農政・農協ニュース

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特徴商品の開発・普及進む  JA全農の営農・技術センター

 JAグループ経済事業の技術側面を支えるJA全農の営農・技術センター(神奈川県平塚市)は、マーケティングをより重視する農産物商品開発室を昨年4月に発足させ、各産地の生産振興を支援している。
 例えば、「全農スプレーギク」では仏壇用だけでなく、欧米のようにテーブルフラワーとしても使えるようにと、ピンク色などのキクを産地に提案し、生産を拡大している。

トマトの一段密植栽培
トマトの一段密植栽培

 センターのほ場で以前から育成しているキクの苗は70品種ほど。その中から現地に適したいくつかを提案。すでに50品種以上が各産地に導入された。
 一般種苗メーカーと違っているのは愛知、和歌山、栃木の三大産地を筆頭にしたJAの生産部会など全国12部会にセンターの職員が直接出向き、産地と共同で評価・選抜している点だ。「生産者に開発への参加意識を持ってもらう」ことで現地密着型の開発が可能となった。
 こうして各産地から市場への出荷は、06年度が500万本、07年度は750万本以上と毎年増えている。
同センターには年間4000人を超える視察者があるが、報道陣にもその活動ぶりをアピールするため3月26日には今年度2回目のマスコミ現地視察を催した。
 同日も力点を置いたのは農産物商品開発室の取り組み。スプレーギクとともに養液を使ったトマトの一段密植栽培も話題となった。
 通常のハウスは10aあたり2500株程度を栽培し、6〜7段目まで実を成らせて年2回収穫する。それをこの養液栽培では1万株の密植とし、着果を1段だけにとどめて手早く収穫。年4回転させるという技術だ。従来型の栽培では6〜7段の着果を年2回転することで約28tを収穫、出荷している。この新技術は1段で約8tの収穫を年4回転させるため合計32tと収穫量の増加が期待されるという。
 また栽培ベッドを地上から離して高くすることで腰を曲げずに収穫できるようになり、作業が大幅に簡略化されるので専門技術を持たないパート労働者でも作業できる。
 こうした品種技術開発以外にも食品成分研究や営業企画体制を強化することで、より確実な研究成果の商品化と、生産地と消費者取引先との「架け橋」として商品開発部門を機能させることを目指している。
 つまり価格主義に偏重した開発をするのではなく、販売の視点に立った総合的な開発体制を整えるのが狙いである。営農総合対策部の小池一平部長は開発中の技術について「いかに早く生産現場と消費者の食卓に届くか、スピードをあげていきたい」と話す。
同センターでは職員が研究や開発を進める一方、外部からの講習者も受け入れており研修機関としての性格も併せ持つ。2007年度の受講者は既に1000人を超え、人材育成にも積極的に取り組んでいる。

(2008.04.01)