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すべての国に食料安保確立の権利を

−全中とEU農業団体が共同声明

 JA全中の宮田勇会長と茂木守副会長は4月8日から14日までEUの農業団体などとWTO農業交渉をめぐる意見交換のため訪欧していたが、10日にはブリュッセルで開かれたCOPA−COGECA(EU農業団体連合会・EU農協連合会)の会長会議に出席、会議では全中と同団体との共同宣言「WTOに関する日本とEUの農業者・農協の共通の立場」が採択された。  宮田会長は、上限関税の阻止や重要品目の扱いなどに関するG10の立場を改めて説明し、日本とヨーロッパの農業者の連携を強固にしていきたいなどと話した。一方、COPAのルメテイエ会長はWTO農業交渉のファルコナー議長改訂案が実現すれば農産物輸入が増...

 JA全中の宮田勇会長と茂木守副会長は4月8日から14日までEUの農業団体などとWTO農業交渉をめぐる意見交換のため訪欧していたが、10日にはブリュッセルで開かれたCOPA−COGECA(EU農業団体連合会・EU農協連合会)の会長会議に出席、会議では全中と同団体との共同宣言「WTOに関する日本とEUの農業者・農協の共通の立場」が採択された。
 宮田会長は、上限関税の阻止や重要品目の扱いなどに関するG10の立場を改めて説明し、日本とヨーロッパの農業者の連携を強固にしていきたいなどと話した。一方、COPAのルメテイエ会長はWTO農業交渉のファルコナー議長改訂案が実現すれば農産物輸入が増大しEUも日本農業も壊滅的な危機となることなどを指摘、「悪い合意ならば合意しないほうがよい」との立場を改めて確認したいと表明したという。
 共同宣言ではすべての国に十分な国内生産が維持され食料安全保障を確立する権利があることを訴え、上限関税の受け入れ拒否、重要品目の柔軟な取り扱いなど具体的な提案を盛り込んだ。

JA全中・COPA−COGECA共同宣言の要旨
WTOで議論されている合意内容は日本やEUの農業生産を縮小に導くもの。消費者が一層輸入に依存しかねない。世界市場の食料価格の変動に消費者が一層著しくさらされかねない。
議長案は現在、平均54%の関税削減を提案。品目によっては85%の削減を求めている。このような削減は行き過ぎたもの。きわめて影響が大きい。
牛肉の生産ではEUの生産量は80万トン減少。英国一国の牛肉生産量に相当する。
日本は自給率が39%まで低下、持続可能な食料安全保障に対して消費者は懸念を高めている。一方で米生産者には水田面積の3分の1におよぶ生産調整が求められている。自給率を向上させるにはさらなる市場開放によって重要な食料の生産能力が打撃を受けることがあってはならない。
このようなWTO合意ではより貧困な開発途上国の生産も危機に直面。ブラジル、米国のような国々の大規模農業者や多国籍企業との競争が激化すればこれら諸国の小規模農業者はどう競争すればよいのか?
結論は世界のより多くの国々が一部の農産物輸出大国に食料を一層依存せざるを得なくなるということだ。そのような状況で政府はどう食料を確実かつ安定的に消費者に供給するのか?
われわれは世界の農業者が持続可能な方法で農村地域の一層の繁栄に貢献するよう農業生産を助長しなければならない。WTO交渉での提案は農業のより広範な役割を無視している。
具体的な提案国内支持、輸出競争、市場アクセスに関し加盟国が行う努力は均衡がとれたものでなければならない。国内支持は特定の国を優遇するものであってはならない。輸出独占の権利撤廃などすべての形態の輸出支持についての並行的な取り扱い。関税削減についてすべての加盟国の立場を反映させ議長提案より十分小さなものとしなければならない。重要品目は農産物の総タリフライン数をベースに十分な数を自己指定。複数の品目カテゴリーに分割、カテゴリーごとに関税割当を創設できるよう柔軟性が与られなければならない。上限関税は受け入れられない。▽開発途上国にとっての特別品目は食料安保、農村開発など真の開発目的に応え途上国農村の生計保障を確保するものであるべき。

(2008.04.17)