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米国政府の敗訴はゼロ ISD条項問題

 韓米FTAに盛り込まれてTPP問題でも大きな焦点となっている国家と投資家の紛争解決(ISD)条項。この実態についての外務省の報告によれば、米国政府が外国企業に提訴された紛争で、これまでに米国が敗訴した事例は1件もないという。

 ISD条項は、相手国に投資した企業が相手国の政策によって損害を被った場合、世界銀行のもとにある国際投資紛争仲裁センターに提訴できるという条項である。
 北米自由貿易協定(NAFTA)にはこの条項が盛り込まれている。外務省によると、米国企業がカナダ政府を提訴した件数はこれまでに16件ある。このうち米国企業の勝訴は2件、敗訴は5件などとなっているという。
 また、米国企業がメキシコ政府を提訴したのは14件で米国企業の勝訴5件、敗訴5件、そのほかは仲裁不成立などとなっている。
 これをみると米国企業の訴えは通る場合もあれば通らない場合もあるといえる。
 ところが、米国政府が訴えられた場合はどうか。外務省によるとこれまで米国政府が提訴されたのは15件ある(カナダ企業14、メキシコ企業1)。その結果は、米国政府の敗訴はゼロ。カナダ企業側の敗訴は7件、仲裁不成立は5件などとなっているという。
 つまり、ISD条項によって米国政府が外国企業に訴えられても負けたことがないのが実態だ。逆にカナダやメキシコ政府は米国企業からの提訴で負けはある。
 こうしたとりまとめが報告された3月1日の民主党経済連携PT総会では「明らかにアンバランス。理由を精査して説明を」との声が挙がったが、立教大の郭洋春教授は提訴先の国際投資紛争仲裁センターは世銀傘下。世銀総裁は必ず米国人で最大の融資国も米国、「負けるはずはない」と指摘している。
 総会では豪州が締結しているFTA(自由貿易協定)のうち、米国とのFTAのみISD条項を入れることを拒否したことが報告されると議員から失笑が漏れた。なお、日本は15の投資協定と9のEPA(経済連携協定)ではISD条項を盛り込んでいるが、フィリピンとのEPAでは同国が慎重になったため盛り込まれていないという。
 韓米FTAでは、ISD条項は、韓国に投資した企業が韓国政府を訴えることはできるが、その逆はできないという規定になっていることも大問題となっている。


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