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シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

2018.06.04 
実需に基づき園芸産地づくり【酒井 肇・JA全農園芸部次長】一覧へ

・園芸の予約相対拡大

 全農は今後の園芸事業の取り組み方向として、その具体策を「魅力増す農業・農村の実現に向けた本会の取り組み」としてまとめ、平成29年度からその実践に取り組んでいます。これまでの取り組み状況について、生産段階・流通段階・販売段階に分けて報告します。

【生産段階での取り組み】

◆加工・業務向け青果物の生産振興酒井 肇・JA全農園芸部次長

 加工・業務用野菜として需要の高いキャベツ・玉ねぎ・レタス・にんじん・ネギ類を重点5品目として、国産品の端境期や品薄期における生産振興対策を目的に基礎試験・試験栽培に取り組んでいます。
 29年度は、キャベツ・玉ねぎの端境期対策やレタスの猛暑期対策、ブロッコリー・トレビスの国産化対策などにおいて、産地化に向けた試験栽培・基礎試験を6品目、12JAで実施しました。また、重点品目とは別に、大手惣菜メーカーとの連携のもと、実需者ニーズにもとづくカボチャの産地づくりにも新たに開始しました。

(写真)酒井 肇・JA全農園芸部次長

 

◆輸入量の多い家計消費向け野菜の国産への転換

 国内流通量において輸入品の割合が30%以上を占めるブロッコリー、90%以上を占めるパプリカについて、国産への転換に向けた取り組みをすすめています。

(1)ブロッコリーの取り組み
 過去5年間を見ると、生鮮品の輸入量は減少しているものの、冷凍品の輸入量は年々増加傾向にあります。この輸入冷凍品への対抗策として、花蕾が通常品(約300g)より大きい(1kg程度)多収性品種を、29年8月から種苗会社と連携して2県3JAで試験栽培を開始(JAひびきの、JA榛沢、JA島原雲仙)し、輸入品に対抗できる原料価格の実現をめざしています。
 30年度はさらに8県域(秋田、福島、群馬、千葉、鳥取、島根、徳島、愛媛)で試験栽培を実施し、今後、本格栽培の推進、学校給食等をターゲットとした販路開拓をすすめていきます。
 また、各県域における生鮮用ブロッコリーの生産振興を目的に、主産県21県による「ブロッコリー主産県会議」を立ち上げ、作付け動向などに関する情報交換を実施しており、29年度は4回開催しました。

(2)パプリカの取り組み
 1993年にオランダから初輸入されたのを皮切りに、2000年から韓国産が急増し、これまで輸入品が国内マーケットを形成してきています。
 こうしたなか、国産パプリカの生産拡大と国産シェア向上に向け、29年10月にパプリカ生産法人等により「国産パプリカットワーク(NPA、30年2月よりNaPAへ名称変更)」が設立され、本会は、NaPAサポートチームとして参画しています。
 そのなかで、資材供給・栽培技術指導を通じた生産支援や、加工・業務向けサプライヤー等に対するサラダや惣菜向け原料を中心とした販売支援を実施しています。

 

◆産地労働力支援の取り組み強化

 高齢化の進展による労力負担の増加や、定植・収穫時期における人手不足への対応として、重量野菜では「定植・収穫」支援のために、茨城・岡山・大分各県本部において、パートナー企業等と連携した作業受託の取り組みを実施しています。
 一方、軽量野菜では「選果・選別・調整(皮むき・根切り・結束など)・包装加工」支援に向けた広域集出荷加工施設の整備をすすめています。
 なお、パートナー企業との連携による作業受託方式については、先行事例を参考に、事業のスキームや手続きなどをまとめた「農作業労働力支援策導入ガイド」を作成し、今後、他県への水平展開をはかっていきます。

 

【流通段階での取り組み】

◆物流課題への対応

(1)ストックポイント(SP)設置による共同配送体制の構築
 青果物輸送において、ドライバー不足等によるトラックの確保や運賃の値上げ、29年11月に改正施行された「標準貨物自動車運送約款」による商品の積み下ろし作業や手待ち時間の別請求など、輸送に係る課題が顕在化しています。あわせて配送先の削減が求められる事態ともなっており、運賃コスト増高と併せて、有利販売に向けた出荷先の確保も課題となっています。
 このため、産地からの荷物を一か所に下ろし、複数産地の青果物のセットアップ・複数か所への共同配送により、出荷先の確保や運賃抑制等を目的に、29年7月にJA全農青果センター㈱神奈川センター(平塚市)内に関東ストックポイント(SP)を設置しました。現在、鹿児島県経済連とJAふくおか八女が利用を開始。福岡県本部の試験輸送など、利用県の拡大を推進しています。

(2)パレット輸送の拡大に向けた取り組み
 北海道や九州からの青果物輸送では、ダンボール等のトラック直接積み付け、ドライバーの手作業による積み下ろしの比率が高く、ドライバーの労力・作業時間の増大により輸送費が増嵩しています。このため、産地から輸送先までダンボール等をパレット輸送する一貫パレチゼーション体制の構築に向け取り組みをすすめています。
 一方、パレット回収率の低さに課題があるため、回収率向上への対応に向けて30年1月からGPS付パレットを利用し紛失原因の特定や回収に要する時間の調査を実施しています。
 また、国との協議もふまえ、本年8月に「農産物パレット推進協議会(仮称)」が設立される予定であり、本会もこの協議会に参加し、レンタルパレットを活用したパレット循環利用モデルの構築に取り組んでいきます。

 

◆卸売市場との連携強化

 卸売市場流通において、実需者を明確にして品目・数量・価格などの取引条件を事前に決定する「予約相対取引」の拡大をすすめるため、29年4月、産地と戦略が共有できる市場である「パートナー市場」を全国約600社の青果卸売会社から147社を選別しました。
 30年度には、全国パートナー35社、県パートナー65社に絞り込む予定です。

 

【販売段階での取り組み】

◆直販事業の拡大直販で意見交換したセミナー

 本会は、生産者手取りの確保・拡大に向けて、直販事業の拡大に取り組んでいます。29年度直販実績は、直販計画3200億円に対し3243億円の実績となり、計画比101%、前年比106%となりました。
 直販実績の内、県本部直販および予約相対取引は、各本部における直販事業への順調な要員シフトや実需者との積極的な商談、リスクをもった販売の実践などにより、ともに計画・前年ともにクリアしました。一方、JA全農青果センター㈱は、主力取引先である生協宅配の点数減等の影響により計画・前年を下回りました。
 30年度は、29年度から100億円アップの3300億円を計画。県本部における重点取引先への営業強化やパートナー市場との連携による予約相対取引の拡大、JA全農青果センター㈱における事前提案営業、加工・業務向け販売の拡大等により、計画達成に向けて取り組んでいます。

 

◆営業体制の強化

(1)要員体制の整備
 県本部園芸事業(青果)に関わる要員約730名を、直販事業の拡大に向けて各県の実態に即して無条件委託販売から直販事業へ要員のシフトをすすめています。この結果、直販事業要員比率は、29年4月1日時点の45%から30年4月1日時点で過半の52%となりました。

(2)営業力向上に向けた人材育成
 29年度は県域の直販担当者のスキルアップを目的に「園芸直販担当者スキルアップ研修会」を2回開催しました。30年度以降も継続開催を予定です。

(3)県域を越えたブロック域での共同営業
 全国5ブロックでの「ブロック別直販連絡会議」において、本会営業開発部(29年9月新設)およびJA全農青果センター㈱も参画した、加工・業務向け実需者等との合同商談会を実施して新規販路の開拓に取り組んでいます。29年度は、合計13回、延べ34社を対象に実施しました。
 新規に商談成立した実需者と県本部との取引額は、28年度通年実績約1億3000万円に対し、29年度は2億6300万円と伸長しています。
 引き続き30年度も、野菜流通カット協議会、惣菜協会、野菜流通加工協議会等と連携した会員実需者との合同商談による販路開拓・取引拡大や、ブロック内での県間連携・ブロック間連携によるリレー出荷によって、加工・業務向け野菜を中心に販売拡大に取り組んでいます。

 

◆重点取引先を明確にした営業強化

 本会の青果物販売先約1000社から選定した延べ約300社(加工・業務約170社、小売約130社)の県域重点取引先に対し、各県域で直販拡大に取り組んでいます。
 全国域では、中・外食サプライヤーを中心に4社の重点取引先を選定し、ブロック域での合同商談を中心に営業を強化しています。また、このうちの3社とは、国内産地の生産基盤の維持・拡大、生産者所得の向上、国産農畜産物の需要拡大、実需者に対する提案力の強化等の取り組みについて双方が協力することで合意し、本年3月、業務提携契約を締結しました。
 業務提携先とは今後、契約産地づくり、インフラ・物流機能の共同利用、共同商品開発、販路拡大など、生産から販売までの一貫した取り組みを積極的に展開していきます。

 

◆直販関連インフラ整備

 (1)県域における、直販機能を有する「広域集出荷・加工施設」の整備
 各JAにおける既存設備の老朽化やJAの広域化、および販売力強化への要望の高まりや、「選果」、「選別」、「予冷」、「調整(皮むき・根切り・結束など)」、「包装加工」機能などの生産者の労働力支援、県本部直販の強化・拡大を目的に、直販機能を有する、JA域を越えた広域での集出荷・加工施設の整備をすすめています。
 29年度は7月に徳島県本部「青果センター」、12月に山口県本部「県央域青果物調整・加工施設」を設置・稼働しました。また30年度は新たに6か所(秋田、山形、福島、愛媛、福岡、大分)の設置を計画し、本会の施設は全国28か所となる予定です。

 (2)JA全農青果センター㈱の営業拠点設置と営業エリアの拡大
 既存の東京センター(戸田市)、神奈川センター(平塚市)、大阪センター(高槻市)、九州事業所(福岡市)に加え、29年4月に札幌市に営業拠点を設置しました。また、これまでの首都圏・近畿圏の実需者に加え、東北地区・九州地区へ営業エリアを拡大しています。

 

※このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。

新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめていますぜひご覧下さい。

 

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