特集

第26回JA全国大会に向けて

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組織協議案の特徴と課題は何か(上)  元明治大学教授 北出俊昭

・大会をめぐる情勢認識と課題
・「支店を核」にした方針と農協の規模問題
・「地域農業戦略」と営農ビジョンの策定・実践

 第26回JA全国大会組織協議案(以下「組織協議案」)の討議が進んでいるが、ここでは基本的な事項について特徴と課題について検討したい。

◆大会をめぐる情勢認識と課題

 今回の組織協議案は最初に、「情勢認識」として「東日本大震災」、「行き過ぎた市場原理主義」、「人口減少を迎えた日本」、「食料不安の高まり」の四つを明記している。これは従来の「めぐる情勢」とは異なる内容で、東日本大震災とそれに伴う原発事故、TPP問題、消費税増税と社会保障改悪など、国民生活破壊の根本にある市場原理主義政策に対する農業生産者(組織)の批判の反映であり、国政の基本理念そのものの転換を要求した内容ともいえる。
 こうした情勢認識のうえで組織協議案は、「農家組合員の世代交代への対応」を課題の第一に掲げ、その理由として第一世代(70歳以上)が正組合員の42%を占め、第二・第三世代への働きかけがとくに重要な課題になっていることを強調している。組織協議案のタイトルが「次代へつなぐ協同」となっているのもそのためである。
 世代交代は農協組織の将来にも関わる重要な問題であるだけに、今後は協同組合の原則に基づいた組織・運営・事業の徹底が不可欠である。組織討議でもそうした目的意識をもった検討が大切である。


◆「支店を核」にした方針と農協の規模問題

 今回の組織協議案の特徴は、「支店を核に、組合員・地域の課題に向き合う協同」を提示していることである。そして支店が「組合員・地域の身近な拠点としての機能を備えている」ことを理由としているが、これは協同組合には欠かすことができない本来的理念である。
 これまで農協組織は広域合併を推進し、第25回大会議案でも「もう一段の合併による規模拡大」を明記していた。組織協議案の補足説明資料では、「前回大会決議で示した方向を受け継ぎ、さらに具体化させたもの」と述べているので即断はできないが、今回はこれまでの方針を転換する意図を示したとみることもできる。
 広域合併により農協の組合員・地域離れが進んでいるとする強い批判に応えるためにも、改めて「支店を核」とした農協運営を目指すのは当然で、管内の多様な地域に即した地域営農ビジョンを策定・実践する上でも不可欠である。
 この「支店を拠点」の規模は、旧市町村程度の組合員数は正・准合計で1100人程度とされているが、これは奇しくも全中が最初に決定した「単協合併方針」(1963年)で示された「日常組合員が意思反映ができる」規模と基本的には同じ考えといえる。
 いずれにしてもこの方針で重要なのは、人材配置や財政問題の権限は基本的には支店(長)に移譲し、支店があたかも一つの農協のように自立した運営が行われるかどうか、である。


◆「地域農業戦略」と営農ビジョンの策定・実践

 組織協議案は実践的課題として3つの戦略を提示しているが、その第1が「地域農業戦略」である。その中心は「担い手経営体の明確化と農地集積」、「多様な担い手の役割発揮」、「地域の特色ある産地づくり」、「農を通じた豊かな地域づくり」の4つをねらいとした「地域営農ビジョン」の策定・実践である。
 農協は地域農業の維持・発展に重要な責任があり、これまでも「地域農業の司令塔としての役割発揮」(第23回大会)や「JAの農業経営にかかる4原則」(第25回大会)などを示してきた。今回の組織協議案もその方針を受け継いだものといえるが、ただ今回は「支店を核」としているところに従来とは異なる特徴がある。
 これまでの経過をみると、「農産物生産販売計画」、「地域農業振興計画」、「地域農業ビジョン」など名称は様々だが、その取り組みには本所(極端な場合は一部局)で企画策定し、支所にそれを指示するだけという、本所主導で現場の生産者不在の傾向があった。広域合併により管内の地域が多様化しているにもかかわらず、その多様性が計画に反映されず、計画が単なる数字の羅列で、具体策も現場のニーズに基づかない例もみられた。
 したがって今回の営農ビジョンの策定・実践では、まず管内の多様な実態が反映されるよう、生産者も参加した実践的なビジョン策定が「鍵」で、そのため地域(支所)の自主的な創意性を如何に発揮させるかが不可欠な課題である。


※ (下)に続く

(2012.07.30)