JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー
【意見交換】厳しい経営環境予測 利用施設の効率化を2020年3月12日
◆固定資産投資は慎重に JA秋田しんせい佐藤茂良専務の「JAの経営改革・経営改善への問題提起について」の報告については、JAあさひかわ(北海道)白崎仁浩常務が、近隣JAとライスターミナルの共同利用を行い、固定資産の有効活用を行っていること、3~10年後の収支見通しを出して一定の条件をクリアしないと固定資産投資をしないように努めていることなどを紹介した。
次にJAからつ(佐賀県)統括部・井本克彦部長が、固定資産投資の重要な案件について、3年目短黒(単年度黒字)、5年目累損(累積損失)解消、10年目投資回収の計画を立てて投資し、実績報告を行っていることを紹介。
続いてJA会津よつば(福島県)総合企画部・星雄幸部長が報告。同JAは平成28年3月に会津地方の4つのJA(会津いいで・あいづ・会津みなみ・会津みどり)が合併し、JA会津よつばが誕生したが、共同利用施設として野菜育苗センター、水稲育苗センター、柿選果場、トマト選果場、予冷庫、カントリーエレベーター、ライスセンター、種子センター、堆肥センター等多くの固定資産がある。カントリーだけでも8か所に分散しており、集荷効率が悪い上に、高齢化で労働力が不足気味のため集荷力が落ちており、業者へ流れているという。
また、JA横浜(神奈川県)農業総合対策室・川幡憲司室長は、准組合員対策について具体策のアドバイスを求めた。佐藤専務は、融資契約を契機に若い准組合員加入が増えているが他事業へのつながりが薄いので、農業体験や料理教室等で終わっている。「新米の販売や女性部によるレシピ付きの農産物販売、都会に住む人の農産物購入の継続利用などによる准組合員加入などを検討したい」との考えを述べた。
JA神奈川県中央会JA改革対策部・岩堀義一部長は、JA秋田しんせいには、組合長直轄の部署として監査部と担い手戦略室があるが、担い手戦略室の説明を求めた。これに対し、佐藤専務は「TAC+融資」のセットチームであること、専務直轄の「経営企画課+総合リスク管理課」に全てのソリューションを与え、専務のヘッドクウォーターに育て上げたいとの考えを示した。
最後に新世紀JA研究会の福間莞爾常任幹事が、今回の問題提起を出発点として「収支シミュレーションの結果や対策、中間報告、最終報告を期待している」と述べた。佐藤専務は収支改善のための手数料アップは最後の手段と考えており、まず営農指導で10㌃あたり収量を高め、集荷量向上による効率化に努めたいと述べた。
◆施設遊休化はアウト
公認会計士甲斐野新一郎氏「JAの経営改革・改善の背景と取り組みの課題」では、JA秋田しんせい佐藤専務が、部門別損益の検証がネックになっていること、県中の経営指導力が薄れてきていることを指摘。JA水戸(茨城県)岡崎一美常務が、土地の再評価で自己資本比率を引き上げた経過があるが、支店統廃合による減損損失の計上で自己資本比率が低下することで、減損損失についてのアドバイスを求めた。
これに対し甲斐野氏は、支店統廃合によって遊休化したらアウトで、その意思決定をした年度に減損損失を計上しなければならないこと、過去の土地の再評価分についても現在の時価で計算することから損失額が大きくなる怖れがあること、機械化店舗にした場合は遊休判定にならないこと、関連して店舗・倉庫等にアスベスト等が含まれ撤去見積もりが可能な時点で資産除去債務を計上する必要があることをアドバイスした。
JAしまね(島根県)石川寿樹組合長は、「農水省の姿勢が『求める』から『期待する』に変わったというが信用できない。トップが変われば行政の姿勢も変わるのか」と感想を述べた。
またJAはだの専務・宮永均氏は、バーゼル規制(BIS規制)が2004年のバーゼルⅡからリーマンショックを経て2010年のバーゼルⅢが段階的に実施されているなかで、JAグループのダブルギアリング規制の動向について質問。甲斐野氏は、自己資本の質を高めるため連合会出資のリスクウェートを100%から250%へ引き上げ、劣後ローンも自己資本算入から除外され解消してきていること、ダブルギアリング規制が入るとなると「徹底反対運動を起こすしかない」との考えを示した。
最後に監査法人トーマツの公認会計士、髙山大輔氏は、事業損失の計上が続くと減損損失のみならず、継続企業(GC=ゴーイング・コンサーン)の前提にも注意が必要と指摘した。
◆理事会制度で十分
JET経営研究所代表・濱田達海氏の「経営管理委員会制度をどのように考えるか」については、JA秋田しんせい佐藤専務が、平成18年に経営管理委員会制度を導入すべきか検討したが、地域の声が届かない恐れがあるとして理事会制度を継続することになったことを報告。秋田県内13JAが2024年度をめどに統合し、県単一の組織を検討しているが、理事会制度を継続することで検討していることなどを報告した。
最後に監査法人トーマツのシニアマネージャーの水谷成吾輔氏は、「大型合併に伴い、役員・理事の分担の受け皿として経営管理委員会制度を採用しているように思える」との感想を述べた。また濱田氏は理事会制度のもとでも複数常勤と非常勤理事の分担など検討できるので、「現行の理事会制度の採用で十分」との考えを示した。
写真:報告をもとにディスカッション
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