JACOM ---農業協同組合新聞/トップページへジャンプします

解説記事

「指示」段階の公表は異例−−雪印食品

 雪印食品(株)に対して2月2日から警察による強制捜査が行われているが、これに先立ち、同社の関西ミートセンターが、BSE発生以前からセンター長の指示で牛肉、豚肉の虚偽表示を行っていたとの証言を1月31日までに得た農水省は、2月1日夕方、JAS法に基づく立ち入り検査を雪印食品本社、北海道ミートセンター、東北ミートセンター、関東ミートセンターの4カ所にも実施した。

 これは関西ミートセンターへの立ち入り調査によって、虚偽表示が「同社では常態化していた。かなり悪質で構造的な問題があるのではないか」との見方を農水省がしたためだ。
 ただ、関西ミートセンターの立ち入り調査では、虚偽表示の事実は伝票の突き合わせなどで物証が得られたわけではない。その理由は「仕入れ伝票は残っていたが、原産地が記載されておらず突合せのしようがなかった」というずさんな実態があったため。職員の証言のみのため、今回の調査では虚偽表示が行われた数量などは不明のまま。
 JAS法に基づく検査は、表示の適正化を指導する「指示」、それに従わない場合の社名などの「公表」と「改善命令」を経て、それでも適正表示が実施されないと「罰則」が課せられるという段階を踏む。今回は、本来であれば実施されない「指示」の段階で調査結果が公にされたことは「極めて異例」(総合食料局品質課)だという。

 もっとも現行のJAS法の規定では、これは違反ではない。農水省によると「川上から川下まで正確に情報が伝える」という趣旨はあるものの、規則では、「伝票に原産地記載がなくても、荷の包装紙に表示されていればいい」(総合食料局品質課)ことになっているという。ラベルの貼り替えが行われていてもその事実を突き止めることは難しく、産地から業者に渡るまで不正な表示がされるはずはないという性善説に立っているといえる。
 この問題が浮上したことで、一部にはJAS法の表示について再度検討すべきであるという声もあるが、現在は「とくに小売店、専門店に対して原産地表示がされているかどうかをモニタリングし、表示が義務づけられていることを理解してもらっている」(品質課)のが実情で、その中身にまで立ち入ってはいない。

 また、罰則という点でいえば、表示と異なる品を販売し消費者などをだましたとなれば刑法の「詐欺」容疑の対象となるし、健康を害する食品を販売した疑いが持たれれば食品衛生法の対象となる。JAS法はこうした法律があることを前提にした制度だといえる。
 農水省も「信頼回復のために何らかの方策を講じることは必要だが、最終的には食品業界が、こんなことをしたら業界全体がとんでもない事態に陥る、としっかり認識してもらうしかない」という。 
 このような点を考えると、生産者と消費者が信頼関係で結ばれるには、表示の問題も需要だが、むしろ産地や生産履歴などを食品から遡って調べることができるトレーサビリティシステムの早急な確立こそ急務だといえるのではないか。

 JAグループはトレーサビリティシステムである「安心システム」の拡大をめざしている。産地には、この仕組みを付加価値をつける取り組みと受け取る向きも少なくないようだが、生産者の経営の「安心」を確立することだとの理解が必要だろう。

関連記事・・・ 虚偽の原産地表示2年前から
雪印食品−−牛、豚の市場流通を自粛

農水省 雪印食品関西ミートセンター長を告発


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
webmaster@jacom.or.jp