JAの活動 シリーズ詳細

シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

2020.03.12 
まず営農経済の黒字化を JA秋田しんせい代表理事専務・佐藤茂良氏一覧へ

指導力強化と提案能力アップ 

 新世紀JA研究会第27回課題別セミナーでは経営改革・改善について意見交換し、JAの実践事例としてJA秋田しんせいの佐藤茂良専務が報告。これを基に営農経済事業の改善方策を検討した。特に経営を圧迫している共同利用施設の利用率低下、老朽化への対応が焦点になった。前回に引き続き、セミナーの内容をまとめた。

◆あいまいな投資基準
JA秋田しんせい 佐藤茂良専務 JA信用共済事業の収益低下が予想される中、総合事業を維持・継続するには営農経済事業の赤字解消は避けて通れない。そこで、当JAの営農経済事業の恒常的な赤字の要因を農業関連施設の問題点と准組合員の問題点に整理し問題提起したい。

 まずは農業関連施設だが、施設を取得するにあたり議論不足感が払拭できず、生産能力を考えず投資している。組合員の年齢・生産基盤拡大等の戦略が明確になっておらず、投資の際に地域の生産能力について十分に議論ができていない。二つ目として、JAの経営体力に合致した投資となっていない。三つ目として「最高のシナリオ」だけを考えた投資となっている。これは最大限の補助金を得ようとするあまり、結果として、必要以上に大型な施設となってしまう。しかも、補助金のひも付き上、汎用性に欠ける。

 四つ目として、モニタリングの仕組みを作らずに投資している。施設稼働後の検証が疎かとなり、施設を取得することが目的となっている。施設の稼働率を上げるための農家の生産技術の向上や生産量拡大のための営農指導、及び販売力の強化なり、部会等との連携が図られているのかあいまいで、総じて投資の基準・判断があいまいと言わざるを得ない。結果、赤字に加えて、経過年数とともに機械等の更新・修繕がつきまとい慢性的な赤字に陥っている。

 当JAの米の取り扱いについても課題が浮き彫りとなった。第一に米の取り扱い種類が多いこと。品種・こだわり米・等級に分類すると約100品種を施設に保管していることになる。従って、施設に収まりきれず横持運賃がかさばり、併せてJA施設の老朽化対応に修繕費がかさむ。しかも作業が秋の同時期に集中することで人件費が膨らむ傾向にある。いわゆる負のスパイラルに陥っている。


◆販売の成果還元を
 営農経済事業の黒字化に必要不可欠であるソリューションの提供にも言及したい。特に営農指導員の育成に苦慮している。担い手からは「訪問が足りない。訪問が無い」と言われるが、組合員との会話が苦手な若手職員が増えている。この結果、農家の経営改善につながる提案ができていない。

 近年、法人・担い手のJA離れが叫ばれるが、JAの農家離れが招いた結果も否めない感がある。営農経済事業の黒字化に必要不可欠なのは、営農指導力の強化と的を射た農家へのソリューションの提案に尽きる。

 農家とJAの信頼関係なくして農家の所得増大にはつながらない。農家の所得増大なくしてJAの営農経済事業の黒字化につながらない。JAの取扱量の拡大を図り販売努力の成果を農家に還元することにもっと視点を向けるべきである。そのためにも、JAと全農との棲み分け、施設経費の負担、県域の施設の効率的利用を期待して止まない。

 次に准組合員と位置づけ、係わり方である。信用・共済の事業利用に特化しているのが現状である。せっかくJAの事業に魅力を感じて加入していただいた准組合員に何もアプローチしないのはもったいない限りである。

 まずは「食」を主役にして地産地消に准組合員を取り込むことはできないか。農家の生産した農産物を食べることでJA・農家を支援していただければこれほど嬉しいことはない。消費者の求める安全・安心な農産物、顔の見える農産物という声に応じたい。

 また、正組合員の脱退は喫緊の課題であり歯止めが掛からない状況となっている。正組合員が准組合員に留まってくれるなら、これまでに培ってきた営農技術・知識、機械オペレーションなど農業の人手不足の解決策にもつながり、正組合員が准組合員の存在に価値を感じ、お互いの存在を認めることで農業振興につながることであろう。

 最後に営農経済事業の黒字化のキーは、農協法第7条第3項に「農畜産物の販売で高い収益性を実現し経営の健全性を確保しつつ投資又は事業利用分量配当に充てる」ことが追加されたことにある。


◆准組と結び付き強化
 もちろん、協同組合論を理解した上でのことであるが、販売・経済事業は金融事業のように商品・サービスの提供先が地域に縛られない。併せて、手数料・利用料等の計算根拠を組合員に明確に提示するべきであり「見える化」することにより組合員から適正な料金ということで理解が得られると思われる。

 営農経済事業は赤字で当たり前というロジックの見直しが求められている。その結果、営農経済事業を黒字化することで金融共済部門の人員を営農部門へシフトすることが可能となり、農業を通じてJAと准組合員との結びつきを強固にして持続可能な地域と総合事業の維持継続が現実化するのではないか。

一覧はこちら

このページの先頭へ

このページの先頭へ