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JA全中 12年産米 緊急対策の検討を開始(8/2)
  
−13年産生産調整の拡大も視野に−


  JA全中は、8月2日の理事会で12年産米の緊急対策の検討に入ることを決めた。10月末の在庫が政府米の販売不振から計画より50万トンも積み上がる見通しになったこと、さらに12年産米の生育状況が順調で豊作が予想されることなどから「11年産どころではない、大変な販売環境を想定せざるを得ない状況」(JA全中)との認識から、緊急の需給対策が必要と判断したものだ。今後、政府の在庫処理対策、政府米の買い入れの特例措置などの国への要求や、13年産の生産調整面積の拡大などについても検討をしていく。  (関連記事: 12年産米緊急対策 卸業界の反応

★政府米の買い入れゼロも

今年3月に決めた米の需給基本計画では、10月末の国産米の在庫は、昨年10月末の255万トンから219万トンに減少することになっていた。ところが、現状では逆に50万トン程度増えると予想され、需給に大幅な狂いが生じる見通しだ。
  これは、11年産政府米の売却が進んでいないためだ。自主流通米は、3月から販売数量が回復し、3〜6月までの実績は前年を30万トン上回った。また、7月以降の要販売数量は102万トンと前年の117万トンより15万トン少なくなっているため、10月末までに計画どおりの販売が見込めそうな状況だ。

  しかし、政府米の販売は計画の75万トンを大きく下回る25万トンしか売却されない見通しになっている。JA全中では、この要因を卸売業者の流通在庫が積み上がったことによる「一時的な流通変化が主因」としているが、在庫が50万トンも上積みされるとなれば、業界にさらに過剰感が広がることが懸念される。
  また、見通しどおりの政府米販売実績となると、「新たな米政策大綱」で決められた備蓄運営ルール(12年産政府買い入れ数量=12米穀年度の政府米販売実績−25万トン)からすると、政府買い入れ数量はゼロになることになる。その場合、集荷した12年産計画流通米はすべて自主流通米として販売することになり、JAグループとしてはこれまでに経験したことのない事態になる可能性もある。

★早期米 超安値のスタート

 厳しい販売環境となることが懸念される事態はほかにも出てきた。
  7月後半から12年産早期米が出回っているが、これまでに2回行われた相対取引結果は、前年産を60キロあたり1000円以上下回る結果となっている。

  8月2日に公表された第2回の取引結果をみると、「宮崎コシヒカリ」が前年より1300円安い1万6700円、「鹿児島コシヒカリ」が前年より1279円安い1万6138円などとなっている。(表) また、普通期米の成育状況は各産地とも順調と伝えられ、このままいけば豊作となる可能性も高い。加えて、卸業界は価格下落による在庫差損リスクを避けるため、流通在庫を持たない姿勢が強まっているが、今後もそうした姿勢が続くものとみられ、当用買いによる手当で対処する傾向になることも指摘されている。

 第1期 (7月27日〜8月2日) (単位:円、%)
  12年産価格 前年価格 前年差 前年比
宮崎コシヒカリ 17,500 18,700 △1,200 △6.4
鹿児島コシヒカリ 17,205 18,386 △1,181 △6.4
高知ナツヒカリ 17,165 18,165 △1,000 △5.5
 第2期 (8月3日〜8月10日) (単位:円、%)
  12年産価格 前年価格 前年差 前年比
宮崎コシヒカリ 16,700 18,000 △1,300 △7.2
鹿児島コシヒカリ 16,138 17,417 △1,279 △7.3
高知ナツヒカリ 16,270 17,416 △1,146 △6.6
高知コシヒカリ 16,601 17,700 △1,099 △6.2
徳島ハナエチゼン 16,169 17,466 △1,297 △7.4


★在庫対策を国に要求

  昨年9月には、生産オーバー分を飼料用として処理するなどの「米の緊急需給安定対策」を決めた。JAグループは、96万3000haの生産調整目標面積に取り組み、さらに生産者負担の基金(90億円)も拠出して生産オーバー分17万トンの飼料用処理も行ってきた。
 しかし、価格は思うように回復ぜす、さらに在庫が積み上がるという状況になった。JA全中ではこうした事態を「われわれの努力の限界以上の異常事態」とし、国として何らかの在庫処理対策が必要、としている。

  そのため、当面の検討課題としては@政府米の在庫処理対策(主食以外の処理対策や海外援助の拡大など)、A政府米の買い入れ(異常事態をふまえた特例措置の必要性)、B11年産自主流通米在庫対策(かりに在庫が生じた場合、11年産米の基金財源はすでに飼料用処理に使用しているため、政府古米との交換も含めて別途に検討することが必要)、B豊作の場合の別途処理(11年産の別途処理の課題をふまえ、財源問題などの検討が必要)、C12年産集荷・販売対策(計画外流通米の取り込み、卸の入札参加の促進対策)を挙げた。

★生産調整の拡大も視野に −意見調整は難航も−

 さらに13年産米に関する必要な対策も挙げた。
 その一つが、生産調整規模の検討だ。96万3000haの生産調整はすでに3年連続で実施しており生産者にはこれ以上は限界、との声が支配的だ。しかし、適正在庫をより早く実現するためには、生産調整面積を据え置かず、さらなる拡大が必要との意見もあるという。
  また、稲作経営安定対策の充実も検討課題に挙げた。このまま価格下落が続けば経営安定対策の意味が薄れることから、補てん率の引き上げや補てん基準価格がこれ以上引き下がらないという下支え対策が必要だとしている。

 そのほか、入札の仕組みの改善、ミニマム・アクセス(MA)米対策も課題としている。とくにMA米は、国産米の需給に与えていることを検討する必要がある。また、主食用に影響があるSBS(売買同時入札、今年度は12万トン)米については、これ以上の拡大をしないよう求めるべきとの意見も出ている。
  昨年の緊急対策は、9月入札の前に決定された。今回、この時期に検討に入ったのも自主流通米入札が本格化する前に緊急措置を決める必要があるため。

 JAグループの今後の検討スケジュールなどは未定だが、9月までには緊急対策の内容が詰められるとみられる。ただし、13年産米の生産調整面積の拡大も視野に入れるなどの検討項目については意見集約が難しいことも予想される。
 12年産米の徹底した集荷と整然とした販売など、JAグループ自らの取り組みも重要だが、この事態を解消するためには、いうまでもなく国が需給改善に効果のある在庫米対策をしっかり打ち出すことが求められる。

 


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