JACOM ---農業協同組合新聞/トップページへジャンプします

特集:農業・農村に“新風を送る”JAをめざして

改革の風 協同組合の存在ゆるがすような「改革論」に毅然たる姿勢を
―21世紀の日本農業とJAグループの役割―(上)
出席者
三輪 昌男氏 國學院大学名誉教授
藤谷 築次氏 (社)農業開発研修センター会長理事・京都大学名誉教授
太田原高昭氏 北海道大学大学院農学研究科長・農学部長
司会/梶井功氏 東京農工大名誉教授

 「食と農の再生プラン」が打ち出しているJA改革は小泉改革の一環だ。では小泉改革とは何か。座談会は単刀直入に本質論へと切り込んだ。小泉改革は民営化、規制緩和を貫こうとしている。それは新自由主義、ネオリベラルの発想を基本とする。弱肉強食、優勝劣敗を当然とするだけでなく、それを正義であり、善とする考え方だという。だから農協に対する独禁法の適用除外問題も、これから議論される。こうした中でJAグループの理論武装はどうか。座談会は次号にわたって、さらに論点を明確にしていった。

◆小泉流改革は新自由主義
  その農政版が「再生プラン」

(中川行(社)農協協会会長のあいさつ)

 中川 JA改革の議論たけなわの中で手厳しい農協批判が出ています。経済事業では農家と全農の間に農協と県連・県本部があって機能分化がいわれますが、その連携に血が通っているのかどうかが問われています。私が全農職員のころは月のうち半分は現場を駆け巡り、集落座談会などで勉強させていただきながら取り扱い品目を推進しました。今は現場との一体感に乏しいとの批判を聞きます。冒頭にそうした一例を挙げまして、先生方に系統事業の展開はどうあるべきかの議論を御願いし、展望を見出す方向や、また、もっと広く社会全体の閉塞感の打破などについてもご提言をいただければと思います。

 梶井 このところ全国連の役員の方々とお話して受ける印象では、最近のJAのあり方に対する批判は必ずしも正確にJAの事業や活動を認識した上での批判や注文ではなさそうです。武部勤前農相の発言がその典型です。また「食と農の再生プラン」の工程表は農協改革を強く押し出し、農協型株式会社とか農協は一般企業と同じレベルで競争しろといった注文が改革の中身としていわれています。
 一方、経済財政諮問会議からは独禁法の適用除外をきめている農協法自体が問題だとする発言さえ飛び出して、農水省の「農協のあり方についての研究会」でも独禁法問題を議論することになっています。これは協同組合の本質を考えないというべき批判です。そこでJAグループが組織を挙げて改革に取り組んでいるおりから、その方向性を協同組合理論の先生方に議論していただくことは意味のあることだと思います。私は農協問題の前提となる日本の経済財政政策がおかしくなっていると考えますので、まずこの問題について三輪さんからお話下さい。

三輪 昌男氏
みわ・まさお 大正15年山口県生まれ。東京大学経済学部卒。(財)協同組合経営研究所研究員、國學院大学経済学部教授、同学部長を経て定年退職。國學院大学名誉教授、日本協同組合学会元会長。著書に『自由貿易神話への挑戦』(訳書、家の光協会)、『農協改革の新視点』(農文協)など。

 三輪 小泉首相流の構造改革とは?という話になりますが、一言でいえば、それは新自由主義、ネオリベラルです。1980年前後に英国にサッチャー首相、米国にレーガン大統領、日本に中曽根首相が出て、新自由主義の政策が始まりました。
 90年前後、ソ連圏崩壊で加速。94、5年ごろが1つの画期です。グローバリゼーションを初めてテーマにしたサミットがあり、WTO発足、それから多国間投資協定(MAI)を経済協力開発機構(OECD)が取り上げる。米国の中間選挙で共和党が新自由主義政策を満載した綱領を掲げて大勝しました。こうした新自由主義・グローバリゼーションの流れが物凄い勢いで日本をも席巻しています。
 20世紀末から現在はそういう一つの時代にあります。特に問題なのは新自由主義で、これは要するに市場原理主義です。具体的には民営化、規制緩和です。弱肉強食、優勝劣敗えやむを得ないとするのではなく、それを正義であり、善とします。さらには強きを助け、弱きをくじくという発想を基本としています。
 大正生まれの私なんかには、とても信じ難い考え方ですけど竹中平蔵経済財政相の著書にはその思想が典型的に出てくるんです。米国で感化を受け、徹底的に強きを助け、弱きをくじいていけば理想的な経済が実現すると信じ込んでいるんです。
 小渕恵三前首相も、米国に留学した新自由主義の学者を集めてプランを立てさせました。小泉流構造改革も(1)民営化(2)規制緩和(3)強きを助ける、という単純な三題噺の徹底です。
 昨年の「骨太」構想にある産業構造ビジョンみたいなものは最先端技術を使う産業だけを国内に残し、あとは全部外国へ持っていくというものでしたが、今度の第2弾構想は何でもありです。日本は優秀だからコメだって輸出できるんだという昔の発想に通じる図式で貿易立国だなんていっており、高度成長時代の亡霊が出てきた感じです。
 こんな単純なプランを前後の関連もなく持ち出す人たちを果たしてエコノミストといえるのかという疑問さえ湧きます。小泉首相も非常に単純なことを繰り返していうだけで、問い詰められると、説明ができない人です。
 不良債権処理は昨年3月に森喜朗前首相が日米首脳会議のあと突然いい出しましたが、これは米国からいわれたからで、小泉首相もそれを踏襲しました。単細胞的なあり方の象徴です。
 農政の中にも、こうした流れに乗ったほうが都合が良いとして新自由主義で農政を組み立てようとする少数の核になるグループがいると思います。そこが「再生プラン」を出したのですから、内容はやはり規制緩和の三題噺になっています。その中で農協改革を取り上げています。武部前農相のバックには誰かがいたわけです。
 ところで日本では新自由主義という言葉がほとんど使われません。不思議な現象です。外国の文献、特にNGO系はネオリベラルのグローバリゼーション批判を展開し、必ず新自由主義という言葉を使っています。これを機会に農協界も、この言葉を使うようにして、弱きをくじく改革論に反撃するチャンスとしてはどうかと思います。

 梶井 EUではもう新自由主義が後退していますね。

 三輪 英国ではブレア政権が新自由主義では選挙に勝てないからと180度の方向転換をしましたが、日本では20年後れで郵便の民営化などを唱えているというR・P・ドーアさんの皮肉な寄稿を西日本新聞で、この前読みました。

◆岐路に立つ協同組合運動
  今求められる“理論闘争”

太田原高昭氏
おおたはら・たかあき 昭和14年福島県生まれ。38年北海道大学農学部卒業。43年北海道大学大学院農学研究科単位取得。43年北星学園大学経済学部、46年北海道大学農学部に勤務。52年同大学助教授、平成2年教授。7年日本協同組合学会会長。10年日本農業経済学会会長、11年より北海道大学大学院農学研究科長、農学部長。農学博士。著書に『明日の農協』(農文協)など。

 梶井 弱きをくじかれる代表格は農業ですか。

 三輪 一番わかりやすいのは金融でしょう。農業は以前からやられているのでは?

 太田原 学生時代に、協同組合は経済的弱者の自己防衛組織である、と習いましたが、新自由主義から見れば、そういう存在は邪魔者であって、弱者は自己防衛の努力などはしないで早く消えたほうがよいということになるわけですね。

 梶井 だから独禁法適用除外なんかを農協法に書いてあるのはけしからんとなるわけです。

 太田原 協同組合陣営としては大変なところにきています。やり方が良いとか悪いというのではなくて存在理由の否定ですからね。経済学者の中でも宇沢弘文先生なんかは弱肉強食でいくと、経済が持たないから弱者がどう市場に関与していくかということで協同組合が絶対に必要なんだと論じています。そっちのほうが経済学者の考え方としては主流だと思うのですが。

 三輪 いや今の日本の経済学者にはとんでもない人がいますよ。私が学術会議のシンポジウムで、経済構造調整と農業というテーマで報告した時のことですが、司会をしていた筑波大学のある教授が「今の報告は弱者の立場の農業論だ。日本は経済大国だから強者の立場の農業論があってよいはずだ」といったので、あ然としたことがありました。

 藤谷 私は農業がここまで追い詰められてきたのは情けない話だと思います。日本経済においては、食料自給率の向上なんていうのは資源の浪費であるから、そんな無駄なことはするなと、立論している経済学者がいます。その立論にもとづいて財界は動いており、また多くのマスコミの論調もそうだと思います。そうした立論をいかに打破していくかという理論的な重要課題があります。
 新自由主義については、日本でも国民の中に遅ればせながら市場原理中心的な考え方はおかしいという素朴な疑問が出てきていると思うんです。その意味で、21世紀は協同組合運動の時代だなどという論者もおりますけど、そういう第3セクターというか協同組合サイドからの立論がもっとしっかりなされないといけないと考えます。そして、それは必ずや説得力を持ち得ると思います。
 ところがJAグループを中心に協同組合陣営は失点ばかり重ねている。国民の期待感はあるんですけれど、新自由主義に対するアンチテーゼをきちんと提起できないという状況です。
 それからJAグループの組織整備について統合連合会の対応方針などを読んでいるのですが、わかりにくい、具体論がないのですよ。そんな取り組みで国民世論が動かせるかといったら、それは無理ですよ。今まさに理論闘争が求められていると思うのですが,余りにも理論武装がいい加減だと歯がゆい思いです。

 梶井 独禁法の適用除外問題は弱きをくじくという新自由主義の本筋に沿って、そこに一番の問題点を見出した要求なんだという点、理論武装の意味からも、弱者としてはそこを十分に認識してかからなければいけませんね。

 三輪 農協だけでなく、80年代後半には適用除外問題で生協たたきもありました。
 一方、米国はガット・ウルグアイ・ラウンドで「平らな競技場」という要求を出しました。保護貿易は弱者保護だから、それを取り除いて競技場を平らにすべきだというのです。従来は構造的な弱者には下駄をはかせてこそ始めて平等な競争になるのだという価値観でやってきたのを否定したわけです。
 独禁法適用除外も下駄をはかせているわけだから、それを取り除けという新自由主義の非常に単純な要求ですよ。

 梶井 さらにいえば独禁法という法律のあることがおかしいということになります。

 三輪 そうです。それに協同組合への適用除外は日本だけでなく世界中がそうです。各国の新自由主義は、それに異を唱えているわけです。

◆倫理的価値を認識すべき
  最大のカギは経営者問題

藤谷 築次氏
ふじたに・ちくじ 昭和9年愛媛県生まれ。京都大学卒業。京都府立大学助教授・教授を経て京都大学教授、現在(社)農業開発研修センター会長理事・京都大学名誉教授。著書に『農産物流通の基本問題』(編著、家の光協会)、『農業政策の課題と方向』(編著、同)など。

 梶井 藤谷さんは協同組合セクターとして理論的に立ち上がるべき時なのに失点ばかり重ねているといわれましたが、どういう失点が一番の問題ですか。

 藤谷 そうですねえ。私は生協の理事もしていますが、見比べてみて、JA陣営がこんな事態に陥っている最大の問題点は経営者問題だと思います。この問題については農水省も、それは組織内部の問題だからと何の指導も助言もしてこなかったのですよ。経営者としての、特に常勤役員としての資格要件が厳しく問われなかったことが対応の遅れや問題を生起させた大きな原因だと私は考えています。
 組織代表役員によって現場密着、あるいは農民的意識による運営がなされるという面はあったけれど、これだけ高度に発達した経済社会の中にJA陣営が存立していこうと思えば、やはり相当な学識経験者を役員に登用していくという道をもっと早く講じる必要があったのではないかと思います。そういう面での制度的整備を農水省も怠ってきたといえます。
 もう一つは全農子会社の偽装問題なんかは、協同組合の価値をきちんと認識して仕事をしていれば、起こらなかったはずです。正直であれとか他者への配慮であるとかね。それが協同組合にとって、かけがえのない倫理的価値だということは、明示されているわけですから。要するに協同組合運動をしているのか、単なる事業活動なのかそこがあいまいもことなってきていたのですね。そういう運動の体質と、体制の基本は経営者にあると思っています。

 太田原 しかし経営者問題は大企業も含めて今あらゆるところに出ておりますので、私は農協の弱点が、ほかと比べてとりわけ、この問題にあるとは考えていないのです。もちろん弱点であることは、おっしゃる通りなんですが。やはり一番の問題は運動方針だろうと思います。
 それで、これも藤谷先生のご指摘ですが、私も最近の全中の文書は読めば読むほどわかりません。今の基本方針は一昨年の全国JA大会決議ですが、これもJAとしてこれをやりたいというメッセージがないのですね。 余り具体的に計画を書くと、進行状況の点検で追求された時に困るからと、あいまいにとどめておく面も世間にあります。全中にも同じような面があるのかとカンぐったりもします。
 それにしても運動体である限りは方針を見たら、メンバーである自分たちが何をすればよいのかがよくわからなければ、これは方針ではないのですが、そういう問題が全中の場合、近年ひどくなっている感じです。
 そのもとは91年の系統再編の大方針だったと思います。JA広域合併と連合会統合です。新しい農協をつくる時期には来ていたと思いますが、問題は計画立案がバブルの頂点の時期であり、いわば“バブル方針“だったことです。それは基本的にこれからは日本農業は縮小していくから、食っていくのに難しい経済事業は極力、合理化し、縮小して、あとは金融と共済、生活事業などで食っていくんだという方針を事業論として出していたんだと思うんです。
 ところがバブルがはじけ、世間一般に金融では食っていけなくなった、そのため農協は何をやるのかという選択肢がなくなってきちゃって、方針の有効性が失われたと思います。だからその方針の再検討と新しい大方針への転換が必要だったのに、それが遅れたために行き詰まっているのだと見ています。

 藤谷 私が経営者問題だといったのは、そういうJA運動の戦略、方針をつくる責任者が、その能力を必ずしも備えていなかったということです。それらはJA段階から議論すべきことで、そのJA経営者たちが役員として県連、全国連へと上がってくるわけですから、その方針を誰が、どういうリーダーシップをとりながら、組合員の総意を結集しつつ、どうまとめどう方向付けていくべきなのかその衝に当たる責任者たちが弱体だったということを私は指摘せざるを得ないのですよ。

 太田原 私は北海道で拓銀の破たんを見ていますが、銀行の経営者はもっとひどかったですよ。日本のトップはだいたいそうだったんではないでしょうか。政治家も含めて。残念ながら。だから農協だけがいわれる筋合いはないと思うのですよ。

 藤谷 農協の経営者問題はより深刻だったといっているのです。

◆協同組合原則は自治、自立
  「再生プラン」は官主主義

 

 三輪 農協の自己批判よりもその前に役所として、いって良いことと悪いことをちょっと議論する必要があると思います。役所は農協に余計なお節介をしていると私は思います。

 藤谷 これまでは、役所は農協を突き放していたんですよ。

 三輪 再生プランは、これは役所のやることかといいたい。

 藤谷 だから、なんで今、こんなものを出してきたのか、さっぱりわかりません。

 三輪 役所というのは何をするところか。民主主義からいって、再生プランは官主主義ですよ。市場原理主義じゃない。
 梶井 ある意味では日本の農協の特質が再生プランに現れたんじゃないか。

 三輪 農協改革を議論する前に再生プランとは何であるかに切り込まないと、問題の切り口がはっきりしないと思います。

 大田原 市場原理主義と官主主義。そこが今、農水省の置かれたおかしな立場ですね。

 三輪 ビジョンを描き、先頭に立って国民を誘導していこうという姿勢です。あなたは社会主義者かと問いたくなる・・・。

 太田原 売れる商品企画や販売戦略などの「高度なノウハウを提供する」取り組み云々という部分もありますが、そんなノウハウがあるのなら、今すぐ提供できるように誘導してほしいですね。不思議なプランです。

 三輪 国際協同組合同盟(ICA)には、自治と自立という協同組合原則があって、役所から余計なお節介をされたら、それをはね返さなければいけませんよ、となっています。役所はそういうことを知らないから、お節介するんだろうけど、じゃあJAグループの中枢部としては何をしているんだという話になってきます。

◆農政の動き 十分に検討を
  新自由主義者の発想では

 梶井 農協の歴史からいいますと、戦前に産業組合の体制ががっちり整うのは、1930年代の不況対策の中でしたか。経済更生運動の中でね。部落実行組合を下部組織にするなどして産業組合が全農民的な組織になることこそが経済更生の決め手だということでした。

 三輪 あのころは役所が出てきて現場で指揮をしてね。

 梶井 ええ、お役所が全面的にやりました。それが農業会に引き継がれましてね。ある意味でいうと、農政の別働隊になっちゃった。それを戦後の農協も、食管法の問題もあったけど、さらに引き継いだ。その体質が残っているんですよ。
 戦後の経済危機の中で、できたばかりの農協は、財務務処理基準でしたか、役所が示した通りの方針に従ってやるという仕組みになり、ずっと役所の管理下に置かれてきたわけですよ。
 だから、本来の協同組合のあり方からいえば、役所が口を出すべきものではなく、協同組合が自主的に処理すべきものであるにもかかわらず、今回は再生プランのようなものが役所からでてきても不思議に思わないような体質があるんじゃない?

 三輪 それにしても異常だってことをいいたい。90年代以後、農協法改正が3回ありました。92年に代表理事制、96年には経営管理委員会制度の導入、これは両方ともトップマネージメント対策です。それから昨年の農協2法改正です。
 改正法案づくりのために農水省は有識者らを委員にして検討会を重ねますが、前の2回の検討会で座長がまとめた報告は、風呂敷を広げた面もあるものの要点はトップマネージメントにとどめるなど遠慮というわきまえも見られました。
 ところが一昨年秋の「農協改革の方向」という農協2法改正を準備した報告には、こうしろ、ああしろといった余計な指図がたくさんある。あれ以後、異常な状況にあると見ています。その裏には数人の官僚が、引っかき回しているという実態を見なきゃだめだと思うんですよ。

 藤谷 そのねらいなり、背景が何か、それは私も知りたいところです。

 三輪 結局、より強い新自由主義者へのごますりですよ。

 太田原 昔の産業組合時代は産業組合運動対反産運動の対立があって、政府は産業組合をバックアップしたんですね。今の政権は反産運動を支援している形に見えますよ。

 三輪 弱い奴は早く死ね、だから、そういう形ですね。

◆農協法改正の問題点にも目を
  行政の仕事も農協に転嫁

梶井功氏
かじい・いそし 大正15年新潟県生まれ。昭和25年東京大学農学部卒。39年鹿児島大学農学部助教授、42年同大学教授、46年東京農工大学教授、平成2年定年退官、7年東京農工大学学長。14年東京農工大名誉教授。著書に『梶井功著作集』(筑波書房)など。

 梶井 92年の農協法改正の評価はどうですか。

 三輪 理事会体制のてこ入れで、これはポイントをついたものだと思います。それから96年は住専問題で、何かやらなきゃいけないと経営管理委員会を出してきた。これは余計なことだとも思えますが、まあ、しかし許せる程度の動きです。

 藤谷 昨年の農協2法改正とそれを用意した報告についてはどうですか。

 三輪 これはね。実際に法律改正したのは、ごく一部です。ご承知のように、農協の目的について最初に営農指導を持ってくるとかね。そんなつまらないことですよ。
 だけど報告の中にはね、生活関連事業ではリストラをやれとか、しかも、こういうふうにやれとかね。さらに生産資材購買は全農でセンターをつくって、そこで受注を全部やれとかね。そんな法律改正とは全く関係のない余計な話を満載しているんですよ。

 藤谷 これは住専問題の後遺症ですよ。

 三輪 いや、住専問題を超えたところの話になっています。

 藤谷 金融庁は農水省に対して、JA金融を所管していて大丈夫なのか、過去に住専問題があったけど、今はますます全体として金融情勢が難しくなっている中で、これまで通り信用事業を所管していて大丈夫かと問いかけられたと思うのです。
 そこで農水省は金融庁に対して、責任を持ってきちんとやっていきますという申し開きをしなければならなかったのではないか。だからJAバンクづくりのための法制度の整備をやらざる得なかったのですよ。さらに関連して、いろいろと申し開きの政策を並べ立てたというわけです。

 三輪 ああ、後遺症というのはそういう意味ですか。
 まあ、そういうことからも、あの報告に盛られた政策は役所がやるべきことなんですよ。それを農協に転嫁するなんてとんでもない。米国だって役所がやっているんだって、私は厳しくクレームをつけました。

 梶井 「農協改革の報告」をまとめたのは岸さんですね。
 <注/岸康彦氏(財団法人・日本農業研究所研究員、愛媛大学元教授)>

 三輪 検討会の座長だった岸さんに聞いたところ、まとめたのは事務局(農水省)であり、自分たちがやったのは文言を訂正しただけです、といっていました。

 梶井 さっき藤谷さんは、運動体である協同組合は、いかなる倫理的価値観をもってやっていくのかと提起されました。それに関連していえば、前の改正農協法から組合員教育という言葉が消えました。


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
webmaster@jacom.or.jp