農業協同組合新聞 JACOM
   
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決議の着実な実践に向け智恵を出す
第24回JA全国大会分科会で議論


担い手、地域とJA

 JA全国大会は3年前の23回大会から大会決議の着実な実践のために、現場からの事例報告などをもとに討議する分科会を開催している。
 今回も大会前日の10月10日、東京・虎ノ門パストラルを会場に、担い手づくり・支援、食農教育、高齢者福祉、組合員加入促進、JAの人材育成などをテーマに12の分科会が開かれ、JA、中央会、連合会関係者約1600人が参加した。
 分科会は第24回大会決議の4本柱に即し、より具体的な課題をめぐって討議が行われた。
 担い手づくりと支援については、米政策改革のもとでスタートした地域水田農業ビジョンの実践が課題となる。とくに地域農業の将来像を描くにあたっては、担い手とのJAの関係強化だけでなく、大会決議にも盛り込まれた小規模農家、兼業農家など多様な農業者を支える農業振興策も求められる。
 分科会では集落営農組織づくりを中心に議論されたが、経理の一元化など品目横断的経営安定対策の要件をクリアするためのJAの推進体制や、組織化・法人化された担い手への優遇措置などJAの支援策づくりが課題となることが示された。ただ、一方で事例報告では国の政策要件をクリアするための組織化という面だけでなく、集落が自ら地域農業をどう描くか、そのために徹底して話し合うことこそが大切という点も強調された。
 また、米の計画生産を実行するための地域水田農業ビジョン実践と担い手育成策の必要性も改めて提起された。
 地域農業の振興とともに決議で掲げられたのは、生産履歴記帳の徹底などによる安全・安心な農畜産物の提供だ。
 生産履歴記帳をテーマにした分科会では、計画、実行、検証といういわゆるPDCAサイクルに基づいた継続的な取組みが安全・安心な農畜産物の提供を実現するという点が強調された。そのほか、記帳運動だけでなく、消費者と生産者のコミュニケーションの場をつくり、理解を促進していくことも大切な取組みになることも指摘された。
 コミュニケーションの中身の重要性について指摘が出たのは食農教育の分科会。
 無農薬、減農薬栽培などの取組みばかりが強調されがちだが、今年5月に施行されたポジティブリスト制度とJAグループがそれにきちんと対応していることも情報発信すべきとの指摘があった。また、中山間地域で増加している鳥獣被害などの実態なども伝えるべきとの意見も。
 大会決議の柱のひとつに「安心して暮らせる豊かな地域社会とJAの地域貢献」がある。この課題ではすべてのJAが食農教育と高齢者福祉事業への取り組むこととなっているが、分科会では高齢者福祉事業は、地域住民全体を対象にした事業であり、「地域に生きるという本来のJAとして取り組むべき事業」という点が強調された。そのほかJAの人材育成については他企業の職場活性化策などの報告を受けて討議した。

米政策改革・品目横断政策とJAの取組み−第1分科会
計画生産を実施する担い手づくりを

◆広域営農組合をJA出資で法人化

 19年産から新システムに移行する米生産への対応と品目横断的政策の導入に向け、JAにとっては地域農業ビジョン策定と担い手づくりが大きな課題となる。第一分科会は東日本と西日本に分かれそれぞれJAの実践例をもとに課題解決の道を議論した。
 JA兵庫南では259集落のうち47集落で担い手要件をクリアした営農組合が設立された。
 このうち八幡町では、町内6集落の全農家とJAが出資し広域営農組合が昨年5月に立ち上がった。330haのうち3分の1を集約した。
 広域営農組合設立のきっかけは6集落のリーダーそれぞれが真剣に話し合うなかで、今後は集落単位では面積的に経営が難しくなるという考えで一致したことだという。
 特徴は、集落組織は広域営農組合の支部的な位置づけとし、そこが集落内の農地、水利の調整機能、ふれあい活動などを担うという二階建ての組織としたこと。
 また、営農組合の事業は作業受託ではなく経営も引き受けることとし、耕作放棄地の発生抑制と解消をめざした。また、新事業として農産加工を計画し、現在、地域内の女性たちが加工グループを結成し、営農組合で栽培した原材料を使った惣菜、和菓子などをJAの直売所で販売しているという。加工施設などにはJAの遊休施設を貸し出すなどの支援も行っている。
 今後の課題としては集落営農組織が未組織の地域での組織化、広域化の取組みと、営農組合への購買、利用事業などのさらなる優遇措置の検討などを同JAの木下直樹経済部長はあげたが「政策転換をきっかけに自分の村の農業を自分たちでどうしていくか真剣な議論が生まれた点は評価できる」と語った。

◆耕作放棄地対策を目的

 JAいずもでは、16年に市とJAが連携して農業支援センターを立ち上げ、今年4月には事務局をJA内に置いた。こうしたワンフロア化体制のもと、1地区1集落営農組織の設立と耕作放棄地をつくらない、という分かりやすい目標を掲げた。
 また、集落への説明では「単に国の制度に乗るための集落営農組織ではなく、集落全体の農業・農地をどうするか、解決策の選択肢として考えてみませんか」と繰り返し説明してきたという。
 また、組織化を加速させるためJAの職員18人を担い手支援アドバイザーに任命し、新たな政策などの情報提供や集落での話し合いの支援などにあたっている。
 そのほか、市とJAが資金を拠出した「21世紀出雲農業フロンティア・ファイティング・ファンド」事業を18年度からスタートさせ、農機取得、商品開発、加工設備、農地の取得・貸借料などを一定の要件で助成するという取組みも始めた。
 こうした取組みの結果、18年度末には集落営農法人11、特定農業団体5、20ha以上の任意組合20などとなる見込み。16年には小規模個別農家が耕作面積に占める割合が6割を超えていたが3割以下となる。
 同JAの江角正喜営農企画課長は今後の課題として、集落営農組織の規模が拡大していく場合のJAとしての経営支援策と同時に、JA直売や高単価販売などの販売努力が重要になることを指摘。「農家のためになるJAの経営を」と強調した。

◆全量集荷と売れる米づくり

 JA佐賀みどりの永尾義純常務はまず米政策改革への対応を報告した。
 基幹品種であるヒノヒカリの特別栽培、全農安心システム米などの取組みによる安定・良質品生産を重視し、共乾施設を核にした実需者との結びつきを進めてきた。
 そのため、生産目標数量の配分に傾斜配分を設定。種子更新率、一等米比率、特栽米の取組み、生産履歴記帳などを指標にして配分する方式を導入している。生産者の努力を反映させる方針だ。
 一方、地区ごとに設置している水田農業推進協議会は、担い手代表、消費者代表、集荷業者にもメンバーになってもらい、大規模農家と集落営農組織との共存、JA以外の集荷業者との連携による生産調整方針の作成などに努力している。
 担い手育成では集落営農組織を100、認定農業者42を目標にしている。今年9月末であわせて90に達した。秋まき麦地帯の面積カバー率では90%となったという。今後は複数集落での組織化などが課題だという。とくに行政とJAがワンフロア化した推進体制をとっても、現場に出向いて担い手育成を支援するのはJAであることが強調された。
 事例報告をうけた総括討議では、担い手育成策とともに、米の生産調整の確実な実行をどう図るかに意見が集中した。来年から新システムに移行するが、行政の役割の後退や生産調整未実施者へのJAとしての対応などに不安の声が出た。
 会場から課題解決策として出されたのは、地域の水田農業推進協議会として役割を発揮させるようJAがどう関与するか、また、担い手育成と関連させて計画生産を確実に実施する担い手をJAがどうつくるかが必要ではないか、などの意見があった。そのほか、生産調整の実施、未実施の問題として対応するだけでは不十分で、やはり地域の水田農業の姿をどう描くのかという取組みのなかで解決すべきだとの指摘もあった。
 また、JA佐賀みどりの永尾常務は「米の価格をJAがどう支えるかを考えると、まずは全量集荷に取り組むことではないか。われわれは組織をあげて取り組んでいる。自分のJAが何ができるかを考えるべき」と強調した。
 そのほか、東日本のJAが参加した会場では、JAみやぎ登米、JA上伊那、JA福光から事例報告があった。
「第2分科会」のレポートはこちらへ

(2006.10.24)



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