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稲作のコスト低減で業界が実態報告

−「販売」を軸とした米システムのあり方に関する検討会 (4/11)

 農水省総合食料局の「販売」を軸とした米システムのあり方に関する検討会(座長:八木宏典東京農業大学国際食料情報学部教授)は4月11日、第10回検討会を開き、生産コスト低減への取り組みの実態について業界関係者から報告を聞いた。  報告の概略は次の通り。 ▽農業機械業界=(株)クボタ・機械事業本部小寺一介業務部長  農家戸数の減少などにより、国内需要が減っているため、メーカー各社は生き残りをかけて大規模な組織改革、人員削減など徹底した経営コスト削減に努力している。営農者ニーズに対応した機能向上・安全対策コストを吸収できるよう、設計面で工夫している。原油価格の高騰...

 農水省総合食料局の「販売」を軸とした米システムのあり方に関する検討会(座長:八木宏典東京農業大学国際食料情報学部教授)は4月11日、第10回検討会を開き、生産コスト低減への取り組みの実態について業界関係者から報告を聞いた。
 報告の概略は次の通り。
▽農業機械業界=(株)クボタ・機械事業本部小寺一介業務部長
 農家戸数の減少などにより、国内需要が減っているため、メーカー各社は生き残りをかけて大規模な組織改革、人員削減など徹底した経営コスト削減に努力している。営農者ニーズに対応した機能向上・安全対策コストを吸収できるよう、設計面で工夫している。原油価格の高騰に対抗し、遠赤外線乾燥機など燃料節減をはかる機械を開発している。20年程度使用できる耐久性を持たせ、修理・整備を容易にして故障、修理費を低減する一方、安全で操作を簡単にし、農作業の生産性向上をはかっている。田植え、直播、除草、溝切りの4つの作業を田植機一台で間に合うような汎用機で、生産者の機械導入経費を抑制。
 全農と共同で開発した単一作業に特化したJAグループ独自型式のコンバインは、標準機種約428万円を280万円に30%安くできた。製造段階では設計段階で製造コスト、販売、サービス部門の情報などを織り込み、全体コストを低減。最少の在庫で供給するサプライチェーン・マネジメント(SCM)で無駄のない製品供給を行っている。
 業界全体で一緒に部品の共通化、資材の共同購入をすすめているほか、型式数を平成22年度までに平成18年度比で5%削減する。

◆全農がりん鉱石輸入をベトナムと長期契約

▽JA系統の肥料コスト低減=JA全農・山崎周二肥料農薬部長
 りん鉱石の新規ソースとして、価格面で有利で安定的な購入条件で、わが国初の試みとしてベトナムと平成20年一月に長期契約を締結した。今後、現地への投資の検討など取り組みを強める。りん安は中国を新たな輸入ソースとして位置づけ、平成20年度から本格的な導入を開始する。また、20年7月に新たな肥料専用船を就航させ、効率的な肥料輸送を実現して物流コストを圧縮する。
 生産資材コスト低減チャレンジプランとして(1)生産者・組合員に信頼される価格の確立(2)県版チャレンジプランの策定とJA別の目標づくり(3)重点品目を中心とした低コスト資材の普及拡大、物流合理化によるコスト削減(4)JAグループとして定めた担い手への対応の強化を掲げている。安価な資材の提供はヨルダンからのアラジン、BB肥料、共同開発農薬、ジェネリック(特許切れ)農薬で。担い手対応の弾力的価格は農薬大型規格品の開発、肥料満車直行、土壌診断サービスなどで実現する。物流コスト低減のための広域農家配送拠点は現在34県域、105拠点、149JA。平成21年度末までに37県域、122拠点、196JAに拡大する。
▽農薬業界=日本農薬(株)・廣瀬薫取締役兼執行役員営業本部副本部長
 農薬工業会として、全農と連携して「農薬費低減に向けた行動計画工程表」により、資材費低減に取り組んでいる。平成18〜22年度までの5年計画で、低価格軽量剤の供給を平成18年度の67%から22年度に80%へ。大規模農家向けの大型規格品の開発提供。容器・包装規格の合理化。農薬の投下量、散布労働力の軽減などを目標にしている。
 日本の農業生産物価格に対する農薬の費用比率は5%程度と低いレベル。農薬企業の経営面での低減努力は限界だ。日本で農業の規模拡大がなされれば、農薬量を減らした効率的防除が可能だが、一方では安全性を保証し登録を維持するコスト、作物残留分析コスト、マイナー作物適用拡大コストなどが増える方向にある。
 農薬は化学工業製品のなかでも加工度が高く、多品種・少量生産で使用に当たり登録が必要。1製品の開発に10年、100億円がかかる。農薬企業にとっては、縮小傾向の市場で、増大する費用と極めて低い利益性のアンバランスをどう克服し経営を維持・継続するか、が最大の課題となっている。

(2008.04.15)