農業協同組合新聞 JACOM
   

特集 食と農を結ぶ活力あるJAづくりのために2007


JAの現場から「JAのビジョン」づくりに向けた戦略を考える

座談会 その2

新たな事業方式を作り出し求心力を高める


◆地域農業振興とJA販売事業の役割

村田 武氏
村田 武氏

 ――梶井先生から大潟村の実情の報告がありましたが、JAが政策対象にしようと担い手づくりを進めていることに問題はないのでしょうか。

 北出 担い手問題は確かに重要ですが、地域農業が地盤沈下していることに対してどう対応するのかというのがJAの課題になっていると思います。今回の訪問ではそれがJA東西しらかわとJA新いわての特徴だと思いました。
 地域農業全体として、売るためのものをどう作るかを課題とし、そのための栽培技術、肥料開発などを進めているのではないかということです。
 それから販売についてもJA東西しらかわでは米の買い取りを進めています。鈴木組合長が言うにはJAの職員は委託販売の場合、いくらで仕入れたものがいくらで売れるのか、そのためにコストはどのくらいかかっているのかといったことについて関心がなかったということです。そこを買い取りにしたことによって販売はJAの責任になるのでコスト感覚が生まれてきて、それがそのほかの事業にも反映してくるということでした。

 ――これまでの話を整理すると3つほどパターンがあるのではないかと思います。
 ひとつは米地帯で一生懸命に政策の基盤に乗せていくために集落ぐるみで担い手をどうするかに取り組んでいる。もうひとつは政策支援対象とは別に地域の担い手づくりにも相当力を入れていくというパターン。
 そしてもうひとつは政策は政策として、それとは別にJAとしてビジネスをしっかりさせて農家を引っ張っていくという地域があるということではないかと思いますがいかがでしょうか。

 田代 今度の政策に乗るか乗らないか、担い手をどうするのかという問題もあるわけですが、やはりJAにとっては農家組合員が第一だということだと思いますね。JAいずもでは、60歳、70歳はまだ若いほうだということから担い手に位置づけて支援をしています。それから最初に話題になった直売所などでも、JA三次では広島市内にインショップ形式で進出するなど、全体の販売額からすれば少ないかもしれないが、高齢農業者も含めて組合員の活性化につなげている。
 しかし、北海道では農産物価格の低迷で自分たちの販売収益でカバーできるのは物財費のみで、政府の財政負担が農家の所得になっている。都府県の集落営農や生産法人も農業は赤字だけれどもそれを助成金や交付金で埋めているというのが現実ですから、国の政策とは関係なく担い手育成や農業振興をといっても、やはりそうはいかない。国の助成をきちんとさせるなかで担い手をつくることが必要になる。
 白石 確かにJAふらのの場合もかつては米のウエートが高かった。ただ、現在は販売額の1割を切っています。麦、ビートを合わせても2割程度。全体の55%は野菜です。
 ですから北海道というと土地利用型農業のイメージがありますが、私は富良野の場合はかつての都市近郊農業になってきたと思いますね。ニンジン、馬鈴薯、スイカ、アスパラ、ミニトマトなど品目が非常に多い。まさに鮮度の高い野菜の供給基地になっていると思います。そういう形で厳しい競争環境に立ち向かっている。
 もちろん大規模経営ですから、担い手、労働力が問題になりますが、これについては農業で働きたいという都会の若い人たちをサポートする宿泊施設をJAが経営している。季節になれば繰り返し富良野にやってきたり、なかには働き先の農家で結婚することもあるという。こうした施設をJAが経営することによって長期的な担い手づくりにもなっている。現状の労働力不足の解消だけでなく次の世代をきちんと確保する取り組みとして注目されます。

◆どう中核農家を支える体制をつくるか?

白石正彦氏
白石正彦氏

 村田 稲作に限らず中核的農家、あるいは担い手とJAとの関係が非常に大きな課題になっていると思うのは、たとえば温州みかん産地でも地盤沈下が激しくなっているからです。
 かつて300万トン生産時代は個々の担い手のなかでもJAの共販の仕組みから離れて販売する動きがありました。米と同じでみかんでも当時はマーケティングなどなく無条件委託販売ですから、農家が集まって生産グループをつくって有機栽培や加工に独自に取り組むなど脱農協の動きがありました。
 その時代は10アール当たり50万円、60万円という収益を上げることができた。それだけの価格が東京市場でついたわけです。
 ところがここに来て10アールあたり30万円になるかならないかという水準まで落ちてきたときに、中核的な担い手グループももう個別に生産グループをつくって展望を見出すということが非常に難しくなっている。
 こういう状況のなかで高齢化もあって傾斜地農業はみかん園の荒廃が激しいスピードで進む懸念がある。そこでJAでは担い手に対して営農ヘルパー制度を導入しています。さらにみかん園の実態調査や園地荒廃度調査まで行って労働力不足の農家に営農ヘルパー制度で摘果、収穫労働の派遣やスピードスプレーヤーの共同管理、若い経営者への園地あっせんなど、集落営農に代わるかたちとしてJAが担わざるを得ないという状況になってきています。
 つまり、中核的な担い手にとってもJAががんばってくれない限り個別経営を維持する基盤が危なくなってきているということです。

◆課題は結集力高める事業方式

北出俊昭氏
北出俊昭氏

 梶井 その点でいえばJA相馬村はなかなかがんばっていると思いますよ。組合員数は1000人足らずですが結集力が非常に強い。そのきっかけになったのがリンゴ台風といわれた平成3年の台風被害へのJAの対応です。落下したリンゴもすべて集荷してジュースにするなどきちんと収益に結びつけた。それから今でも新しいジュースを開発したり、リンゴ自体のブランド化に力を入れてきています。だから、最近ではJA管外の農家でJA相馬村を通じて出荷したいという人もいて准組合員にしているといいます。小さいけれども販売体制がしっかりしているJAは大きな成果を上げていると思いますね。
 北出 担い手問題を考えるときに生産部会の役割も重要になるのではないかと思います。
 JAみっかびの例ですが、生産者が柑橘出荷組合を古くから立ち上げて、JAと専属利用契約を結んでいます。だから、JAとしては援助はするけれどもみかん生産については直接タッチせず、全部出荷組合に任せている。JAの生産部会など生産者組織は自主性があるようでいて実はJAの丸抱えのような運営になっているところが多いのではないか。生産者自身が自分たちの組合で生産してJAと専属利用契約を結ぶなど、生産者自身の厳しさも今後は求められるのではないかと思いますね。
 田代 ただそれはおそらく旧産地の形態ではないでしょうか。この問題は合併によって部会が統一できないままでいいのかという問題にもなるのではないか。
 たとえばJAはが野では、合併JAが単なる共和国であってはいけない、やはり統一しなければならないということから部会組織の統合に力を入れています。
 北出 もちろんこの方式がすべてではないと思います。ただ、広域合併するということは、それだけ組合員も多様化するし産地も多様化するわけでしょう。それをJAの本所で全部まとめて対応するのは無理という地域もあるのではないか。そのときに生産者組織が重要になると思いますが、今後、そうした生産者組織がどう自主的な活動を強めて地域の農業の発展に寄与していくかも課題になるのではないかということです。最近言われる小協同組合ですね。それをつくって自主的に生産から販売まで責任をもってやるような方向も考えられていいのではないかと思います。それにはビジョンに基づいたJAの指導が不可欠なのは言うまでもありません。

◆農指導体制の再編も急務

武孝充氏
武孝充氏

 ――担い手問題への対応とJAの生産・販売事業との関連が指摘されていると思いますが、問題のひとつはしっかりした産地は生産者組織がしっかりしているということでもあるということでしょうか。

 田代 私は旧産地型の非合併JAの生産者組織の問題と合併JAのなかで部会組織をどうしていくかというのは違う問題ではないかと思いますね。JA合併しても部会組織はそのままでいいというのであれば合併する必要がなかったわけですから。
 藤島 JAちばみどりは5JAが合併したわけですが、全体として統一化したブランドづくりを課題としました。ただ、ブランドづくりの進め方として、名前を一緒にすればいいだろうということではないと考えた。旧JA単位で別々に生産しているものを、現在ブランド化している地域の水準まで全体として引き上げる形で統一ブランド化しようということです。そのために拙速はやめて生産者みんながその水準まで達したときにブランド化しようと。私自身もまったくそのとおりだと思いました。下手に選別基準などを緩めて、名前だけを統一すれば、これはもう価格は出ない。
 野菜でも果樹でも輸入品を含めて全体としては供給過剰傾向です。消費量は減る傾向ですから。かりに生鮮が減ったとしても先ほども指摘したように加工品が増えているから価格が上昇するということはない。こういう過剰のなかでそれなりの価格を出そうとすればブランド化は非常に重要だろうと思います。高品質、高付加価値といったことを訴えることができるものが大切です。
 その際の生産部会の問題ですが、従来どおりの旧JA単位に分かれる部会であるならば、合併した効果がないだろうと思います。JAちばみどりでは「灯台かんらん」というキャベツが有名ですが、そのブランドで売っていこうというのであれば「灯台かんらん」部会が必要なわけですよね、JA全体として。そこに結集してみな同じような品質で生産できるような仕組みづくりが非常に重要だろうと思いますね。そういう形で再編成した生産部会の重要性はある。
 というのもJAの営農指導は非常に重要だと思いますが営農指導員だけで全部見て回るというのはコストも上がって無理ですよね。それよりも生産者がお互いの力を高めるような生産部会が重要で、そうした生産者とJAの協力関係というのはブランド化を進めていくうえでも考えておかなければならないことだと思います。
 梶井 JAが本当に販売事業に本格的に取り組むとなれば、やはり生産者組織を組織せざるを得ないんじゃないか。
 JA富里市ではすいか部会など伝統的な部会もありますが、それだけではないんですね。今、青果の4割程度は買い取り販売をしており買い取った青果物をインショップで売ったり加工メーカーに売っていますが、それは営農部のなかにある販売課が生産者をまとめるわけです。
 たとえばあの加工メーカーが注文している野菜はこういう品質で栽培法としてはこう要求されている、この話に応じる生産者は手を上げてください、というやり方で、要求に合う指導もしている。こういう形で生産者を新たに組織している。

 ――そうした新しい部会づくりや部会組織の力量を上げるには営農指導員の力が極めて重要になるということですね。

 梶井 今の例でいえば営農部のなかに販売課があるわけですから。営農指導と販売がドッキングしているわけです。さらに興味深いのは生活部のなかにも販売課がある。そこは直売所の担当ですが、地方卸売市場が少なくなるなかで病院や学校が給食の食材調達に苦労しているという話が直売所でお客さんから聞いたことがきっかけに病院や学校への食材供給を事業化していく。これが生活部のなかの販売課の仕事だというわけです。
 村田 栽培技術指導といっても従来のような共販対応だけではなく高齢者も含めた直売所対応もしていますね。そのなかでも特徴的なのは60歳を過ぎた人材の再雇用や普及指導員のOBを嘱託として活躍してもらっていることです。
 田代 つまり、販売力強化のために営農指導体制の再編が重要になっているということではないかと思います。
 ただ、今日の事例にあがっているJAは販売経済事業で収支が黒字、あるいはとんとんまでいけるJAであって、一方でやはり米に依存してそこまで事業展開できないJAもある。広域合併JAの問題とは何かといえば経済事業がしっかり確立できていないということでもあると思います。

◆出向く営農指導だけで地域ニーズを反映できるか

 ――合併JAの営農指導体制についてJAはが野の取り組みが注目されると思いますが紹介していただけますか。

 田代 JAはが野は、合併しても支店の統廃合は直ちにせず、営農指導体制と部会組織をどうするのかという問題意識からスタートしています。
 具体的には広域営農指導員、それから営農経済渉外員、あるいは大型農家班、その下に営農相談員と分けています。このなかで広域営農指導員というのは、イチゴ等の部会組織を統合していきたい、共和国ではなく統一した体制にしていきたいということからつくったもので、旧JAのいいところを全体に普及していこうということだと思います。
 ただ、それだけでは不十分なので一般の農家を対象にした営農相談員なども必要だということです。基本的には階層別対応ということでしょう。
  おそらくJAさがもそうした対応をすると思います。8つのJAがひとつになって部会を統一しようとしても2、3年はかかると思います。だから、旧JAの本所に営農センターを置いて、特徴を活かしたビジョンを描きながら最終的には合併JAとして統合することを考えていくと思われます。
 北出 広域合併した大規模農協のJAあいち知多は、地域に対応して4つの基幹営農センターとその下に7つのセンターを設置しています。そこには、販売担当の一般営農指導員とともに購買中心の営農LAを配置し、出向く指導を強化しながら地域に応じた営農指導を徹底しています。
 田代 営農指導体制を考えると、出向く営農指導、といわれていますが、大型農家対応だけではだめで全階層に向けてそれぞれの階層ごとにきめ細かく営農指導できることが大切だと思いますね。
 村田 農産物価格ということでいえば、エコファーマー制度など有機栽培型の推奨が行われるなかで、共販ではなくて直売所で価格差が出てしまう。だから営農相談員的な職員が非常に重要になっており、きめ細かい指導が農家の手取りにもつながっているということです。
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(2007.10.24)

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