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シリーズ:現場で役立つ農薬の基礎知識2016

2016.04.05 
【現場で役立つ農薬の基礎知識2016】春夏野菜の病害虫防除 密度が低い時が絶好のチャンス一覧へ

上手な病害虫防除のコツを探る

 いうまでもなく病害虫雑草による被害は、農作物の品質や収量を大きく左右する。防除は、大切な農産物を病害虫雑草被害から守ることであり、農業を営む上で大切な仕事の一つだ。そして、この防除を効率よく行うコツが発生する病害虫雑草ごとに必ずある。この特集では、このコツがどのようなものなのか様々な取材をとおして探ってみたい。
 近年は地球温暖化の影響もあって、年々病害虫の発生様相が異なっており、なかなか全地域、全気候条件に通用するコツを見出すことは難しいが、先人の知恵や篤農家の技、研究機関の研究結果などから「これだけは外せない」というようなものを可能な限り紹介していきたい。その第1弾として、春夏野菜の病害虫防除のコツを探ってみた。

トマト トマトやキュウリ、ピーマン、ナス、スイカやカボチャといった果菜類、加えてトウモロコシやバレイショといったものが春夏野菜の代表的なものである。これからの季節は、まだ発生する病害虫の密度も少なく、被害も比較的少ないので、頻繁に防除が必要になることはない。だが、実は、この「病害虫の密度が低い」時というのが、その後の生育期間を通じて病害虫の発生を低く抑えるための絶好のチャンスであり、この時期にきちんと防除をするというのが上手な防除のコツなのだ。なぜなら、発生のピークを迎えても、もともとの発生量が少なければ被害を最小にできるし、農薬も効きやすいからである。


◆病害虫が嫌がるほ場に変える

 対象となる病害虫の発生密度を低く維持する方法に耕種的防除がある。これは、病害虫の嫌がるような環境に圃場を変えて、病害虫が活動をしにくい環境にする方法である。いくつかを組み合わせて、圃場環境を変えていくのがコツである。
 例えば、アブラムシは銀色を嫌う性質があるため、シルバーマルチをするだけでも作物への寄生を少なくすることができるといった具合である。作物によって使える技術や資材はまちまちであろうが、使えるものがある場合は、積極的に取り入れたいものだ。
[耕種的防除の例]
(害虫)防虫ネット、有色粘着紙、シルバーマルチ、周辺雑草防除、手取り など
(病害)熱消毒、土壌還元消毒、拮抗微生物利用、有機物施用、輪作、抵抗性品種の利用、弱毒ウイルス、栽培時期の移行、適正施肥、雨よけ栽培 など
(雑草)機械除草、耕運、マルチかけ など


◆使用適期を守り効率的な防除を
 
 農薬は同じように見えてもそれぞれに個性があり、使い方を誤ると効果が出ないばかりか作物残留上の問題を起こす可能性もある。そのため、使おうとする農薬のラベル、解説技術資料などをよく読み、特に「使用適期」(農薬の効果が最も出やすい使用時期)は十分に把握した上で使用するようにしたい。この使用適期は、たくさんの薬効試験を繰り返し、その農薬が一番効果を発揮できる時期を追及した上で記載されているので、これを守るだけでも、防除の効率は格段によくなる。
 例えば、「害虫が小さい時に散布する」と書いてある農薬の場合、既に大きくなった害虫にはまず効かないと思ってよいし、「病害が発生する前に散布する」と書いてある場合、病害の発生後にいくら散布しても効果がなく、無駄な散布になってしまうので注意したい。


◆春夏野菜の病害虫とその防除対策


○アブラムシ類
 
 春夏野菜で問題となる害虫は、ワタアブラムシやモモアカアブラムシが代表格だ。特にワタアブラムシは、6月~8月が発生のピークで年に10数回も発生する厄介な害虫なので定期的な防除が必須となる。
 モモアカアブラムシは、4月上旬から5月下旬がピークとなり多くの作物に寄生して被害を起こす。各種ウイルス病を媒介するので、しっかりと防除したい。
 薬剤としては、有機リン系やピレスロイド系、ネオニコチノイド系の効果が高いが、有機リン系やピレスロイド系など薬剤抵抗性の発達事例が多いので、薬剤選択にあたっては指導機関等への確認を忘れないようにしたい。

○コナジラミ類
 
 トマトでは、シルバーリーフコナジラミが媒介するトマト黄化葉巻病という病害が大きな問題となっているが、これに加えオンシツコナジラミ、タバココナジラミが果菜類に多く発生するコナジラミ類だ。
 トマト黄化葉巻病は、トマト黄化葉巻病ウイルス(TYLCV)によって起こり、トマトの新葉が巻いたり、小葉化、黄化などの症状が起こり、株全体が萎縮する。短期間にシルバーリーフコナジラミがほ場全体に病原ウイルスを伝播して発病させるため、収量が激減し、世界中のトマト農家に恐れられている病害である。このため、近年のトマト栽培の現場ではその対策に特に力が注がれており、その対策の中心は媒介虫となるコナジラミ類の防除である。
 コナジラミ類の防除は、側窓・入口・天窓への防虫ネット(0.4mm目)の設置や苗での防除の徹底、植付時の殺虫粒剤の使用による初期防除、栽培終了後の施設の蒸しこみ処理)、地域一斉対策(野良トマトの除去、周辺雑草の防除、家庭菜園への防除依頼など)などがある。これらの中で実施可能なことはできるかぎり多く実行することがコツだ。
 防除薬剤としては、オンシツコナジラミは、登録のある薬剤であればうまく防除できるが、タバココナジラミやシルバーリーフコナジラミでは、薬剤ごとに効き目がちがうので、指導機関等の情報を予め確かめたい。
 指導機関等が出している情報によると、タバココナジラミに効果の高い薬剤は、サンマイトフロアブル、スタークル顆粒水溶剤、ベストガード水溶剤の3剤の効果が高かった。次いで、モスピラン水溶剤やアドマイヤー顆粒水和剤やアクタラ顆粒水和剤、ダントツ水溶剤、ハチハチ乳剤なども効果があるとのこと。地域の指導情報などに従って確実に防除対策を実行してほしい。

○うどんこ病

 葉っぱの表面などに白い粉状の病斑を発生させ、ひどくなると葉柄やつるの部分にも発生し、だんだん樹が弱って収量が減ったり、実の品質が悪くなったりする病害である。キュウリやスイカ、カボチャなどウリ科野菜に多く発生する。診断は容易なので、発生が認められたら、発生初期の頃から定期的に丁寧に防除したい。
 防除薬剤は、ダコニールやフルピカなど予防効果の高い薬剤を防除の中心にして、やや発生が増えてきたら、EBI剤など効果の高い薬剤を散布するとよい。ただし、うどんこ病は、EBI剤など複数の薬剤で耐性菌が発生しているので、薬剤の選定にあたっては地域の指導機関に確認する必要がある。


○べと病

 淡黄褐色の葉脈に囲まれた不整形病斑が発生させ、病気の広がり方が早く、樹勢が衰えて、商品性や収量が低下する病害で、春夏野菜では、主にキュウリなどのウリ科野菜に発生する。
 病原菌はべん毛菌類と呼ばれる湿度を好む病原菌(かび)で、卵胞子という形で土中に潜み、降雨があると分生胞子を形成して、飛散し伝染していくため、梅雨時など降雨が多く、湿度が高い時に発生が多くなる。
 この病害は、感染から発病までの期間が短いため、気付いた時には既にかなりの範囲で病気が広がっている可能性が高い。このため、べと病がいつも発生するような畑では、発生する時期の前から予防剤を定期的に散布し、もし初期病斑を見つけたら、できるだけ早く徹底して薬剤散布を行うとよい。散布の際には、葉の裏側にある病斑を目がけて、葉の裏にも薬剤が届くように丁寧に散布することがコツである。
  薬剤防除は、予防効果に優れ残効も長い保護殺菌剤(ジマンダイセン、ダコニール、ペンコゼブなど)をローテーション散布の基本として、少しでも病勢が進むようなら速やかに治療効果も有する薬剤(アミスターフロアブルやリドミルMZなどを使用して、病勢を止めるようにするとよい。ただし、ストロビルリン系薬剤には耐性菌が発生しているので、地域によっては使えない場合があるので指導機関の情報を確認してほしい。


○疫病

 植物体の色んな場所に発生し、葉では暗褐色から灰緑色の水浸状の病斑を形成し、乾燥した被害部分は黒褐色になる。果実にも発生するので、商品価値の低下が著しく、しっかりと防除したい病害である。春夏野菜では、主にトマトなどナス科野菜に発生する。
 べと病と同じように湿度を好む病害なので、発生が多くなる時期は葉の手入れを着実に行って、通風をよくし、できるだけ湿度を下げるようにするのがコツだ。薬剤防除は、予防効果に優れて残効も長い保護殺菌剤(ジマンダイセン、ダコニール、ペンコゼブなど)をローテーション散布の基本として、少しでも病勢が進むようなら速やかに治療効果も有する薬剤(アミスターフロアブルやリドミルMZなどを使用して、病勢を止めるようにするとよい。

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(表)春夏野菜の作物別登録農薬一覧(PDF)
(表)農薬別主な適用病害虫一覧(PDF)

 防除薬剤選定の参考となるよう防除薬剤一覧表を付したが、この表は農薬名と適用作物、農薬名と主な適用病害虫の2表に分けて、おおざっぱに薬剤を選択できるようにした。
このため、実際の使用にあたっては、農薬ラベルをきちんと確認し、適用作物、使用時期、使用方法を確実に確認して正しく使用するようにしてほしい。

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