農薬 シリーズ詳細

シリーズ:いんたびゅー農業新時代

2017.09.11 
IPMから総合的作物管理へ【小林 久哉・アリスタ ライフサイエンス(株)代表取締役社長】一覧へ

高品質な農業生産の実現に貢献

 アリスタ ライフサイエンス社は、日本国内では早くから天敵昆虫を導入し化学農薬などと有効に組み合わせたIPMを推進してきているが、それをさらに進めた総合的な作物管理・ICMを提案することで高品質な農業生産のサポートを目指している。こうした取組みについて、小林久哉社長にお話いただいた。

◆自給率向上で 食料の安全保障を

 ――海外での豊富な経験をお持ちですが、そうした視点から現在の日本農業についてどのようにみておられますか。

 生産者の高齢化や就農人口の減少などが一般紙でも話題になり「日本農業の将来は暗い」という方もいます。しかし、私は反対にポジティブにとらえていることが多々あります。
 一つは、私の海外での経験からも、日本の農産物の品質は世界一です。そして栽培技術や生産者の方々の情熱を考えると、日本農業は大事な産業として残していかなければいけないと考えますし、私はこれからは、輸出にドライブがかかるとみています。

小林 久哉・アリスタ ライフサイエンス(株)代表取締役社長(写真)小林 久哉・アリスタ ライフサイエンス(株)代表取締役社長

 ――輸出はこれまであまり考えてこなかった問題ですが、そこに明るい希望がある...。

 そうです。そしてもう一つは発展途上国の人口は爆発的に増えていきますが、耕作面積の減少もあって作物(食料)の取り合いが激しくなる可能性があります。お隣の中国はいまや完全に穀物輸入国になっています。
 その中で日本としても食料の安定供給の観点からも、当然、自給率を向上させていく必要があります。国内生産者が高齢化し就農人口が減少するなかでは、省力化という意味でも、生物防除は貢献できる技術だと思っています。
 そして私たちは生物防除のパイオニアとして今まで以上に深掘りをして生産者の方々に貢献できる技術を提供していきたいと考えています。

 

◆ピーマンハウス栽培7割で天敵使用

 ――「生物防除」というと一般には化学農薬を使わないというイメージが強いようですが...。

 生物農薬だけで病害虫を防除することは困難です。そのため、生物的防除、化学的防除、物理的防除、耕種的防除などをうまく組み合わせたIPM(総合的病害虫管理)を事業の中心として当社では進めています。

 ――御社では化学農薬による防除はもちろん、天敵を効果的に組み合わせた防除体系を20年以上前から促進されてきていますが、現状についてお教えください。

 当社の天敵を中心にした防除では、省力化や化学農薬の抵抗性マネジメントのツールとして、ハウス栽培のナスで5割、ピーマンの7割で天敵が使われ、定着化してきています。
 もう一つ大きなことは、イチゴのハウス栽培はナスやピーマンより大きいのですが、ここでも栽培の3割で使われています。

 ――イチゴでは「イチゴカレンダー」を作成されたそうですね。

 これは定植時からの諸問題への解決策を当社がご提案しているものです。定植時に土壌改良資材を施用するとか、天敵への影響日数の短い化学農薬で一度ハダニの発生を抑えて、その後にスパイカル、スパイデックスなどの天敵を放飼し、化学農薬の使用を最低限に抑えてハダニ防除をする技術を、栽培ステージに合わせて暦としてまとめたものです。
 しかし生物農薬の使用時期や効果は地域地域で微妙に違うので、現地の技術指導員や販売員が放飼のベストのタイミングなど探り、生産者の方と相談をしながら手を加えるなど、きめ細かな対応をしています。また、当社だけでは化学農薬の品揃えが充分ではないので、他社の殺虫・殺菌剤も天敵への影響を調べたうえですが、使用することもこの暦は提案しています。
 このイチゴカレンダーは、天敵防除の長年の成功と失敗の積み重ねによってできたものです。

 

◆植物の能力高めるバイオスティミュラント

 ――御社では、いち早く受粉昆虫のマルハナバチを導入されましたし、最近では植物が本来持っている能力を強化するという「バイオスティミュラント」を導入し、「IPMからICMへ」を提案されていますが、これはどういう技術ですか。

 マルハナバチには、セイヨウマルハナバチと在来種のクロマルハナバチがあり、クロマルハナバチは日本で初めて当社が導入しましたので、技術的なサポートを含めてご提供しています。
 こうした受粉昆虫・生物農薬に化学農薬による防除、物理的防除に「バイオスティミュラント」などを組み合わせたICM(総合的作物管理)により、高品質な農業生産をサポートしていこうということです。
 これまで私たちは「植物の病害虫管理」でどう付加価値を生み出すかとやってきましたが、バイオスティミュラントがIPMに加わることでICMに変化をしていく流れになるということです。

 ――「バイオスティミュラント」というのは?

 「バイオスティミュラント」は、海外では、肥料・農薬に次ぐ農業資材として脚光を浴びています。当社は、バイオスティミュラントのリーディングカンパニーとして、全世界で普及していますし、世界的な協議会もあります。
 これを直訳すると「植物刺激剤」ということになり、国内では必ずしも科学的な証明がされていないものや登録上グレーなものが販売されていて誤解をされる恐れがあります。そこで当社では科学的にきちんと証明された製品であることを示すためにあえてカタカナでお伝えしています。
 具体的にどういうものかといいますと、植物が本来備えている旺盛な生長力を活性化させたり、病気に負けない抵抗性を増やすような資材です。高温障害による作物のストレスを内面から軽減し、植物が本来持っている能力を強化することで、生長に刺激を与え、品質を改善しさらに収量増につなげるものです。

 

◆農作物の価値を高める解決策を提案

 植物が病気に罹りにくくなるので殺菌剤の使用が減りますし、農薬の残留の心配も軽減し、品質を向上させるというICMのシナジー効果が大きいです。
 生産者の一番の関心は、生産した作物の価値ですから、その価値をできるだけ保護し高めるために必要なトータルな解決策として、私たちからの提案だといえます。
 化学的防除からIPMへ、さらに総合的な作物管理をするICMへと進む「切り札」として、生産者に貢献する技術として高めていきます。

 ――最後になりますが、生産者や農協の役職員へのメッセージをお願いします。

 当社は、先ほどお話したICMという長い道のりの船出をしましたが、生産者のみなさまのニーズに真摯に耳を傾けることがなによりも大事だと考えています。ぜひ、お近くにいる当社の社員に、忌憚のないご意見をお聞かせください。私たちはそれにお応えできるような解決策を提案できるようにしていきたいと考えておりますので、引き続きご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

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