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特集:新世紀JA研究会第1回全国特別セミナー 国民の食を守る役割を明確に

2019.08.27 
【萬代 宣雄・新世紀JA研究会名誉代表・JAしまね元代表理事組合長】セミナーの合意を要請へ 「貯保」負担削減など実現一覧へ

新世紀JA研究会13年の活動

萬代氏 平成15年に島根県JAいずもの組合長に就任し、1農協の組合長では国やJA中央機関に対して発信の限界があると感じていたところ、東京でのある会合の後、仲間を集めて発足したのが新世紀JA研究会です。JA運営を担う役職員が、情報交換や話題を共有することを目的に、18年10月のJAいずも(当時)での開催から、今日まで25回にわたるセミナーを全国のJAの協力を得て開催してきました。

 セミナーではアピール文を採択し、国会議員、農林水産省、JAグループ全国連に対し、農業・農協が抱えている諸課題の解決に向けて要請活動を実施してきました。
 これまでの主な成果として、一つは国の補助金返還義務の免除です。国庫補助事業等の補助対象財産の財産処分(補助目的外への転用、譲渡、取り壊し等)に対する制限について国に要請し、概ね10年経過した補助対象財産は、補助目的を達成したものとみなすこととなりました。
 二つ目はJAバンク支援基金の積立金の凍結。我々の要請活動で関係者の理解・協力を得ることができ、平成21年度から0.015%であった負担金を凍結することができました。これによってJA全体で約160億円の掛金負担(平成20年度実績)がなくなり、当時のJAいずもで、約6000万円の掛金が半分になりました。
 三つ目は〝協同の翼〟青年農業者のリーダー育成・交流研修をスタートさせました。平成25年に青年農業者およびJAグループ中堅職員を対象に、東南アジア3か国(ベトナム・タイ・シンガポール)を視察しました。


◆      ◇

 10年以上前のことだが、農水産業協同組合貯金保険制度関係の稟議に目が留まりました。調べたところ、貯金保険機構とJAバンク独自の制度である「JAバンク支援基金」のものを合わせ、積立金が十分溜まっていることがわかり、新世紀JA研究会を中心として要請活動を始めることとなりました。
 JAバンク支援基金は、前述の通り凍結することができたが、貯金保険機構の保険料は、農水省から「預金保険機構とのバランスもあり、貯金保険機構だけ変えるわけにいかない」「金融環境の変化で、これから何があるかわからない。JAグループはまだ不足」等の理由から要請は拒否されてきました。しかし、一方で、預金保険機構は何度も保険料を引き下げています。
 この制度の対象となる組合は、ペイオフが解禁された平成14年度の1713団体から30年度には787団体まで減少。また15年度以降、破綻した組合はなく、責任準備金は着実に積み上がっている状況でした。
 積立金は多いにこしたことはないが、目標額の設定がないことが問題です。これでは農協いじめ、つまりは農家いじめです。保険料を払うことは、貯金者保護のために重要ではあるが、保険料を凍結し、「農家所得の増大」「農業生産の拡大」「地域の活性化」のために農業振興に向けた投資をすべきではないかと考えました。


◆      ◇

 近年のわが国の農林水産業は経済・社会の国際化、自由貿易の促進のなか、それなりに生産を伸ばしているが、海外からの農産品や加工食品、木材製品等の輸入拡大が進んで自給率が下がり、中山間地の耕作放棄、鳥獣害、荒廃山林等が増大しています。こうした環境に地域の農林水産業を支えてきた農協や森林組合、漁協等の協同組織は苦しんでいます。
 この事態に懸念を持つ有志議員による議員連盟が設立されました。これが貯金保険機構の保険料見直しに向けて、大きな後押しとなり、農協改革推進決議(平成30年8月24日)に自民・公明両党の重要要望事項の一つとして貯金保険機構の責任準備金保険料引き下げが盛り込まれました。我々の思いが国会議員の先生方に通じた結果であり、平成30年に73名で発足し、現在は107名になっている。こうした動きが農水省の態度を一変させることになりました。
 平成31年3月、萬木孝雄氏(東京大学大学院農学生命科学研究科准教授)ほか委員8名で、保険料率に関する検討会が開かれました。その中で、組合の経営リスクの考え方として、信用事業の他、経済事業等のリスクがあるが、そのリスクは過去の発動実態を踏まえた検討をすることで十分であるとされました。
 また、責任準備金の積立目標額をJAバンク貯金約100兆円の0.5%に当たる5000億円(預金保険制度は被保険預金約1000兆円の0.5%にあたる5兆円を責任準備金目標額としている)、目標達成までの期間は、預金保険機構を参考に10年程度とすることが適当であるとされました。
 貯金保険機構責任準備金は4310億円(H30年度末)であり、それにJAバンク支援基金約1700億円、県相互援助積立金約1600億円を合計すると約7600億円となり、目標の5000億円をクリアしています。
 平成31年3月29日、農水大臣、財務大臣および金融庁長官の許可を得て、保険料について、一般貯金等0.014%から0.008%へ、決済用貯金0.018%から0.013%に引き下げられました。これによるJAグループの保険料圧縮額は70億円。JAしまねでは2018年納付額1億4500万円から2019年8200万円となり、6300万円の減となりました。
 長年、問題提起し続けた貯金保険機構掛金見直しが現実になったことについて、国会議員の先生方をはじめ、各関係者の皆さんに感謝します。これからも農業振興の財源を確保すべく保険料完全凍結に向けた働きかけを続ければなりません。
 苦しい経営環境のなかで、保険料を捻出しているにも関わらず、JAグループ役職員の「経費に対する認識の甘さ」を痛感しています。保険料を税金の一つくらいにみて、その存在さえ知らない役員もいます。今回の掛金引き下げを契機に役職員全員が、今後のJAを取り巻く課題・問題に貪欲な気持ちで日々の業務にあたってくれることを期待します。

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