◆青果集品センターの充実でクレームが減少

日本を食卓から元気にするためにコープネットエリア エリア内の自給力を向上させてきた大きな要因の一つに、温度管理がきちんとされた青果集品センターが各地域に設置されていることがある。具体的には(( )内は宅配該当生協)
○川口:JA全農青果センター(コープとうきょう)
○石岡:全農茨城(いばらきコープ、とちぎコープ)
○柏:全農千葉(ちばコープ、コープとうきょうの一部)
○塩尻:全農長野(コープながの)
○新潟:全農新潟(コープにいがた)
この他に、さいたまコープ・コープぐんまをエリアとする川島:ベジテックがあり、これらのセンターが宅配の農産品の仕分け拠点となっている。店舗については、JA全農青果センター(埼玉県戸田市)が担っている。
 ちばコープ(最近はコープとうきょうの一部も)のエリアを担う柏青果集品センターは、全農千葉県本部が5年前に設置した施設だ。センターでは温度管理がキチンと実施されているだけではなく、入庫・加工時の商品点検が徹底されるようになったことで「組合員からのクレームが減り、品質が優良化」したと杉森一雄ちばコープ農業政策室長は高く評価している。


◆各県ごとにより密な関係が築かれている

日本を食卓から元気にするためにコープネットエリア ちばコープでは、県内産直グループ9団体とJA全農ちばが参加する「ちばコープ県内産地協議会」を結成し、▽千葉県産品と地域農業の振興をはかり、自給力の向上を図る、▽生協組合員の安全安心と安定供給、鮮度などの要望にあった農産物の生産と供給、▽生産者と生協組合員・職員との交流による農業実態への理解を広める、▽福島第一原発の放射能事故による危機的な状況に冷静に対応する、という4つの方針に基づいて「食と農業問題の課題に取り組んでいる」と中秀夫ちばコープ地域商品企画担当部長。
 ここではふれないが、同様の取組みが各県ごとに地元生協と全農やJAとの間で取り組まれ、より密な関係が生まれている。


◆お米育ち豚など多様な取り組みも

 センターでの温度管理の徹底と同時に産地における予冷管理なども進み直接センターに納入されるようになり、全体として産地直納・コールドチェーン化が葉物野菜やトマトなどで強化されてきていることも内田統括部長は評価する。
 きちんと温度管理されて産地からセンターを経由して組合員に届けられるキュウリ、レタス、キャベツ、葉付き大根などについては「旬鮮フレッシュ便」のマークが付けられ宅配されるなど、生産者の努力がアピールされている。
 センターでの入庫時チェックの際に出る規格外品や天候不順で被害を受けた果樹など、そうした農産物は安全・安心面ではなんら問題がないので廃棄するには「もったいない」。
 そこでコープネットではこうした野菜・果実を「不揃い」とか「ハネッコ」「天候被害」というネーミングで宅配・店舗で販売するとともに、これらを「産地支援セット」「もったいないセット」としてネット上だけで、数量限定で販売しているのだが、販売開始当日は午前5時から受注を始めるが数量が少ないこともあって「瞬時にして完売」(内田部長)するという。
 こうした農産物以外でも飼料米を給餌する「お米育ち豚」(全農ミートフーズ)は肥育ベースで2万7000頭、飼料米約450tを使用している。100g当たりで通常の豚肉より20円程度高いにも関わらず好評で、豚肉供給高の2割を「お米育ち豚」が占めているという。
稲穂のみのりたまご(飼料米鶏卵)売り場 「稲穂のみのりたまご」など米給餌たまごもたまご供給の7%、230万パックを占め、使用される飼料米は535tになる。また、コープ赤玉たまごも今年から米を給餌しはじめ、米給餌たまごの構成比は2割を超えるようになった。
 その他、米でも例えば新潟県佐渡のコシヒカリについては1kgにつき1円を佐渡市に寄付しトキの野生復帰を支援しているが、佐渡コシヒカリ全体の1割に当たる年間2500tを供給、昨年に続き今年も先日240万円を寄付した。

飼料米稲刈り交流

(写真)
上:稲穂のみのりたまご(飼料米鶏卵)売り場
下:飼料米稲刈り交流


◆産地の価値を消費者に伝える提案を

 取材の最後に内田統括部長にこれからも全農との関係を良好にすすめるために、全農に望むことはないか聞いた。
 内田統括部長は、これまで見てきたことに加えて天候不順などで予定の数量などを確保することが難しいときに、全国組織のよさを発揮して品物を確保してくれる全農グループの力を高く評価した。
 そのうえで「生産者・産地のビジネスパートナーであると同時に、生協に対しては食品卸のようなきめ細かな提案・サポート機能を充実して欲しい」という。具体的には、「単なる取引きとしてのマッチングではなく、産地の持っている価値を最大限に引き出し、その価値が消費者に伝わる売場提案や全国の産地リレーの的確な産地・品種提案、端境期の国内産地提案などを、県本部、産地縦割りではなく提案して欲しい」と語ってくれた。
 こうした「食品卸」的な機能は、JA全農青果センターでは発揮されつつあると内田統括部長はみている。そして、それを全農グループ全体に広げて欲しいという要望を語ってくれた。

(2011.10.25)