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コラム:正義派の農政論

【森島 賢】

2016.09.26 
TPPは張子の虎一覧へ

 張子の虎は、いかつい顔をしていて、いかにも強そうに見える。しかし、実はこけ脅かしで、決して強くない。紙製だから、指でつつけば、すぐに破れてボロボロになり、醜い姿を天下に曝す。
 TPPは、それと同じで、決して強くない。国民の支持がないからである。しかし、推進派は、本物の虎だぞ、強いぞ、強いぞ、とくり返し宣伝している。張り子の虎のように、強そうに見せかけるのは、弱さをかくすためなのだ。
 ここで問題にしたいのは、TPP反対派の中に、同じように言う人がいることである。農協陣営の中にも、そう言う人がいる。洞察力が欠落した似非インテリに多い。そして、その結果、当人が意識しているか否かにかかわらず、推進派を力づけ、反対派の気勢をそぎ、力を弱めている。これは、利敵行為といっていい。

 TPPはアベノミクスの最も重要な成長戦略である。自公政権がTPPに全力を注いでいることは、百も承知だ。
 TPPは張り子の虎だ、と強がりを言っている訳ではない。あなどっている訳では決してない。
 TPPは、世界最強といわれるアメリカを後ろ盾にしているから、強そうに見える。日本では、財界の特別な肝いりだから強そうに見える。1%の富裕層のあくなき利益追求のために、本物の虎になって、人間を食おうとしている。農業を崩壊させ、国民皆保険を潰し、国家主権まで売り飛ばそうとしている。そうして、国民の99%の弱者を痛めつけようとしている。

 それに対して、農業者や医療関係者や法律家など、大多数の国民がTPPに反対している。
 大多数の国民が反対する制度が、成り立つ筈がない。日本は主権が国民に在る民主主義の国だからである。
 民主主義の国では、強いか、弱いか、の力の源泉は国民にある。最強の力は財界ではなく、国民の支持にある。TPPは国民の支持がないから、本物の強い虎ではなく、ひ弱な張り子の虎である。

 TPPは民主主義を否定し、ジャングルの掟を最高法規にしている。そうして、弱い人間を食う本物の虎になることを、戦略目的にしている。そのように考えておかねば、TPP反対の運動の戦略目的が分からなくなる。それでは、運動の戦術を練ることができない。その限りで、相手は強い、と思っている。
 つまり、戦術的には、本物の虎と思っている。しかし、戦略的には、張り子の虎と思っている。
 この戦略を持って運動を論評するか、この戦略を持たずに運動を論評するか、の間には雲泥の差がある。反対派を力づけるか、推進派を力づけるか、の大きな差がある。

 相手は強い、と言うだけでは、気が滅入るだけだ。反対運動に気合いが入らない。それは、推進派の思うつぼだ。
 推進派は、TPPは時代の流れだ、とか、政府は合意案に署名してしまったから、もう後へは引けない、とか言っている。そうして、推進派が強いことを、くりかえし強調して、反対運動をあざ笑うかのように、今さら反対してもダメだ、と言っている。それは、反対派の気勢を挫き、力を削ぎ、反対運動を頓挫させるための戦術である。
 反対派は、推進派のこの卑劣な戦術に、乗せられてはならない。

 実際に、TPPは張り子の虎であることが世界中で暴露されている。
 アメリカでは、2大政党の大統領候補が、2人ともTPPに反対している。TPP合意案を、国会で承認した国は、1つもない。ベトナムは、国会の議題からさえ外した。
 こうした、世界中の反対運動の成果は、日本の農協が先頭に立ち、多くの国民の支持、という最強の力を得て勝ち取ったものである。それは、TPPは国民の支持がないから、ひ弱な張り子の虎だ、という認識に立ち、不動の信念を持って勝ち取った成果である。
 そして、それは、日本の農協が、これまでのTPP反対運動で、すでに世界の政治史に深く刻み込んだ、燦然と輝く、誇るべき歴史的成果である。

 こうした中で、日本の国会だけが、なり振りかまわず、躍起になって、TPP合意案を批准しようとあがいている。
 今後、どうなるか。
 国会は反対派が少数派であることを、それほど悲観しなくていい。国会外の、主権者である国民は、反対派が圧倒的な多数派である。このことを国会に思い知らせればいい。そうすれば、国民の代表である国会議員は、反対する筈だ。
 国民の代表である国会議員の中に、もしも大多数の国民の、TPP反対という意志に反して、賛成する議員がいれば、その議員は国民の代表とはいえない。だから議員を辞めてもらうしかない。それが民主主義というものだ。

 しかし、今すぐに辞めてもらうことは、それほど簡単なことではない。衆議院の解散を待つしかない。だが、幸いなことに、年明け早々に解散するという噂がある。待つ時間は、それほど長くはない。今が好機だ。
 解散後の総選挙で、反対派を多数派にする好機がくる。この好機を生かせば、反対派の政府ができる。そして、今のTPPの政府合意案を破棄することになる。

 その前に、自公の与党が危機を察して、以前のような反対派に鞍替えするかもしれない。そうしないなら、野党が政府を作るしかない。そのためには、小選挙区制だから、野党の選挙協力が欠かせない。
 当面する反TPP運動の戦術は、今日から始まる国会での批准拒否であり、野党の選挙協力の着実な具体化であり、それに対する国民の支持の拡大である。
 それに成功すれば、TPPが張り子の虎であることを、日本でも証明したことになる。TPPは、うす汚れた紙くずになる。
(2016.09.26)

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