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特集:農業・農村に“新風を送る”JAをめざして

改革の風 協同組合の存在ゆるがすような「改革論」に毅然たる姿勢を
―21世紀の日本農業とJAグループの役割―(下)
出席者
三輪 昌男氏 國學院大学名誉教授
藤谷 築次氏 (社)農業開発研修センター会長理事・京都大学名誉教授
太田原高昭氏 北海道大学大学院農学研究科長・農学部長
司会/梶井功氏 東京農工大名誉教授

 「食と農の再生プラン」を分析した前号の連載第一回に続いて今回は、再生プランから欠落している価格・所得政策の問題が一つの論点となった。セーフティネットとして所得政策が示されないと農業再生の方向づけが議論できないではないかという問題提起から、米国の農業法にも話が及んだ。JA改革の方向にからんでは米国の「新世代農協」が話題となった。付加価値追求で新しい市場をつくっているという。しかし、そうした流れの中でEUには国際協同組合同盟(ICA)原則を否定するエコノミストもいるから、新自由主義の浸透を警戒する必要があるとの指摘もあった。

(前号の論点の概要)
 「食と農の再生プラン」とJA改革」をテーマに、この連載座談会は前号で“再生プランとは何か”を検証し、問題点を指摘した。また同プランをめぐる経済財政諮問会議の動向なども挙げた。そこには農協の存在を否定するような流れもあると座談会は警鐘を鳴らした。これに対しJAグループは毅然たる姿勢で、そうした流れをはね返し、また協同組合原則で理論武装を強める必要があると提言した。以下は前号のポイント。
〇・・・「小泉改革」は(1)民営化(2)規制緩和(3)強きを助け、弱きをくじく、という新自由主義であり、要するに市場原理主義。
〇・・・「再生プラン」も、その流れに乗って出てきた。ところがその中身は農業経営や農協経営へのお節介が多いなど官主主義であり、市場原理主義ではないという背反も見られる。
〇・・・弱きをくじく新自由主義からすると農協の独禁法適用除外は問題。農協法批判に発展か。
〇・・・自治と自立の協同組合原則に立てば、JAグループは役所のお節介をはね返さないといけない。「再生プラン」への姿勢が問われる。
〇・・・JAグループは理論闘争の展開を求められている。
〇・・・国民の間には、市場原理中心的な考え方はおかしいという素朴な疑問が出てきている。
〇・・・これまでの農協法改正の問題点にも目を向けるべきだ。

◆「再生」のエネルギーは現場に
  展望開くJA活動を

藤谷築次氏
ふじたに・ちくじ 昭和9年愛媛県生まれ。京都大学卒業。京都府立大学助教授・教授を経て京都大学教授、現在(社)農業開発研修センター会長理事・京都大学名誉教授。著書に『農産物流通の基本問題』(編著、家の光協会)、『農業政策の課題と方向』(編著、同)など。

 (改正農協法から組合員への「教育」という文言が消えた問題について、前号に続く)。

 藤谷 組合員への「教育」は重要な協同組合原則ですよ。

 梶井 ところが、農協法改正を重ねた挙句、「教育」が消えて「指導」に変わってしまいました。その時から日本の農協は国際的な協同組合運動の原則から外れた面を持つようになってしまったのではなかろうかという気さえしているんです(食品偽装問題に関連して)。

 藤谷 JA全中の会長は国際協同組合同盟(ICA)の理事なんですよ。そこに加入している日本のJA組織に関する法律が原則を無視するのは大問題です。

 梶井 協同組合学会なんかは、改正農協法案は国際的な協同組合運動の原則に反するとして、もっと問題にしたほうがよかったんじゃないか。

 藤谷 第22回JA全国大会の議案は、農協2法改正を準備した「農協改革の方向」という検討会報告の単なる引き写しです。第21回大会で採択した「JA綱領」が一言も出てこなかったことも不思議に思いました。私は、その辺から全中がおかしくなってきたと思うんです。

 三輪 検討会を設ける前に、農水省は協同組合学会の何人かから個別に意見を求めたようです。そのうちの一人は、農協の議決権について一人一票制の是非を問われたと、私に語っていました。その方は「一人一票制をなくしたら、協同組合と認められなくなり、独禁法適用除外を受けられなくなると答えておいた」とのことです。
 学会の人たちはみな協同組合の立場で意見を述べたのでしょう。だから、農水省は、その人たちを検討会の委員に委嘱しなかったのではないでしょうか。
 それに、新自由主義で気合いを入れられれば、その方向で発言する人が農水省の検討会や研究会の委員になって出ていますから、まとめられる報告の落ちはだいたい決まっているんです。
 もう一つね。『農業と経済』誌の農協特集号に載っていた座談会の中で、JAバンクの自主ルールについて農林中金に管理を任せるのは問題だとする発言があり、この発言に対し農水省の課長が、農林中金がやる以外に、ほかに、そんな能力はないと思う、といった説明をしていました。私は役所の一課長が系統信用事業について、そこまできめ付けてよいのかと驚きました。
 うがち過ぎか知らないけど、農水省は農林漁業金融公庫が特殊法人の整理で統廃合を迫られる場合を考えて手を打っているのではないかと私は読んでいます。公庫には800人ほどの職員がいますが、廃止後の行先として農林中金に的を定め、資金証券運用や関連産業融資の業務は中金プロパーに任せるとしても、農林漁業の系統融資業務は公庫組に固めさせたいわけです。天下りの人事配置まで見ていると生臭い話ですが、そんな見方もできるのですよ。

 梶井 ちょっとうがち過ぎじゃない。なんぼなんでも、そこまでは・・・・。

 藤谷 JAバンクシステムづくりは、ほんとに正しいシステムづくりだったのかどうかが問われますね。JAの常勤役員がこういって慨嘆していました。「全中にいわれるのならわかるけど、なぜ農林中金に信用事業以外の、経済事業のことまで、どうのこうのといわれなければならないのか」と。「指導」かどうか知りませんが、JAの現場にはちょっと違和感があるのではないでしょうか。

 三輪 セーフティネットは官のやる仕事ですよ。役所がやるべきことをやらないで農協に代行させている。しかし、もし事故が起こったら官がやられます。
 JAグループの方針の問題ですが、従来は全中が方向を決めて、みんなを引っ張ってきました。その方向に期待も持たれていました。ところが今は、とくに日本農業の方向や、またコメ政策にしても、みんなが万事これでうまくいくと思うような方向なんて出せない状況下にあります。
 となれば、これは役所でも同じですが、選択肢を示して国民に選んでもらうよりほかはありません。リーダーシップをとる人たちは、そうしたやり方しかできないような状況になっていると思います。

◆食料自給率向上と政策の整合性は?

三輪 昌男氏
みわ・まさお 大正15年山口県生まれ。東京大学経済学部卒。(財)協同組合経営研究所研究員、國學院大学経済学部教授、同学部長を経て定年退職。國學院大学名誉教授、日本協同組合学会元会長。著書に『自由貿易神話への挑戦』(訳書、家の光協会)、『農協改革の新視点』(農文協)など。

 藤谷 しかし、そうしたリーダーシップをとる能力をもった責任者がほとんどいないじゃありませんか。

 三輪 責任者の問題ではなくて、個々の農協では、役職員がそれぞれ自分でものを考えて動くという自立的な人間になっていないということが問題なんです。どうやって自立的な役職員をつくるかが勝負です。

 藤谷 だから、そういう農協の組織なり職場の空気や風土をつくり出していくのは誰なのかということですよ。

 三輪 やらなければつぶれる。それで、つぶれたら仕方がない。自分でよく考えなさい。余計な手を打たないほうがいい。甘えは許されません。そういう状況が来ています。

 梶井 「食と農の再生プラン工程表」は農業の方向づけをしていません。もっぱら食の安全と安心に傾斜してしまって、消費者に軸足を移し過ぎちゃったきらいがあります。方向は出せないのではなくて、出そうとしないのだと思います。

 三輪 全体として産業構造の議論も、ビジョンもなくて、また東アジアとの関係も考えようとしていませんね。

 梶井 方向づけに関していうなら、基本法にもとづいて基本計画を作り、40%の自給率を45%に引き上げることを農政の基本目標にしているのですから、それと今とっている農業政策が整合性を持っているのかどうかを役所は検証すべきです。そういうことをやろうとしていないところが問題です。

 三輪 だから再生プランを出さなきゃならないところに落ち込んだわけですよ。そこまで落ち込んだ責任をどうするのかと問いたい。自分たちの責任を抜きにして再生プランが出てきているのですよ。

 梶井 今年の農業白書の冒頭部分は、そこを象徴していますね。あれだけ牛海綿状脳症(BSE)で騒ぎを起こしながら、役所の自己批判はひとこともありません。
 それからね。工程表では遂に「農業」という言葉までなくしちゃったんです。農業でなくて「食料産業」になってしまいました。この流れでいくと自給率の問題はどうなるんだという疑問が湧く。自給率はどうでもいいんだというのなら、まずそのことを書き込んでもらわないとね。基本計画にあるのだから。

 三輪 昨年の「骨太」方針なんかには、ちらりと自給率という言葉が出てきていましたが、それにしても45%くらいの数値で自給率目標を立てましたなんてのは笑止ですよ。

 藤谷 今のままでいったら45%といえども絶対に実現しませんよ。ずっと40%できていますからね。

 三輪 下がりますよ。WTO農業交渉への先の米国提案で押し切られてごらんなさい。あっという間に自給率目標なんて瓦解しますよ。

◆「再生」をいうならば価格・所得政策を

 梶井 さて、ここまでの話を前提にして、次に農協改革は今、何をなすべきかというテーマに移っていきたいと思います。
 改革論議の中で現在、この点が一番の問題であり、これに取り組まなければいけないといった指摘から始めて下さい。

 三輪 再生プラン工程表の中身をめぐって、農協が外部の経営コンサルタントを雇えば2分の1の補助をするとか、また経営体としての評価システムをつくるとかいった話がちらほら出ていますね。こんなのはとんでもないよ。

 太田原 その前にちょっと。政府の文書に書いてあることというのは、基本法の時もそうですが、こういうことができればいいなと思うことがたくさん書いてあります。
 私はむしろ書かれていないことが大事だと思います。再生プランは農業再生にとって一番大事な価格、所得について何も触れていないことが問題です。だから自給率向上といったって全然インセンティブがないわけです。
 プランには当事者自身が考えていけばよいことはたくさん書いてありますが、行政がやらなきゃいけない価格と所得をどうするのかという一番肝心のことは何も書いてありません。

 梶井 基本的にいえば今の農政の考え方は、これまで価格所得政策をやってきたから日本農業が弱体化しちゃったんだ、だから、むしろ、それはやめてしまって構造政策一本でいって、効率的かつ安定的な経営体ができれば、どんな価格でも対応できるようになる、というのが基本ですよ。

 太田原 いや、その基本姿勢がおかしいのであって、そこを一番いうべきではないでしょうか。いわないから結局、現場が工夫すればよい、細かいことを、お節介的にたくさん書くということになっています。

 梶井 一番中心的に議論すべき価格所得政策がない・・・・。

 太田原 一貫して、そこを逃げているわけですよ。この前、「農業協同組合新聞」に載っていた梶井先生と経団連常務の対談によりますと、経団連の方は徹底して自由主義的でしたけど、しかし農業についてはセーフティネットとしての所得政策が必要だと述べていました。
 それは、やはり日本経済に対しての責任感からくる発想だろうと思います。ところが農業政策の側は所得政策を全然いいません。以前は所得政策の確立をうたっていましたが、再生プランに至っては構造改革特区や株式会社参入、また農協の体質改善などの話ばかりです。
 EUでも米国でも基本的にセーフティネットとして所得政策を出した上で、農業の方向とか施策を議論していますが、日本では肝心の所得政策が置き去りですから農業の方向づけを議論するのは無理ですよ。

 梶井 工程表なんかでいっている経営所得政策の対象は農業者一般ではなく、40万経営体とかに絞ってセーフティネットを張るといった構想です。

 太田原 それでよいのかという議論が先行すべきですよ。私は認定農業者だけでもまずスタートしたらよいと思います。北海道では中山間地への直接支払いを草地酪農にまで広げてもらい、上限の100万円をもらっている酪農家が随分増えています。家計費をそれでまかないながら、したたかな事業展開をしていくと思います。道の酪農を支えている直接支払いの効果は大きいですよ。
 そういう現実に注目して系統は先頭に立って所得政策を議論すべきだと考えます。しかし農協は依然として価格政策を頼りにしているのが不思議です。

 梶井 私は価格政策を抜きにして所得政策を語れるのかどうかが一つ問題だと思います。不足払いはどちらともいえます。今度の米国の農業法なんかは価格は市場に任せるとしてもターゲットプライスを決めておくという点で価格政策であり、その上で市場価格との差額を補てんしています。しかし所得の不足払いですから所得政策のカテゴリーに入る。今は両者の区別がなくなってきているので、私は「価格・所得政策」といったほうがよいと思うのです。

◆農政活動を見直し国民的合意形成を

太田原高昭氏
おおたはら・たかあき 昭和14年福島県生まれ。38年北海道大学農学部卒業。43年北海道大学大学院農学研究科単位取得。43年北星学園大学経済学部、46年北海道大学農学部に勤務。52年同大学助教授、平成2年教授。7年日本協同組合学会会長。10年日本農業経済学会会長、11年より北海道大学大学院農学研究科長、農学部長。農学博士。著書に『明日の農協』(農文協)など。

 太田原 日本は、そのどちらもないのです。

 梶井 稲作経営安定対策はやめるということですが、やるのだったら稲経みたいな形でコメ生産を安定させるような価格・所得政策をまず実施すべきだと思います。
 酪農も含めて主要な農畜産物について価格・所得政策のネットをどう張るかという問題が解決されないと、政策対象を認定農家だけに絞るとかなんとかという話にならないんじゃないかと思うんですね。

 藤谷 結局ね。われわれ専門家からみたら当たり前の議論が国民的な議論になってないわけですよ。私どもは農政が迷走状態だといっていますが、そんな状況になっているのは、農業・農政のあり方に関して、EUのようながっちりした国民的合意がないからです。
 そこで回り道のようだけど農業・農政についての国民的合意を形成していくために、JA陣営の農政活動を見直すことが必要だと思います。与党議員対策中心主義みたいな行き方ではだめです。国民戦線統一型でなければいけないと思います。

 梶井 建前としては与党対策中心とはいわないでしょう?

 藤谷 いやいや、全国組織の職員の方から、与党中心で何が悪い?とはっきりいわれたのでびっくりしたんですよ。しかし、農業・農村を大事にし、自給率も上げなくてはいけないという思いは広く国民の間にあるわけですから、各層のそうしたエネルギーをどう掘り起こし、結集していくか、みんなで知恵を出し合えば必ず国民合意の可能性は出てくると思います。

 太田原 確かに地域では展望のあるJAの活動が結構あるんですよ。そういうJAの共通点を調べて、そこにみえてくる方向と霞ヶ関や大手町とのずれをえぐり出す必要があります。単協レベルの視点が重要です。

 三輪 政府の経済財政諮問会議の民間委員は農協を見たことがないと思いますね。マスコミの流しているイメージだけで議論しているんです。何もしていないように見える農協だって地域の失業救済はしています。
 さっきいいかけた経営コンサルの話だけれど、その農協に対して経営コンサルタントを雇えば、効率が上がって一般企業と競争しても勝てるようになると彼らはいいますが、競争の側面だけでいけば負けるに決まっているじゃない。だってコンサルタントは向こう側の先生であり、教えられることは一般企業の後追いになるから、それでは農協はつぶれてしまいますよ。

 太田原 生協が量販店の指導を受けてつぶれるようなもんですね。

 三輪 農協は職員が先頭に立つのじゃなくて、やはり組合員が集まって、それを基礎にやっているところは、福祉でもファーマーズマーケットでも地域密着型で結構いい活動があるわけです。再生プランの構造改革はそれを壊しにかかっていると私は見ています。

 藤谷 そうした農政の対応が出てきたり、あるいは価格・所得政策の確立が先送りされている状況を打開するには、やはり国民的合意を形成していく地道な取り組み以外にはないと思います。対外広報活動も大切ですね。

 三輪 JAグループは再生プランにどう対応していくのか。相変わらずの三位一体論ではどうにもならないというのがコメ政策です。

◆「新世代農協」の動きに注目
  付加価値求め売上伸ばす

梶井 功氏
かじい・いそし 大正15年新潟県生まれ。昭和25年東京大学農学部卒。39年鹿児島大学農学部助教授、42年同大学教授、46年東京農工大学教授、平成2年定年退官、7年東京農工大学学長。14年東京農工大名誉教授。著書に『梶井功著作集』(筑波書房)など。

 太田原 今度、北海道から全中会長が出たので私は期待したいのです。
 ところで私は最近、米国の農協を見てきました。あちらの農業者は北米自由貿易協定(NAFTA)でやられ、中南米からは安い農産物に加え、労働力も殺到してきて大変です。このため3300頭飼育といった酪農経営でさえ赤字です。
 とにかく過剰生産と価格低下は日本と一緒でした。だから所得政策が出てきたわけで、そこが日本との違いです。そうした中で「我々は海千山千の商人に対して団結しなければ」と農協に対する見直しが行われています。さらに今までの農協に飽き足らない人たちによる新世代農協が目立ちました。
 その特徴は、これまで農協組織とは無縁だったファミリーファームが協同組合をつくり出しているということと、また親の世代の農協に不満を持つ団塊の世代が新しいタイプの農協をつくっていることです。
 その中身は徹底した付加価値型で加工とオーガニックです。とくにオーガニックは倍々ゲームで販売高が伸びているとのことでした。農産物市場全体では過剰生産だが、我々は付加価値型で新しい市場をつくっているんだと張りきっていました。
 日本には、農協は途上国型の組織であり、成熟市場では歴史的使命を終えているなどとする新自由主義の考え方がありますが、市場経済最先端の米国で新しい農協の展開があるということをもっと研究していく必要があると思いました。

 三輪 しかし、ちょっと用心したほうがよいと思いますよ。EU15ヶ国の農協の紹介をした本に新しい農協についての発想法が出ていますが、そこには従来のICA型の農協はだめだとしてICA原則を否定する主張があります。新古典派エコノミストが書いたから市場競争原理で裁断しているわけです。
 川下に出てくる点で米国の新世代農協と共通していますが、さらに、その本には一人一票制とか協同とかいった発想はやめろとも書いてあります。
 新自由主義は知らない間に浸透していますから、そこをよく見極めないと危険です。

 太田原 私もその点が気になって紹介してくれた学者や農業者に聞きましたが、現場の人たちは新自由主義とかには関心がないんですね。
 米国の新世代農協もEUの農協と同じように株式を発行して資本調達をするという株式会社手法を取り入れるところがありましたが、それでうまくいっているわけではない、これはだめだと反省する声も聞きました。

 梶井 私は最近、韓国へ行きましたが、消費者協同組合という名称の農協がありました。これは農民が生産資材を共同購入する購買組合としてスタートしたからです。しかし、その後は組合員の作った農産物も共同で周辺の消費者に販売するようになりました。さらに有機農産物を志向する消費者と話し合っているうちに、消費者をも組合に組織してしまったということです。私はこれを、ある意味では協同組合の原点を教えてくれるような運動だと思いました。
 ところで藤谷さん。国民的合意の形成を強調されましたが、何を軸にして、その運動を進めればよいとお考えですか。

 藤谷 私は今、生協の理事もしていますが、活動的な組合員はよく勉強していますよ。産地との交流にも積極的で、農家の思いや悩みもよく知っています。非常にアクティブな消費者層がいるわけですよ。それから生協は安全安心を大きなスローガンにしていますから、そういう食料を安定的に供給してくれる基本はやはり国内農業であるという熱い思いを抱いています。
 そうした層を軸にして国民合意を形成することは、そんなに難しいことではないと考えるんです。各県のJA中央会が県民の合意形成に努力するとかいろいろの取り組みを試みてきたはずですが、どうも長続きしない。各JAの各地域における取り組みも重要だと思います。一気には成果が挙がらなくても努力の積み重ねが大切です。

◆盛り上がるNGOの運動
  社会正義求め多様な結束

 梶井 最後にまた新自由主義の話になりましたが、新自由主義の発想は強きを助け、弱きをくじくということです。しかし国民一般は弱者です。そこに着目するなら国民合意の形成は、それほど難しくないといえるかもしれません。

 三輪 世界各地でNGOの新自由主義に対抗する運動が盛り上がっています。ウルグアイラウンドの時とは全く違う情勢が実現しているのです。
 世界的大企業経営者が結集する「世界経済フォーラム」の大会が毎年1月末、スイスのダボスで開かれますが、これに対抗するNGOの「世界社会フォーラム」が01年にブラジルのポルトアレグレで開かれ、122ヶ国から約2万人が参加しました。02年も第2回を開いてグローバルな社会正義を求める多様な社会運動組織の結束が進んでいます。
 01年には日本からの参加はなかったのですが、02年には初めて10人が参加しました。世界ではそういう流れになっているのです。これに注目すべきです。 (おわり)

座談会を終えて

 この座談会は、農水大臣の入れ替わった9月30日以前に企画された。「農協が独禁法適用除外になっていることが問題」などという、協同組合の存在意義そのものも否定するような発言を、経済財政諮問会議の場で、一流の?経済学者が行い、それをたしなめる立場にあるはずの農水大臣がそれに同調、その問題も含めての農協改革検討を含む「工程表」が出されるに及んで、これは協同組合研究者に発言してもらわなければならない、ということで企画された次第。
 案の定、3先生の怒りは相当なものである。根本的に検討する要ありとする3先生の発言に多くを学んでほしい。「工程表」が意図するような方向でJA改革がすすめられるなら、それはまさしく改革ではなく、解体になる危険性がある。JA関係者の主体的な検討が一番大事になっているときである。3先生にも多くの場でこうした発言をしてほしいし、JA関係者は機会をつかまえ積極的に3先生に真の改革とは何か、意見を求めてほしい。 (梶井)


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
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