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第34回農協人文化賞

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【第34回農協人文化賞】 受賞者へのお祝いの言葉

・JA帯広かわにし(北海道)代表理事組合長・有塚利宣氏
・JAあづみ福祉課(長野県)・池田陽子氏
・JA熊本経済連 代表理事会長・上村幸男氏
・東京農工大学名誉教授・梶井功氏
・農業経営法務研究会座長 ジュリス・キャタリスト代表取締役・加藤一郎氏
・生活クラブ生協連合会会長・加藤好一氏
・東京大学教授 JC総研研究所長・鈴木宣弘氏
・作家・童門冬二氏
・JA愛媛中央会会長・林正照氏
・JA全農経営管理委員会副会長 JA島根中央会会長・萬代宣雄氏
・共存同栄ネットワーク代表・松下雅雄氏
・JA全中副会長 JA広島中央会会長・村上光雄氏
・シンジェンタ ジャパン(株)取締役会長・村田興文氏

 8月1日に開催された「第34回農協人文化賞」を受賞した14名の功績をたたえ祝辞が寄せられた。ここに紹介する(五十音順)。

逆境でもあきらめずに耕す
JA帯広かわにし(北海道)代表理事組合長・有塚利宣氏

JA帯広かわにし(北海道)代表理事組合長・有塚利宣氏 第34回農協人文化賞受賞者の皆様、おめでとうございます。全国各地で地域農業の振興や、生活改善、系統組織の活動に心血を注ぎ、生きた活動を実践してこられた皆さんの功績に対しまして敬意を表する次第であります。
 昨年第33回の文化賞の表彰お祝いの紙面で「新たな国が興る時には辺境に核ができて、そこから新たな文化がうまれるから辺境を粗末にするな」というようなことを書かれている方がいましたが、私もまさに同感でありまして、日本各地を見渡すと条件不利地にこそ多くの文化が育っております。
 英語の「文化」カルチャーの語源は「耕すこと」カルチだともいわれておりますが、逆境にあきらめることなく知恵を絞り、地域の個性を見つけ、これを伸ばし、小さな成功を大きな輪にひろげていくことは並大抵の努力ではすまぬことであります。
 私も北の大地に根を張って、自分に何ができるか考え、微力ながら実践してまいりましたが、農協人文化賞表彰者の足跡をみるとき、自分もまだまだやるべきことが沢山あるなと思う今日この頃であります。
 歴史の陰に埋もれがちな黒子の汗と努力の結晶に光を与え歴史の表舞台に記録し、継承されるべき偉大な財産として未来へ引き継いでいくことは大事なことであります。
 農業協同組合という基盤が生かされ、地域の農業に貢献を続けるためには、この苦労と工夫の経験が生かされ続けていかなければなりません。
 農協人文化賞で発信されるそれぞれの地域の光が相互に波及し、競い合う地域社会がお互いの農業協同組合をより光り輝かせる地域社会の礎になっていくことを切に望みます。
 今回新たに加わった14人の仲間を加え、過去の受賞者の継続的活動が地域社会の希望の証として継承されていくことを祈念し、お祝いの言葉といたします。

◇  ◇

農協運動のさらなる発展を
JAあづみ福祉課(長野県)・池田陽子氏

JAあづみ福祉課(長野県)・池田陽子氏 第34回農協人文化賞おめでとうございます。
 本年は折しも、国連が定める「2012国際協同組合年」にあたります。そのスローガンは、「協同組合がよりよい社会を築きます」であり、協同組合の価値を広く啓発する取り組みが行われています。
 翻ってJAは、少子高齢化の進展や世代交代等により、主役であるべき組合員が減少し、組織基盤が揺らいでいます。
 そのような状況の中で、私たちは「住みなれた土地、住みなれた家で、つつがなくあんしんして暮らし続けたい」という、誰もが持つ願いを実現するため、人と人との繋がりの上に立つ相互扶助、すなわち助け合いこそが、あんしんして暮らせる里を創るものと確信を持って活動しています。
 まず、地域・組合員に広く門戸を開放した『生き活き塾』での組合員学習により価値観を共有し、その塾生自らが日常的に「気づき」による協同活動を実践してきました。それは協同組合運動の必要性を再確認することです。
 例えば、毎土曜日2時間のささやかな農産物直売所『ふれあい市安曇野五づくり畑』と『JAあづみくらしの助け合いネットワーク“あんしん”』との連携は、高齢者のための『御用聞き車“あんしん”号』の活動を誕生させました。
 それは、こだわりながら創り続けることが、「小さな気づき」から協同活動へ、事業へと発展してきた現れでした。
 組合員・地域住民があんしんして暮らし続けるために何が必要なのかを感じとり、「できることを、できる人が、できる時に」という、一人ひとりの参画意識が、課題を解決していく大きな原動力となってきたのです。
 さて、この授賞式では皆さんの実践を伺うことができます。
 そこでは組合員が自らの組織として農協を位置づけ、その活動に参画する姿があります。これこそ農協本来の姿です。
 また、受賞者の皆さんには、農協運動の伸長を図るという使命感が感じられます。
 この使命感こそが協同組合の可能性を実現するものだと思います。

◇  ◇

協同活動は農協らしさから
JA熊本経済連 代表理事会長・上村幸男氏

JA熊本経済連 代表理事会長・上村幸男氏 このたびは14名の皆様、『第34回農協人文化賞』の受賞、誠におめでとうございます。
 この賞は、農協運動の優れた功績者を表彰するためと聞いております。今回受賞された方々は、日々変遷する地域社会及び地域農業の課題に対し、『組合員・農家の願い』実現のため、我を忘れて、農協運動に尽力された真の功労者であり、敬意を表します。
 これまで、私たちは地域農業振興の使命感が強く『産地間競争』と言う事で真摯に戦ってきました。結果として今、世界一の農産物は出来たものの、たいていの地域で高齢化、担い手不足、若者のいない村になり地域問題は深刻です。
 これからも市場原理のもと、グローバルな競争が激しく展開されようとしています。私たちは競争社会の中での協同のあり方、重要性をちょっとだけ見失ったのではないかと思うのは私ばかりでしょうか?
 また、東日本の皆さんは、今だに深い悲しみ、苦しみは癒えませんが、あの時、恐怖・不安と寒さの中で、キャンドルを囲み、『絆』の重さを全国に発信して頂きました。
 奇しくも今年は『国際協同組合年』という記念すべき年で意義深さを増して来ました。
今こそ『農協らしさとは?』を自らに問い直すチャンスにしたいと願っています。
 ある大女優が『女らしさを生涯をかけて求めて来ましたが、どんなに頑張っても、女では気付かない所がある、歌舞伎役者で女形の舞を学びながら女らしさを磨いて来ました』と人生を語るのを聞き、私達も『農協らしさ』を通念の眼鏡をはずして目を凝らし検証し、怠る事なく磨き続け、協同の価値を高めたいものです。
 今回の受賞者の皆様は、農協運動の確かな実践者です。その尊い歩みは私たちの道しるべとして多くの示唆を頂きました。
 最後になりますが、受賞者の皆様のますますのご活躍、ご多幸をご祈念申し上げます。

◇  ◇

例年の受賞とは違った重み
東京農工大学名誉教授・梶井功氏

東京農工大学名誉教授・梶井功氏 国連は今年を国際協同組合年と宣言し、全加盟国に“この国際年を機に協同組合を推進し、その社会経済開発に対する貢献に関する認知度を高める”ことをもとめています。その年に、農協運動の仲間達から農協運動でのその活動を高く評価されて農協人文化賞を贈られるということは、例年の受賞とは違った重みがある、といっていいのではないでしょうか。受賞者の皆さんの活動を周知させることこそが、協同組合の“社会的経済開発に対する貢献”を一般の人たちに“認知”させることになります。受賞者の皆さん、多年の農協運動推進、ご苦労様でした。そして受賞お目出とうございます。国連総会決議が言っているように“協同組合は…経済社会開発の主たる要素となりつつあり、貧困の根絶に寄与するもの”です。その運動に情熱を燃やす人が皆さんの後に続いて出てくることを私は信じています。
 それにしても気になるのは農村の高齢化進行です。今、組織協議にかけられている第26回JA全国大会組織協議案が「次代につなぐ協同」を主要テーマにしていることが示しますように、農家・組合員の世代交代進行にどう対処するかが大きな課題になっています。正組合員の40%が70歳以上ですし、准組合員数が09年から正組合員数を上回っています。“准組合員の意思反映の仕組みも積極的に導入する”ことを組織協議案は言っていますが、それでいいのでしょうか。
 准組合員問題を初めて提起したのは1970年の生活基本構想でした。基本構想が提起した地域での協同活動の組織化は、当然ながら共益権のない准組合員を増加させ、組織の意志決定上に問題を生じさせるとして、基本構想は“農業者・非農業者を問わず、自由に協同組合を組織でき、しかも組合経営もできる一般協同組合法制の検討をすすめる”としていたのですが、実際には進んでいません。第26回大会でも議論すべきではないでしょうか。

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辺境の興亡から歴史を学ぶ
農業経営法務研究会座長 ジュリス・キャタリスト代表取締役・加藤一郎氏

農業経営法務研究会座長 ジュリス・キャタリスト代表取締役・加藤一郎氏 第34回農協文化人賞受賞おめでとうございます。
 「国家は辺境の地の興亡する歴史に学べ」という言葉があります。「国家の興亡は辺境の地が生命線となって左右される。国家が滅びるときは、物事が中心に集まってくる。おのずと、辺境から滅んでくることになる。辺境の地を粗末にすると、国家が滅ぶ。新たに国が興ってくるときには、中心に集まらず、辺境の地に核ができてきて、そこから新たな文化が生まれる。辺境の地に注目すべきものがある。」ローマ帝国、中国、日本の歴史も辺境の地から反乱がおき一時代が終焉したことは冷厳な歴史的事実です。今、我々が直面する都市と地方の格差拡大、農村の荒廃の危機は我が国の社会経済のあり方の本質的な問いかけです。
 農業は英語で、アグリカルチャー。アグリという「耕す」とカルチャーという「文化」の意味をもつラテン語が語源です。文字通り、農業は農村社会を基礎とした産業であり、文化の源泉でもあります。伝統的な社会では「文化は地域の自然現象のエコロジカルな諸条件に関して、詳しい知識をもち、その自然利用について社会的規範としての社会的制度が確立し、一つの文化が形成される」と言われております。ところが、近代的社会では「知的並びに芸術的な活動」と矮小化されてきたのではないかと思います。
 最近の社会・経済は縦割りの弊害が目立ちます。行政、学会、JAの事業も縦割りが強まっています。農協協会の仲間達が贈る農協人文化賞という本来の文化に対する意味は、「信用」「共済」「経済」等の各事業部門別に受賞者を決定するのではなく「農業協同組合運動」の発展にいかに寄与して、地域社会、文化に貢献してきたか。文化とは総合なもの、横串をさしたものと考えます。今後の国・社会のあり方に、協同組合運動をつうじて、具体策を実践してきた縦割りではない「文化」そのものへの功績者という視点に変えるべき時が来たのではないかと感じます。

◇  ◇

協同組合セクターを強固に
生活クラブ生協連合会会長・加藤好一氏

生活クラブ生協連合会会長・加藤好一氏 第34回農協人文化賞受賞者のみなさん、おめでとうございます。しかも今年は国連が定めた国際協同組合年です。喜びもひとしおでありましょう。
 さてこの国際協同組合年ですが、国連が2012年を協同組合の国際年とした背景には、昨今の食料不安、金融不安に表された市場原理主義の暴力性に対する、対抗システムを協同組合に期待することにありました。この対抗システムを、私たちは一般的には協同組合セクター、よりそのすそ野を拡げた言い方としては市民セクターなどと総称しています。それは一人ひとりの協同組合人や市民の、地域と協同に根差した日々の努力の蓄積としてあります。このような地道な取り組みが、今日、セクターとしての厚みとして堆積されつつあります。
 しかしながら、このような地域と協同の実践が、人びとに知られることは残念ながら稀です。そのため国際協同組合年の課題として、協同組合の社会的な認知度の向上が掲げられました。とはいえ協同組合を理念的に語るだけでは、認知度の向上は難しいでしょう。7月18日の国際協同組合デー記念中央集会では、協同組合地域貢献コンテストの表彰がありました。農協人文化賞が先鞭をつけられているように、このような地域と協同に根差したやさしげな奮闘に光を当てる取り組みは、とても大切だと思います。
 野田政権は消費増税、原発再稼働、そしてTPP(環太平洋連携協定)の推進など、民意を無視した強権的と言うほかない暴挙を繰り返しています。まさに産業革命後の暴力的な資本主義の時代に歴史が逆流させられたかのごとく、人びとはいま生存権を脅かされています。であればこそ私たちは、そのような時代のなかで果敢に誕生した協同組合の「使命」を再生させ、より力強く協同組合の可能性を拡げ伝播させていくべきです。国際協同組合年を機にさらにスクラムを強固にし、ともに「よりよい社会」を築いてまいりましょう。

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相互扶助組織が日本を守る
東京大学教授 JC総研研究所長・鈴木宣弘氏

東京大学教授 JC総研研究所長・鈴木宣弘氏 人々が相互に助け合って暮らしていける「ぬくもりある」地域社会を我々は目指してきた。市場競争にゆだねるだけでは、ぬくもりある社会が崩れていくから、市場機能の限界を補完し、支え合える地域社会を維持するために、様々な制度や組織がつくられてきた。農協組織もまさにそうである。
 しかし、TPP(環太平洋連携協定)によって自らの富の拡大に猛進するような「1%」の人々にとっては、相互扶助のための制度や組織は、競争を歪める悪しきものとして攻撃の対象となる。すでに、「1%」に属する米国と日本の一部の人々と、お金(政治資金、スポンサー料、研究費)と人事(日本では天下り、米国では「回転ドア」)で一体化した一部の官僚、政治家、マスコミ、研究者の攻撃によって、日本社会は追い込まれつつある。
 「1%」と結びついた人々は、マスコミも一緒になって、情報を操作し、国民を欺いて、自分たちの利益を増やそうと手段を選ばない。真実を語ろうとする者を潰し、助け合う社会を守ろうとする制度や組織を執拗に攻撃する。
 農業協同組合の活動に対するメディアなどの意図的な批判も多く、一般の方々からも、そうした報道の受け売り的な批判を含め、農業協同組合組織に対するネガティブな意見を耳にすることが非常に多くなってきているのも、残念ながら事実である。金融部門分離の圧力も、さらに強まってきている。
 しかし、各地の農業協同組合こそが、まさに、地域コミュニティの支柱として、地域の農業と、それを核にした地域住民の生活全体を支える地域協同組合としての大きな役割を、今までも果たしてきたことは、今回の受賞者の活動にも如実に示されている。こうした農協の「真の姿」をしっかりと国民にも理解していただき、攻撃にへこたれずに、農協のような、相互扶助のための組織こそが、これからの日本の多数の国民を守るのだということを再認識したい。

◇  ◇

日本の農業文化は平和の礎
作家・童門冬二氏

作家・童門冬二氏 ことしは国連主導による「国際協同組合年」です。協同組合の理念は周知のように「カネ(資本)によって結びついた組織ではなく、ヒト(人間)とヒトが結びついた組織」だといわれています。人間と人間が結びつくということは、心と心が結びつく“絆の組織”といっていいでしょう。
 世界における協同組合は1844年に結成されたイギリスの消費組合や、1848年のドイツのライフアイゼンのワイヤブッシ“パン組合”が最初だそうですが、実は1838年(天保9年)に日本で大原幽学という農政学者が、千葉県旭市で「先祖株組合」という、農民の協同精神にもとづく組合を結成していました。所有地の一部を提供し、これを共同で耕し収穫物で得た収益を、地域の復興に充てるというものです。提唱者の幽学は、「子孫がそういう有益な土地利用を考えたことは、墓の下にいるわれわれを大いに喜ばせる、というはずだ」と、怒る農民を逆な発想で説得しました。
 この発想は孔子のいう「恕(じょ)」の精神です。恕というのは「つねに相手の身になってものを考えるやさしさと思いやり」のことです。孟子はこれを“忍びざるの心(他人の不幸は見るに忍びなし)”といいました。ヒューマニズムのことです。
 この他をおもんばかる心はすべて土(農)から生まれてきました。
今回受賞されたみなさんは、日本の農が伝えてきたこの「恕の精神」の遺憾なき実践です。とくに日本の農業文化は“平和の維持”に大いに貢献してきました。日本の風土はこの伝統によって保たれています。
 受賞おめでとうございます。こんごとも「恕」の精神を発揮され、日本のため、世界のためにご活躍下さい。

◇  ◇

「次代へつなぐ協同」信じて
JA愛媛中央会会長・林正照氏

JA愛媛中央会会長・林正照氏 このたび、長年にわたり農協運動に献身的に寄与された14名の功績者の皆様が、第34回農協人文化賞受賞の栄に浴されましたこと、心よりお祝いを申し上げます。
 受賞されました皆様の活動は、地域やJAへ軸足を置いた活動であり、各事業部門ごとに次世代に継ぐ実践活動としての成果は、社会的に大きく貢献された足跡として心に残るものであり、後輩に継承されることと信じております。
 農業をめぐる環境は、昭和二桁への世代交代により、組合員とJAの絆が脆弱しつつありますが、JA全国大会議案にある主題は、協同組合の力で農業と地域を豊かにする「次代へつなぐ協同」であります。
 私は今回、「地域農業」「くらし」「経営基盤」の3つの戦略と実践事項が即戦力として、組合員の現状課題に一段と踏み込んだことを最も評価しています。また、広域合併での支所の統廃合は、事業管理費等の節約により事業利益を黒字化した一方で、組合員離れではなくJAが離れて行ったという反省点にも手が届いた感がします。
 昨今、農政の大転換と方策は、土地条件が県や地域で異なり、組合員はメリットやデメリットは多く潜在しながらも、JAとして次代につなぐ地域営農ビジョンや新たな担い手、生産販売戦略、消費者に信頼される食の安全対策、実践による活動は、まさに10年後を次世代に継ぐものであります。
 経営には組織、事業、財務の3点が総合的にうまくかみ合ってこそ、次世代の農業、安心して暮らせる家庭、組合員の満足が成果として現れ、持続的に発展するものと考えます。経営者は過去の体験により多少力の入れ方は違っても、双方がバランスよく主たる運動へ協調・共有しながら、各大会後は戦略を段階別に周知徹底実践し、実現することを期待するものであります。
 提言が多くなりましたが、今回の受賞者の皆様には、これを契機に健康に充分留意され、なお一層、地域や農業振興にご尽力をいただきますと同時に、農協協会の更なるご発展を祈念いたします。

◇  ◇

「農協人文化賞」継続のかげに
JA全農経営管理委員会副会長 JA島根中央会会長・萬代宣雄氏

JA全農経営管理委員会副会長 JA島根中央会会長・萬代宣雄氏 このたびの「農協人文化賞」受賞、誠におめでとうございます。心よりお祝いを申し上げます。
 私も実は、平成19年(第29回)受賞の栄に浴したところですが、そうした事をきっかけに、一般社団法人「農協協会」の存在を初めて知りました。
 また、実質経営責任者である佐々木昌子常務をはじめ、支え合って協力されている多くの先生方との出会い、私は受賞の喜びと共に、そうした皆様方の農協、農村、また農業の将来について「道しるべ」となるべく、献身的な努力に接するにつけ感動を覚えずにはいられませんでした。
 全国各組合長等50人ばかりで「新世紀JA研究会」なる組織を、平成18年に立ち上げ、年2回研修会を仲間と共に開催致しております。ご指導賜りたい部分もあり、農協協会が行われる研修等一部共催させて頂いたりしており、そうした関係で農協協会の内情に接したと言う事であります。
 お祝いの紙面で、この様な事は如何なものかと思いますがお許しください。
 農協協会も経営が非常に厳しく、多額の負債を抱えながらも、昭和53年から今日まで、努力に努力を重ね、34回に亘って多額の経費を使い「農協人文化賞」を贈り続けられたという事であります。
 過去の累積赤字は、今日では解消されたとの事ですが、今日でも多くの取材等都内は自転車を踏みながら汗だくで走り回っておられるのであります。また、前述の様に事業を共にした時等、反省会を実施され案内を頂きますが、参加されている面々は農業関係・農協界では、知らぬ人が少ない位の名士ばかりであるにもかかわらず、居酒屋どころか、事務所でそれまで仕事をしていたその机に、ビニールシートをかぶせ、材料等は全部買出し持込んで焼肉屋に早変わり、ビールは生どころか缶ビール、酒は一升瓶で湯呑茶碗、徹底した経費削減であります。
 会場の雰囲気は、上下の隔たりも無く、和気あいあいで、日本の将来について、白熱した議論が展開されるのであります。この様な、表には出ていない多くの関係者、諸先生方の正に献身的な思いのお蔭で「農協人文化賞」が継続されている事、賞の裏にはこうした皆様の熱い思いが込められている事を共有したかったのであります。
 賞を頂いた我々の恩返しは、各々の立場で農協運動を一層盛り上げるべく最善の努力をする事だと思っております。
 このたびの受賞本当におめでとうございます。お互いに頑張りましょう。

◇  ◇

農協運動の牽引的役割に期待
共存同栄ネットワーク代表・松下雅雄氏

共存同栄ネットワーク代表・松下雅雄氏 農業協同組合は運動体であり、事業体でもある。
 両輪が相挨って、健全な事業・活動が成り立つのであります。
 農業協同組合の役割を充分熟知し、各分野で献身的な取り組みをされた功績のある「仲間達」が選んで表彰する、この「農協人文化賞」は極めて、協同組合らしい取り組みだと思います。
 この表彰も創設から三分の一世紀を経過している「継続は力なり」であります。高く評価できます。
 また表彰者も300人を超えていることは目を見張るものがあります。
 協同組合運動を推進する仲間たちの貴重な財産であります。
 世界的に不透明な時代を迎えております。日本経済も低迷しているなか、農業協同組合の運営も、事業推進だけが先行している。
 農協界は今、大きな転機を迎えている。
 今年は国際協同組合年であり、我々農協人にとって記念すべき年であります。
 この節目に協同組合が地域に果たす役割や意義についてみんなで学び合う年でもあります。
 この記念すべきときに受彰されたことは素晴らしいことです。
 この受彰を契機にさらに運動者のトップリーダーとして、ますます活躍され、農協運動の牽引的役割をお願いします。
 受賞おめでとう。

◇  ◇

農協運動は地道に積み上げて
JA全中副会長 JA広島中央会会長・村上光雄氏

JA全中副会長 JA広島中央会会長・村上光雄氏 農協人文化賞受賞者の皆様、今回のご受賞誠におめでとうございます。
 皆様方の直向に地域農業振興と農協運動に取り組んでこられたご努力が、ここに大きく評価された訳であり、心からお慶びを申し上げます。
 実は私には農協人文化賞に特別な思いがあります。私の尊敬する大先輩に御調町農協の林定美組合長がおられました。いつも共済推進ではすばらしい実績を挙げられ、共済事業部門で第15回(平成5年)農協人文化賞を受賞されました。その際私がお祝いを申し上げたら、林組合長は「村上君、農協運動はコツコツと積み上げていくものだよ」とおっしゃいました。組合長になって10年ぐらい経過し生意気盛りの私は、後ろ頭を棒で殴られたような気がしました。それから以後私はその言葉を胸に、いつか大先輩のような農協人文化賞をと思いながら農協運動に携わってきました。
 その思いは平成18年(第28回)にようやく実現し、今年は2012国際協同組合年を迎え、改めて大先輩の言葉を思い出さずにはおれません。
 まさしく協同組合運動は一朝一夕に出来上がるものではなく、コツコツと地道に積み上げていくものであると、今実感させられております。
 そして今回受賞された皆さん方はそのことをじっくりと愚直に実践されてきた方々であり、2012国際協同組合年に農協人文化賞をお贈りするのにふさわしい方々であります。
 ここに、改めて永年にわたるご苦労とご功績に対して敬意と感謝の意を表し、これからもご壮健で地域農業、農協運動発展ために、ご尽力いただき、ご指導賜わりますようお願い申し上げ、お祝いの詞とさせていただきます。

◇  ◇

日本農業の将来が見えてきた
シンジェンタ ジャパン(株)取締役会長・村田興文氏

シンジェンタ ジャパン(株)取締役会長・村田興文氏 農協人文化賞表彰規定第二条(目的)本賞は、多年にわたり農協の発展に献身的に寄与した「隠れた功績者」に贈る。
 私は「本当に貢献した功績者」に贈ると変更するべきだと今年も昨年同様感じました。
 受賞者の方々の推薦理由をじっくりと読ませていただいた時に、そのキーワードをピックアップするだけで日本の将来の農業のあるべき姿が見えてきます。 農協が地域社会を、そして文化を育み、農業ビジネスの最大化から後継者育成、事業経営の規模拡大から経営効率の改善、さらには都市と農村の交流、医療から金融システムまで、どれ一つとっても今の社会、そして農業地域が直面している課題そのものです。
 日本が工業分野で国際競争力を堅持出来ているのは、これまで数百年という長い時間をかけて構築されてきた国の基盤である農業が支えているからですし、数十年をかけて時代の変化に合わせながら農業者と地域住民を支えてきた農協の存在があるからだと思います。
 やりがい・楽しみ・生きがい・ふれあい、命の糧を生む農の尊厳、新しい田園文化社会の創造、競争力が求められる市場でのコントラクター事業・預託事業・ヘルパー人材派遣などの地域雇用・労働力調整のビジネスモデルの展開。今後私たちが属するグローバル市場は今までとは異なる課題に直面するでしょう。瑞穂の国は豊かな農産物を生み出します。
 日本の人口が減少する中、世界の人口はすでに70億を超えています。日本の農業の将来は国内の需要を満たし、同時に世界のニーズ、そして世界基準に合った安心・安全に裏打ちされた高品質・高付加価値農産物を輸出する時代に入っていくことでしょう。世界の人口増に日本が貢献する時代が来ます。
 決して夢ではない農産物輸出大国と呼ばれる日本、それを支える農協であるために次々と新たな取り組みに挑戦し続けることこそ、人・組織・地域作りにつながっていくものだと思います。受賞者の皆様、本当におめでとうございました。

 


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