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みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (37) 【防除学習帖】第276回2024年11月30日

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 令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。
 みどり戦略対策に向けたIPM防除でも、必要な場面では化学的防除を使用し、化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせて防除効果の最大化を狙うのだが、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できるようにするためには、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理すると、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道が探れると考えている。そのため、有効成分の作用機構ごとに分類し、RACコードの順番に整理を試みている。
 現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
 
6.N-フェニルカーバメート
 (1)作用機構:[B]細胞骨格とモータータンパク質
 (2)作用点: チューブリン重合
 (3)グループ名:N-フェニルカーバメート [グループコード:10]
 (4)殺菌剤の耐性リスク:高
 (5)耐性菌の発生状況:広範囲の病原菌に耐性菌が発生、グループ内交差耐性あり、
                MBC殺菌剤(前回紹介)と負の交差耐性あり
 (6)化学グループ名・有効成分名(農薬名):
   [1]ジエトフェンカルブ(単剤での農薬使用はなく、次の各混合殺菌剤の1有効成分となって                                            いる:スミブレンド水和剤、ゲッター水和剤、プライア、ニマイバー)
 (7)グループの特性:
このグループは施用されると加水分解を起こして、病原菌細胞が分裂する際に必要な微小管の重合を阻害し、正常な有糸核分裂ができなくして、結果として増殖ができなくなって死滅する。
このグループは明瞭なMBC殺菌剤と負の交差耐性の関係を持っており、つまり、MBC剤が効かない耐性菌に対してのみ効果を発揮し、MBC殺菌剤が効く菌(感受性菌)に対しては効果がない。このため、MBC殺菌剤やジカルボキシイミド剤やSDHI剤など他のグループの殺菌剤との混合で使用される。浸透移行性も有しており、効果の安定に寄与すると考えられている。
  なお、N-フェニルカーバメート自体は灰色かび病にのみ効果を示すため、一覧表の灰色か び病以外の適用病害は、混合剤の他の有効成分の効果による適用内容となっている。
 N-フェニルカーバメートは他剤との混合剤として販売されているのでこのような表記とした。
 (8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
     ジエトフェンカルブのリスク換算係数は0.1と一番リスクが低いグループに分類されて              おり、ジエトフェンカルブ剤によるリスク換算値軽減は考える必要はないだろう。
     それよりも、貴重な浸透性殺菌剤であるので、耐性菌の発達状況に注意しつつ、耐性菌対 策を十分に講じながら、用法用量を守って正しく使用するように心がける方がより良いと考 える。

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