農政・農協ニュース

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米の先物取引導入に反対  JAグループ

 JA全中は5月12日の理事会で米の先物取引の導入については試験上場であっても反対する基本的な考え方を決めた。

 米の先物取引については、今年3月、東京穀物商品取引所と関西商品取引所が2年間限定の試験上場の許可を農林水産省に申請している。7月下旬までに認可・不認可が判断される予定だ。
 ただ、この問題は平成17年に同様の申請が行われ、農水省は「生産調整への参加を誘導している政策との整合性を保てない」との理由で認可しなかった。
 JAグループは、現在の戸別所得補償制度は生産数量目標に従って生産した販売農家にメリット措置を与えるという点では、現在は国主導で生産調整を実施するという、より強力な政策になっていることから平成17年に不認可となった理由は今も同じであるとしている。
 また、戸別所得補償制度では米価が下落した場合に米価変動補てん交付金が支払われる仕組みがあるが、先物取引導入によって価格変動のリスクヘッジが行われることになれば、交付金を措置する意味がなくなり現行政策と矛盾することもJAグループは指摘。

◆主食を投機目的としてよいのか

 さらに市場原理主義の徹底を前提とした先物市場では、JAグループが主張する需給調整のための政府買い入れなどができなくなる恐れもあるとした。
 先物取引が日本の米流通の実態に即さないことも反対の理由に挙げた。
 現在の取引は産地銘柄ごとの相対取引が主。播種前契約であっても産地銘柄が分かったうえで契約を行っている。これに対して先物取引は取引と実際の受け渡しが異なる仕組みだ。JAグループは、こうしたことから先物市場の導入より、まず必要なことは現物市場における適切な価格形成であると主張。そのため農水省による生産・流通価格の公表や、幅広い集荷業者の価格・契約状況など、現物市場の適時・適切な価格公表システムの検討が必要だとしている。
 さらに、食料価格の高騰や東日本大震災が発生しているなか、「投機的な米先物取引を検討すること自体問題」と強調した。
 穀物の世界相場は再び上昇しトウモロコシでは4月に史上最高値を更新するなどの状況だ(本紙5月10日号)。価格高騰の理由に投機マネーの流入が指摘されている。実際、シカゴの先物市場での買い手の8割は投機ファンドが占めているという報告もある(本紙2月28日号)。
 JAグループは日本が主食である米を投機的なマネーゲームの対象とすることは食料安全保障の観点からも大問題であると指摘、さらに東日本大震災によって米の主産地が大きな打撃を受けているなかでは、被災地の早急な復興をはかっていくことが先決だと強調している。

(2011.05.13)