コラム

本紙論説委員のソウル・レポート

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【山内偉生】
ソウル・レポート(1)  本紙論説委員 山内偉生

 昨年12月上旬に、韓国農民新聞社元副杜長曺瑛基(ジョウヨンギ)さんの招きでソウルに行き、僅か4日間の滞在であったが得るものは多かった。ソウル近郊の金浦国際空港で曺さんの出迎えを受け、直ちに韓国農業協同組合中央会に赴き金龍徳常務(経済学博士)と懇談した。
 金常務は、日本のJA全中の茂木会長が韓国農協中央会を訪問されたことに深謝し、日韓両国の農協組織の提携の重要性を強調された。

ソウル・レポート(1) 韓国農協中央会は、ご承知のように指導、経済、金融、共済の総ての事業を行う総合的な農協全国組織であり、韓国の経済の発展に大きく寄与している。
 ソウル市内のビジネスセンターに、堂々たるビルを所有し農協の中央本部の威容を示している。農協ビルのフロントに「農業博物館」が設けられているのが特徴である。『AGRICULTURAL MUSEUM』と英字の表示も掲げられ、農協関係者のみならず一般市民に広く開放されている。年間25万人以上の入場者があり、学童教育(入場者の60%が学生)にも活用されているそうだ。
 館内の展示物も非常に豊富で、その整然とした構築設備に驚嘆した。たとえば、人類(韓国民族)古代からの農のなりわいや水稲の作付けの歴史、石器時代からの農具の進歩など現代の農業経営に至るまで、丹念に農業の発展を解明する展示系列には感服せざるを得ない。
 金在均館長の懇切丁寧な案内で館内を一巡したが、古代からの朝鮮における農村の祭事についてのコーナーでは、農を国の基とする韓国人の心情の深さに感じ入った。李王朝時代の王の「先農祭」における「親蚕礼」や「親耕」の儀式などに象徴されるように「先農檀湯」の恩想の潮流を見ることができた。昔の村落杜会の約束事を「【契】約」というが、農【契】文に「農者天下之大本」の字句が大書されており深い感銘を覚えた。

ソウル・レポート(2)・()に続く

※原文の「【契】」の字は旧字体です。

(2010.01.20)