特集

JA全農ミートフーズ株式会社 木村敬・代表取締役社長に聞く

一覧に戻る

JA全農ミートフーズ株式会社 木村敬・代表取締役社長に聞く  消費者と畜産農家の懸け橋として

 JA全農ミートフーズは今年11月、東京・千代田区大手町に4店目の直営焼き肉店「ぴゅあ大手町店」をオープンさせた。既存の3店が順調で、大手町店の開店でさらに弾みをつけ、国産食肉の消費拡大につなげようというものだ。木村敬社長に抱負を聞いた。

◆出店増やし直販機会を拡大

―「ぴゅあ大手町店」が11月1日にオープンしましたが、評判はどうですか。

 

木村敬・代表取締役社長

開店してまだ日が浅いですが賑わっています。1000円の焼き肉ランチに人気があり、周辺に焼き肉の店が少ないことと、リーズナブルな価格で国産のよい肉を使っているということが評価されているのだと思います。入居が始まったばかりのビルですが、最終的には1万人くらいの規模になると聞いています。これからが楽しみです。

11月1日にオープンした「焼き肉本舗ぴゅあ」大手町店

生産者の団体である全農が、直接消費者に食肉を提供することは大きな意味があります。今は東京だけですが、将来は関西や福岡地区への出店も考えています。その前に香港で出店をすすめており、2月には開店の予定です。日本のおいしい牛肉が中国でも評価されると期待しています。

 

(写真)
11月1日にオープンした「焼き肉本舗ぴゅあ」大手町店

◆JAの直売所への供給も

―高齢化、人口の減少などで食肉の消費が伸び悩んでいます。消費拡大にどのように取り組んでいますか。

食肉の消費は、高くていいものと、安いものを求めるものの二極化しています。もちろん高くていいものとはトレーサビリティがしっかりしていて、安全で安心な国産です。最近、高齢者も肉食によるタンパク質摂取が必要という考えが広がっており、消費を伸ばすチャンスです。消費が二極化しているのですから中途半端はだめです。単に国産だからというのでなく、的確な情報を発信し、安全・安心を前面に出してアピールしていきます。
具体的には、量販店や生協へのアピールをさらに強めるとともに、外食店舗を持ったり、JAの直売所に直接販売したりすることなども考えています。野菜が中心のJAの直売所で、食肉が欲しいという要望があります。現在、和歌山、大阪、奈良などで直売所に出していますが喜ばれています。関東エリアも含め、全農、県本部と一緒になって本格的に取り組みたいと考えています。
さらに消費拡大のため指定産地取引を行っています。産地と小売店を結び付け、このスーパーに行けば好きな産地の牛肉が買えるという仕組みです。農場名も出します。さらにウインナー、コロッケなど加工品にも、そこの肉を使ったことが分かるようにするのです。
加工品は特に価格勝負の面が強く、このためほとんど輸入原料というのが実態です。生肉は原産地表示が義務づけられていますが、加工品は原産地が分かりません。そこへ指定産地の豚肉で作ったウインナーを出すと、値段は多少高くなるかも知れないが、安心して買ってもらえるのではないでしょうか。
豚肉消費の4割は家庭用、つまりテーブルミートですが、残り6割は外食や惣菜、ハム、ソーセージなどの加工需要で、これは輸入肉が高いシェアを占めています。国産の消費を増やすためには、この6割のシェアを崩さなくてはなりません。そのためにも当社独自の指定産地取引を増やしたいと考えています。

◆生産者とつくる直売ルート

―事業計画では24年度計画で前年度比約8%増の売上げを見込んでいますが、その見通しはどうですか。

この4年ほどは、食肉の消費が落ち、市況も低迷しています。昨年は東日本大震災の影響もあって売上げも下がりましたが、今年は下げ止まっており、反転するときだと考えています。昨年は1979億円の実績でしたが、今年は2000億円台に乗るのは確実です。
経営理念にも掲げていますが、当社の目的は畜産農家の経営の維持・発展にあります。このために必要なことは、取扱量をふやすことです。頭数換算でみた国産食肉取扱量のシェアは、今年度の見通しで牛肉が約18%、豚が12・5%です。これは個別メーカーでみると、牛肉は全国トップです。いま策定中の3か年計画では、目標として牛肉で20%、豚肉で15%を検討しています。

―量販店などとの競争が激しくなっています。販売上の課題はなんですか。

やはり量販店の力、バイイングパワーは強力です。ボリュームを扱うことができるのは量販店ですが、この取引と並行して、我々は生産者と一緒に直売のルートを広げていきます。直売は手間が掛ります。しかし、ヨーロッパでもファーマーズマーケットのような直売がひろがっていると聞いています。
産地の肉用牛はJA系統が押さえています。牛は50%以上です。これをどう加工・販売ルートにするか。産地はもちろん、量販店や生協などとタイアップして考えていきます。最近、量販店などが産地ブランドによる差別化を強めていますが、全農グループは産地を持ち、飼料を扱い、トレーサビリティの体制もできています。この条件を生かして安全・安心を提案し、同業他社に対して優位性を保つことができると考えています。

◆チャレンジ精神を忘れずに

―JAグループの会社として、社員にどのような教育をしていますか。

「消費者と国内畜産農家の懸け橋となり、畜産農家の経営の維持・発展に貢献する」という会社の基本理念を毎朝、役員・従業員全員で唱和し、毎日認識を新たにしています。この理念を深めるためには生産現場を知ることが重要で、特に若いうちに研修の機会をつくり、社員全員が一度は現場経験するようにしています。社員には常に「既存の事業に満足せず、新しいことにチャレンジする」という気持ちを忘れるなと言っています。この精神は、変化の大きい消費を相手にする販売会社には特に必要です。

―ありがとうございました。

(2012.12.05)