生育中のニンジンに食害 クロバエキノコバエ科の一種 対策検討会議2016年8月25日
農水省は8月22日、埼玉県北部で確認されているクロバエキノコバエ科の一種について対策検討会議を開いた。クロバエキノコバエは腐った作物などを食べるが、今回会議を開いた同科の一種とみられる虫は、生育中の作物の地下部を食べることが特徴で、学術的にまだ特定されていない。
生育中のネギやニンジンの地下部を食害している事例が平成26年に埼玉県北部のネギで一番初めに確認された。27年も同じく確認されており、本年度は3月にネギで株の成長不良などの被害を確認。5月には3月に同虫の多発生が確認されたネギのほ場に隣接するニンジンのほ場で食害が確認された。
これまで植えている作物に被害があった例はクロバエキノコバエ科では確認されておらず、その一種とみられる同虫は学術的に特定されていない。生態についてはまだ不明な点が多いが、暑い時期の活動はあまり活発ではなく、秋冬以降に活動することが分かっている。
7月に隣接都県でこの虫の発生が疑われる事例の聞き取り調査を行ったが、発生が疑われるほ場はなかった。現在被害が確認されているのは、埼玉県北部のニンジン・ネギだけとなっている。地下部の食害のため、地上から食害を判断する方法は今のところない。
農水省では虫の生態の解明と防除手法の開発を緊急研究課題とし、29年3月までに成果をまとめる予定としている。また発生範囲を特定するための調査も実施する。
この虫について効果を持つ農薬の登録がないことから、来年春に向けて農薬登録の拡大の手続きを進めることとなった。
◆発生が確認されたら...
クロバエキノコバエ科の一種の発生が確認された県では、その発生が確認された範囲の生産者に次のような防除方針を示している。
◎植物残さの処分
幼虫の被害が確認されたり、生育不良で抜き取ったりしたネギやニンジンの植物残さは、圃場内外に放置すると次世代の発生源となる可能性があるため、ほ場外で焼却などで処分をする。またほ場内にすき込んだときは、石灰窒素による植物残さの腐熟促進などの処理を徹底する。さらにネギやニンジン以外のほ場での衛生確保に努める。
◎出荷調整段階の確認の徹底
出荷先でこの虫の発生がないよう、当面出荷調整段階で付着や食害痕などをよく確認する。
◎水はけの改善
水はけの悪い場所での発生事例があるため、水はけの改善に努める。
◎土壌消毒の実施
発生が多い土壌では、可能であれば土壌消毒を行う。
◎発生ほ場での栽培作物
可能な限り、ネギやニンジン以外の作物を栽培する。
(写真)クロバエキノコバエ科の一種の幼虫、食害のあったネギとニンジン。いずれも埼玉県病害虫防除所提供。
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