農政・農協ニュース

農政・農協ニュース

一覧に戻る

【JAは地域の生命線】高冷山間地の活性化は農業が基盤  JA会津みなみ(福島県)

 もっとも寒くなる1〜2月にはマイナス15度を超え、雪の深さが2mを越えるところも珍しくない。日本有数の豪雪地帯である南会津郡を管内とするJA会津みなみ。管内の総面積は23万4000ha以上あるが、ほとんどが山間部のため耕地面積はその2%にも満たないわずか4000haだ。厳しい自然条件に加え、不況による企業や工場の撤退なども相次ぎ、農業者や若者も年々減少している。地域が苦境に立たされている今だからこそ、JAが農業を基盤にして地域活性化を実現しなければいけない。高齢化率が高く、就農者の減少も著しい寒冷地帯で、JAは"地域の生命線"として何をすべきか・・・。

自然の中には宝の山が眠っている

「南郷トマト」のハウス栽培
(写真)
「南郷トマト」のハウス栽培

◆雪を売りものに!!

雪室に雪を入れる作業。ひと夏を越しても、大量の雪が溶けずに残る 南会津には雪がある。
 管内東部の田島市街地でも、冬は街中でも最大深度1mを越える積雪があり、山間部では3m近く積もることも稀ではない。この大量の雪をなんとか売りものにできないだろうか。
 それを実践しているのが、今年50周年を迎える「南郷トマト」だ。
 雪を利用しているのは、平成16年に稼動を始めた選果場だ。ここの予冷庫は、雪の冷気という自然エネルギーを利用した「雪室」なのである。
 雪室の貯蔵量は約1000平方m。南郷トマトの出荷時期は7月上旬から10月下旬までだが、冬から春にかけて貯蔵した雪は、夏の涼しさも手伝って10月下旬まで溶けずに残る。通常の冷蔵庫に比べて遥かにランニングコストが安く、何より環境にも優しい。

(写真)
雪室に雪を入れる作業。ひと夏を越しても、大量の雪が溶けずに残る


◆自然エネルギー活かし販売促進

雪の下に埋もれたキャベツを掘り出す、雪下農業 昭和63年には、独自の技術や土づくりなどの研究開発をめざし、「トマト青年部」を「トマト研究部」に改称。主に40才以下の青年農業者たちが、熱心に研究し、切磋琢磨している。
 厳しい自然条件の中、過去には豪雪によるハウスの倒壊や、低温・日照不足や干ばつによる不作など、幾度となく大きな被害をうけてきたが、そのたびに多くのボランティアなど地域の支えと生産者らの協同で産地を維持してきたという。
 JAでもこういった生産者のやる気にますます応え、さらなる地域発展につながる農業振興策が期待される。
 南郷トマト以外にも、雪を利用した新たな取り組みを模索している。その1つが雪下キャベツだ。
 できてすぐには収穫せず、雪をかぶせて畑の中で保存したものを、雪から掘り出して出荷する。時期をずらした有利販売につながるだけでなく、雪の寒さによって通常品よりはるかに糖度が高く栄養価の高いものができるという。
 通常に比べて労力がかかるため、まだ実践している生産者は少ないというが、これからは自然の恵みを活かした環境にやさしい農業は大きなアピールポイントになる。さらなる取り組みの拡大が期待される。

(写真)
雪の下に埋もれたキャベツを掘り出す、雪下農業


(続きは シリーズ・JAは地域の生命線 で)

(2011.03.04)