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コラム:森田実の政治評論

【森田実 / 政治評論家・山東大学名誉教授】

2018.04.01 
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「千丈の堤も蟻穴より崩るる」(『韓非子』)

◆安倍政権「森友」で躓く

 2012年12月の衆院選に勝利して政権を取った第二次安倍政権は、第二次大戦後の最強の政権になりました。衆院選は、2012年12月につづいて2014年12月と2017年10月の衆院選に勝利しました。衆院選3連勝です。それだけではありません。2013年夏と2016年夏の二つの参院選において勝利。国政選挙5連勝です。さらに2014年春の統一地方選にも勝ちました。野党の不甲斐なさに救われたとはいえ、これほど連戦連勝した政権は過去にはありません。しかも自公連立体制は安定しています。2018年9月の自由民主党の総裁選における安倍総裁の三選も確実視されていました。
 しかし、事態は急変しました。森友学園事件に関連して財務省理財局の決済書類改ざんという驚くべき不祥事が明らかになりました。行政府が国権の最高機関である国会をだましたのです。安倍内閣の責任重大です。内閣は総辞職を含めて何らかの道義的責任を取らなければならないのです。
 しかし麻生財務相(副総理)は、野党の引責辞職要求を拒絶しています。安倍総理も麻生財務相の職務続行を求めています。安倍総理と麻生財務相は、佐川前理財局長に責任を取らせることによってこの事態を乗り切ろうとしているようにみえますが、これで済むとは、とうてい考えられません。役人にだけ責任をとらせて政治家が責任を逃れることには自民党内からも批判の声が上がっています。この批判を抑え込むことは至難です。安倍総理は袋小路に入り込んだようにみえます。

 

◆政権内の複雑な関係

 麻生財務相は安倍政権の生みの親であり、菅内閣官房長官とともに安倍政権を支えている安倍政権の大黒柱です。しかも森友問題は安倍総理夫人の軽率な行動と無関係ではありません。この事件の責任を負うべきは安倍総理の方です。安倍総理としては麻生財務相に責任をとらせて自らの総理としての地位を守ることを潔よしとしない心境にあると推察されます。
 安倍総理には二つの道があります。第一は安倍総理、麻生副総理ともに生き残ること、第二は麻生財務相に責任をとらせて安倍内閣の存続をはかることです。もっとも第二の道をとって安倍総理だけ生き残ったとしても安倍政権の安泰が保障されるわけではありません。安倍総理を待っているのは茨の道です。安倍総理と麻生副総理は第一の道を貫こうとする可能性が高く、これから安倍・麻生体制と反安倍・麻生勢力との闘いが始まると考えられます。どちらが優位に立つかは世論の動きによって決まります。

 

◆安倍内閣支持率急落

 去る3月9‐12日に実施された時事通信社の世論調査によると、安倍内閣の支持率は前月比9.4ポイント減の39.3%と急落しました。不支持率は8.5ポイント増の40.4%でした。支持は3割台に落ち、不支持は支持を上回りました。原因は森友学園の問題に関する財務省の決済文書の改ざん事件が政権への打撃になったのです。
 安倍内閣の支持率が急落した結果、安倍総理の求心力は低下しています。野党各党と自民党内の批判派は勢いづいています。
 安倍総理が今最も力を入れているのは憲法改正ですが、野党でありながら憲法改正に熱心だった「維新」は慎重論に傾きました。公明党内でも慎重論が高まってきています。自民党内でも安倍総理への抵抗派が勢いづいてきています。安倍総理が狙う衆参両院での改正発議がむずかしくなってきているのです。安倍総理が得意とする外交にも影響が出ています。麻生財務相はG20への出席をやめました。
 安倍内閣が森友問題で躓き、日本の政局が混乱していて安倍内閣の力が衰えてきていることは世界中に広まっています。安倍総理の指導力は、内政でも外交でも弱まっています。
 安倍総理が求心力を回復する手段としては今では衆院解散か内閣改造しか考えられませんが、前回の衆院選から半年も経っていない状況での解散は困難でしょう。強引にやれば命取りになります。内閣改造も通常国会開会中は無理でしょう。
 安倍総理に残されているのは「泣いて馬謖を斬る」ことしかないと思います。野党の要求を受け入れて、盟友の麻生財務相に責任を取らせるとともに、安倍総理夫人の証人喚問または参考人招致を受け入れることです。問題は安倍総理にこれを行う勇気があるか否かです。
 もう一つは「死中に活を求める」ことです。内閣不信任案を可決させて、憲法第64条で衆院を解散することです。衆院選で勝てば安倍内閣を存続させることは可能になります。問題は安倍総理に「死中に活を求める」度胸があるか否かです。度胸がなければ退陣は時間の問題です。

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