JAの活動 シリーズ詳細

シリーズ:今村奈良臣のいまJAに望むこと

【今村奈良臣・東京大学名誉教授】

2017.04.15 
第10回地域農業の構造をいかに改革するか一覧へ

ー日本型農場制農業の創造を目指す(株)田切農産(長野県飯島町)-

<三つの経営理念>
今村奈良臣 東京大学名誉教授 紫芝勉君が社長をしている(株)田切農産は三つの経営理念を掲げて活動している。
 「永続する農業」「環境にやさしい農業」「創造する農業」という三つの理念を掲げ、(一社)「田切の里営農組合」と協力して2階建て組織として連携しつつ活動を進めている。この中で、田切地区の農地集積を進め、野菜などの導入にともなう作業受託なども通して多角経営の推進、さらには農産物直売所の設立、運営、つまり農業の6次産業化へと段階的に活動を推進し、さらには転作作物の栽培受託や意欲ある農家への作業委託の推進など行い、効率の良い望ましい農地利用(団地化、ローテーションなど)と作業により田切地区の農家の利益に結び付くよう配慮してきている。つまり(株)田切農産が着実な経営成果をあげるだけではなく、田切地区の農家が10年後も同じように農業を続けていくために何が必要かを常に考え、サポートできる会社運営をめざしてきている。
 田切地区には大規模専業農家1戸(経営農地30ha)、専業農家5戸(経営農地計10ha)、高齢兼業農家70戸(自営農地計40ha)などがあるが、(株)田切農産が(一社)「田切の里営農組合」から利用権の設定を受けるかたちで経営している(預かっている)農地が80ha、さらに栽培受託している農地が20haに及んでいる。しかも、これらがいろいろの面で常に相互補完、相互依存の関係を結びつつ少なくとも10年先を視野に入れつつそれぞれが活発な農業活動、地域活性化活動に取り組んでいるのである。

<田切農産の経営成果>
 田切農産の事業の要点だけ紹介しておくと(平成26年度)、水稲38ha、大豆10ha、そば15ha、ホールクロップサイレージ12ha、その他にネギ(委託栽培)5ha、トウガラシ、アスパラガス1ha。さらに農作業の受託が水稲作業述べ80ha、大豆防除作業30ha、その他受託作業30ha、乾燥施設の運営など実に多岐にわたっている。

図1

 売上高は平成26年度で、第1図に示したように1億3446万円、内訳は水稲44%、ネギ29%、直売15%、大豆・そば5%などとなっている。また、販売先は市場34%(JA共販など含む)、契約栽培31%、直売28%などとなっており経営的にもすばらしい成果をあげているが、これらの数字のもつ細かいことにはこだわらず、田切農産の経営者である紫芝勉君の多彩な活動の一端を紹介しておくことの方が、読者のこれからの活動のヒントになるのではないかと思い紹介することにしたい。

<高齢技能者を生かす>
 かねてより私は全国に向けて「ピンピンコロリ路線の推進を」と呼びかけてきた。その一文を紹介させていただく。
「今、農村では農村人口の高齢化がすすんでいる。しかし、私は農村の高齢者を『高齢者』と呼ばずに『高齢技能者』と呼んできた。農村の高齢者は単に年齢を重ねてきたのではなく、知恵と技能・技術などを頭から足の先までの五体にすり込ませて生きてきた人たちである。その持てる知恵と技能を、地域興しに、とりわけ農業生産活動に活かしてもらいたい。高齢者はつくったり加工したりするのは上手だが、売ったり宣伝したりするのは下手だ。そのためには、とりわけ若い女性、中堅の女性たちの多面的なリーダーシップが高齢技能者には必要不可欠である。高齢技能者を老人ホームなどに送り込むのではなく、力の要らない野菜の栽培、直売活動、コミュニティ活動など、地域住民や消費者などとの接点を求める活動に、その持てる智恵と技能を活かしてもらいたい。それが元気の源泉になる。そういう活動を行うなかで、ある日、地域の皆さんにたたえられて大往生を遂げていただくようにしてもらいたい」
 こういう私の提案をそのまま地で行くような活動を実は紫芝勉君の指導のもとで田切農産では実行しているのである。白ネギ栽培とかアスパラガス栽培や直売所「キッチンガーデンたぎり」で実践しているのをこの目で確かめた。

<高齢技能者を生かす道ー白ネギ作り>
 白ネギの高齢技能者を中心にした栽培・管理の姿を私は初めて見たときに、そのすばらしい光景を見て驚いた。紹介しよう。
 種苗、肥料等の資材の提供や農業機械作業(耕耘、畦立て、掘り取りなど)を田切農産が行い、育苗、移植、防除、収穫、選別などの手作業を必要とする分野を共同作業として行い、日常の管理作業としての土寄せ、施肥、除草などを委託された高齢技能者たちが行うよう、白ネギ栽培にあたっての作業によりその責任の所在を分けて行うよう決めている。
 要するに田切農産が資材(や機械作業)等を用意し、管理者たる高齢技能者たちは日常の管理作業を行う。そして育苗など共同作業にかかわる人件費(労務費)は田切農産が白ネギ畑の管理者たる高齢技能者に支払うという仕組みになっている。
 白ネギの出荷は8~12月の5か月間継続して行えるよう栽培計画が立てられており、売上高から諸経費を差し引いた収益が高齢技能者たち白ネギ栽培参加者にいくようになっている。そして出荷量、品質をもとにプレミアムとして算出し、熱心に肥培管理した高齢技能者に還元されるような仕組みが作り上げられている。
 8月上旬、訪ねた折、ほ場の現地視察をつぶさにしたが、雑草1本もなく、出荷直前のどのほ場も姿が揃い見事な出来栄えであった。
 白ネギについては団地化してあるため、仲間意識を根底に置きつつも競争意識の発揮が、その白ネギ畑に表現されているように思えた。
 発足当初は3家族(夫婦単位)であったが、着実に増え、いまでは23家族になり、白ネギ栽培の労働を楽しむだけでなく、フトコロも豊かになることが楽しみだと、その高齢技能者たちはもらしていた。
 そのほか刮目すべき活動をおこなっているが、次回以降に続けさせて頂く。

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