クローズアップ 農政・フードビジネス

フードビジネス

一覧に戻る

(株)サラダクラブ―急伸する「カット野菜」市場

・野菜を食べない人が増えている だが?
・10年で4倍の規模に拡大
・カット野菜利用経験者は5割を超える
・周年産地リレーで鮮度のよいサラダを
・千切りキャベツは日本人のサラダの原点
・産地は加工適正のよい品種開発を

 ここ数年、国やさまざまな団体が「野菜を食べよう」と呼びかけている。しかし野菜や果物を好んで食べる人が減っているという調査結果があるように(別掲「JA総研の消費行動調査」【/statistics/2010/11/statistics101104-11526.html】を参照)、野菜の消費は伸び悩んでいる。そんななか、毎年、着実に野菜消費を伸ばしている分野がある。「カット野菜」「カットサラダ」などと呼ばれている分野だ。この分野で国内最大のシェアをもつ(株)サラダクラブに取材した。

(株)サラダクラブ―急伸する「カット野菜」市場◆野菜を食べない人が増えている だが?


 「現代の日本には野菜不足をまねきやすい食生活スタイルが蔓延している」と、国や日本栄養士会などは野菜を食べるキャンペーンを行っている。野菜の摂取は生活習慣病の予防になるだけではく、体に必要なビタミンやミネラル、植物繊維などをたっぷり含んでいるからだ。
 だが、JA総研の調査でも分かるように、「毎日野菜を食べる人」は減り、「食べない」人が少しずつ増えているのが実態だ。とくに単身者でその傾向が強い。そしてその「単身者世帯」が、日本でもっとも多い家族構成となっているのだから、野菜消費の面からみると前途は明るくない。
 そんななか明るい業態がある。それが「カット野菜」とか「カットサラダ」とよばれている世界だ。


◆10年で4倍の規模に拡大


 (株)サラダクラブは、平成11年2月にキユーピー(株)(51%出資)と三菱商事(株)(49%出資)によって設立された「カット野菜」の専門会社だ。
 設立後の売上げを見ると、平成12年3億円、13年8億円、14年19億円、15年45億円と倍以上の伸びを示し、19年には90億円、昨年は110億円と急成長している。
 同社の金井順専務によるとこの業界の規模は、同社設立当初はスーパーマーケットの売上げ規模(約2兆円)の0.5%、つまり小売価格ベースで100億円と推定されていた。ところが現在は、2%400億円と推定され、マーケットは10年で4倍の規模になった。
 米国では「パッケージサラダ」といわれているが、その規模は50億ドルで日本の約10倍のマーケットサイズだから、日本でもまだまだ伸びる余地は大きいと予測できる。


◆カット野菜利用経験者は5割を超える

カット野菜を利用したことがある人
 図1は、今年6月下旬に首都圏(1都3県)に住む20歳以上の男女合計1000名を対象に同社が行った調査結果(「サラダ白書2010」)から、カット野菜を利用したことがある人を男女別・年齢構成別にみたものだ。
 これを見ると60歳以上の男女を除いて、すべての年齢層で50%以上の人が「カット野菜を利用したことがある」と回答している。そして、利用経験者の40%強の人たちが週1回以上利用している(図2
 これらの人が利用している理由は「便利だから」が約93%を占めている。JA総研の調査でも「手間をかけずに食べられれば」野菜をもっと食べるという人が43%もいたように、「簡便性」が支持されている大きな理由だと、商品部商品開発チームの山?賀奈子さんは分析する。
 とくに女性の社会進出が当然のこととされる現代社会において、この「簡便性」は大事なことだ。この「簡便性」には「いろいろな種類の野菜が手軽にとれる」(49%)とか、「分量がちょうどいい」(47%)という「使い切りやすく」「1つの商品で複数野菜が食べられる」も含まれるだろう。

カット野菜の利用頻度


◆周年産地リレーで鮮度のよいサラダを


 現在、同社では全国にある自社5工場と協力会社5工場の10工場で、1日に約35万食を生産し、約8000店のスーパーと約2000店のコンビニに供給している。
 材料となる野菜の98%は国産で、年間を通じて安定的に原料となる野菜を確保するために、南北に長い日本列島の北から南まで「産地リレー」できるように、JAを中心に契約をしている。「カット野菜」で大事なことは「鮮度」で、ほとんどの商品の品質保持期間が米国などと比べてきわめて短い4日(D+3)だ。そのために「複数産地のリレーで常に旬なものを調達している」のだと金井専務はいう。
 そしてどうしても国内で産地リレーが現在はできないパプリカなど一部の野菜で輸入品を使っている。これも国内で調達が可能になれば「切り替えたい」と考えている。


◆千切りキャベツは日本人のサラダの原点


 それではどういう商品が売れているのだろうか。「創立以来の定番商品は『千切りキャベツ』です」と山?さん。設立当時は、食への好みが変わり「レタス」が中心になると思い、レタス2対キャベツ1の割合で考えていたが、現在はレタス1対キャベツ2〜2.5の割合になっているという。
 日本人のキャベツ好きは、日本人が生野菜を食べるきっかけになったのが「トンカツにそえられた千切りキャベツだった」といわれているように、「日本人にとってのサラダの原点」だからかもしれない。
 その他ではキャベツにレタスやニンジンなどを組み合わせた「ミックスサラダ」など参考小売価格100円前後のもの。「5品目サラダ」(参考小売価格100円〈税抜〉)、「12品目サラダ」など、複数の野菜を組み合わせたものから、刺身やハム、チーズを家庭で加える「お家で作るごちそうサラダ」シリーズ(カットされた野菜が4〜6種入)も好評だ(同198円)。
 そして直近では、女性に人気の「蒸し野菜」に注目し「レンジで簡単蒸し野菜」シリーズを開発し、現在「さつまいもミックス」「かぶミックス」(同198円)が店頭に並んでいる。


◆産地は加工適正のよい品種開発を


 商品構成はその時々で変化はあるが「カット野菜」のマーケットはまだまだ伸びると、金井専務は確信している。
 「現在も調達先の8割近くはJAグループだけど、さらに協力関係を強めるために、国産で周年調達できない野菜を周年国産で調達できるように工夫して欲しい」。
 そして「加工適正がいい品種(キャベツなら芯が少ないとか)を開発して欲しい」と希望を語った。
 家庭での野菜消費が減少するなかで、まだ小さいかもしれないが着実に伸びるマーケットとして「カット野菜」に産地も注目してはどうだろうか。

(2010.12.03)