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第47回JA全国青年大会特集
農業再建・地域営農確立と大規模専業農家のために活動するJAグループの挑戦

座談会 「WTO農業交渉 10の争点」 「多様な農業の共存」の時代をどう実現するのか

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2ページ : 「国境措置」の争点−(争点@、A、B、C)
3ページ : 「国内支持」の争点−(争点D、E、F)
4ページ : 「輸出入規律」をめぐって−(争点G、H、I)

輸出入規律をめぐって 
G  輸入国の立場から輸出制限などについてどう改善を図るか。
H  輸出補助金についてどう主張するのか。
I  食料援助についてどう主張するか。

 並河 輸出補助金については日本は削減を求める立場を出しました。EUも削減の立場ですから、この点では共通ということになりますね。

 若林 この問題では、われわれも以前からEUとの兼ね合いがあると考えていました。基本的には輸出補助金はなくすべきだとは思いますが、EUの農業者の意見を尊重しようということはわれわれも考えました。

 滝沢 この件で指摘したいのは、米国が導入した市場価格の低下に対応する市場損失補償は、一種の輸出補助金ではないかということです。

 服部 輸出に直接関係ないですから、輸出補助金とはいえませんが、これは「黄」の政策ですね。
 それから、米国の国内政策で輸出補助金に近いといえるのは、融資不足払いです。これは固定支払い額を超えて、70億ドルほど支出されています。価格支持水準よりもさらに価格が下がった場合に、政府が補助をする制度です。

 並河 それについて日本はどう言っているのですか。

 服部 日本は今のところ何も言っていません。しかし、今後、輸出規律の強化の問題として主張すべきでしょうね。

 滝沢 先ほどの市場損失補償の場合も、米国の論理は、もともと固定支払いは「緑」の政策なのだから、追加支払いも緑だということでしょう。そこは問題にすべきだと思いますね。

 並河 日本にとって重要なことは、食料援助の問題があります。たとえば、ミニマム・アクセス米をどんどん食料援助に回したいわけですが、全青協ではどんな議論になっていますか。

 若林 これは実現が難しいことは分かっているんですが、食料援助についてはミニマム・アクセス米を国連機関などを通さず食料不足国に直接、食料を送れるような制度ができないかということです。輸入した安い米をそのまま送れば、経費もずいぶん下がると思いますが。
 もうひとつは、世界的な食糧備蓄の機能をつくれないかということです。人道的に食料援助が必要な国にそうした機関から食料を送れないかということです。

 滝沢 食料援助については、被援助国がたとえば米国のマーケットだとすれば、日本の援助はマーケットを奪うものだという批判が出てくるわけですね。そういことについてEUはどう主張しているのですか。

 服部 EUは、むしろ米国のほうがマーケットを奪うような援助をしているではないかという批判です。つまり、米国はまず食料援助として食料を出しておいて、すぐにそれを商業援助に切り換えると。だから、米国の食料援助は一種の輸出補助金ではないかというわけです。EUの主張は食料援助は人道援助に限るべきだとしています。
 これは当然で、日本も食料援助は文字通りの人道援助に限るべきだという主張でいいと思います。ただ、ミニマム・アクセス米を直接援助に振り向けるというのは認められないと思います。経費はかかりますが、一旦輸入してから国連を通すしかないでしょう。アクセス機会の提供という原則を外すような主張では、EUとの連携も壊れてしまいかねないと思いますから。

海外の農業者、消費者との連携が一層重要に

 並河 最後に10の争点には入っていませんが、議論しておきたいのは遺伝子組み換え食品の扱いやそれにともなう表示の問題です。

 若林 これはWTO交渉そのものとは別ですが、われわれは原産地表示をしっかりしてくれという運動をしています。
 たとえば、畜産では生まれた国が米国でも、半年ほど日本で肥育すれば国産になってしまうんですね。ですから、この場合は出生地表示でもいいですから、こういう表示制度を的確に実施してほしいということです。
 遺伝子組み換え農産物については、遺伝子組み換え農産物、イコール悪いものという発想はしていません。というのは、品種改良につながる遺伝子組み換えは生産者にとってはいいことだからです。ただし、消費者に理解されなければ作りたいとは思わないということです。ですから、消費者が遺伝子組み換え農産物は必要ないということであれば、われわれも必要ないということです。安全性が認められ消費者の理解があればまた別の話になってくることだと思います。

 滝沢 安全性についてはどのレベルの安全性かという点も重要ですね。一回食べて安全だということと、長期毒性はどうなのかという問題があります。基本的に技術は進歩するものだから、いろいろな技術が登場すると思います。しかし、今の状況は米国内でさえも疑問が上がっているわけですし、スターリンク問題のように米国では混入されていないとして輸出されても、日本では混入が確認されたということもあります。そういう点では、きちんとした表示と同時に検査、検疫の体制の強化も必要だと思います。

 服部 この点でもEU提案は大事だと思っています。EUは全食品についての原産地表示を国際的にも実施すべきと提言しています。それから安全性については予防原則に基づくべきだということです。
 予防原則というのは、大筋で科学的に安全性が確認されたとしても、 何か疑念が出された場合、その疑念が妥当である限りはもっと慎重に検証すべきだということです。
 やはり日本も、国際的にも原産地表示を徹底することや、安全性については予防原則で考えるべきだという立場に立つことが必要だと思いますね。

 並河 この問題に対するEUの態度には学ぶべきことが多いと思いますね。たとえば、予防原則というのは、生産者と消費者にとってある意味ではセーフガードよりも強い措置になるかもしれないわけです。安全性に関するセーフガードですからこの点は国内でも消費者との連携を進めるべきでしょうね。
 いずれにしても、今後、WTO交渉の本格化に向けて、国内では消費者団体との連携、EU、途上国など各国との連携が必要でしょう。

 若林 われわれも3月ごろから各国の青年農業者と連帯を深める活動を始める予定です。

 並河 ぜひがんばっていただきたいですね。今日はありがとうございました。 (了)


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