農政・農協ニュース

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メインテーマは「次代へつなぐ協同」 第26回JA全国大会議案組織協議案決める

 JA全中は5月10日の理事会で10月に開催する第26回JA全国大会で採択する大会議案の組織協議案を決めた。
 メインテーマは「次代につなぐ協同―協同組合の力で農業・地域を豊かに」。
 組合員の世代交代が迫るなか、JAグループが「核」となって農業と地域を豊かにし、次代に安心して暮らせる社会を実現できるかどうか、「待ったなし」の状況にあるとの危機意識のもとに(1)地域農業戦略、(2)地域くらし戦略、(3)経営基盤戦略の3つの戦略策定と実践をめざす。
 組織協議は今月から。JAグループ各段階で現場の実態を見据えた将来像を描く積極的な議論が広くJA役職員に期待される。

◆世代交代にどう対応?

 今回の大会議案でJAグループの課題として第一に掲げたのが「組合員の世代交代への対応」だ。
 JAはこれまで昭和10年代生まれまでの第一世代が中心となって作り上げてきた。その世代は正組合員にして185万人で全正組合員の42%を占める。この世代のリタイアは迫っており、第二世代、第三世代が中心となったJAを作り上げていく必要がある。
 大会議案ではこうした次世代の組合員のほか地域住民も結集して、農業づくり・地域づくり・協同運動に「参加すること」で、それぞれのニーズが実現され、地域の課題が解決される姿をめざす実践を「次代につなぐ協同」と位置づけた。
 そのうえで、実践のための具体的な取り組みの視点を二つ掲げた。
 一つは「地域でおぎないあい、外とつながりあう新たな協同」だ。個々人の力では足らない部分を補い合うとともに、JAや地域外の人々、地域の企業やさまざまな団体とも連携する新たな協同を実践する。第25回JA全国大会決議で打ち出した新たな協同を引き続き実践するものともいえる。
 もうひとつは「JA支店を核に組合員・地域の課題に向き合う協同」。各地のJAは支店の統廃合を進めてきているが、多様化する組合員とJAとのつながりを深めるため支店重視の方向を打ち出した。支店を核に組合員と地域の課題に向き合う事業・運動の展開をめざす。


◆10年後の姿と3つの戦略

 議案では、このような基本的な取り組みを進めて、10年後にJAグループがめざす姿を以下のように提起した。
 ▽消費者の信頼にこたえ安全で安心な国産農畜産物を持続的・安定的に供給できる地域農業を支え、農業所得の向上を支える。
 ▽総合事業を通じて地域のライフラインの一翼を担い協同の力で豊かで暮らしやすい地域社会の実現に貢献。
 ▽次世代とともに「食と農を基軸として地域にねざした協同組合」として存立している。
 このめざす姿を実現するため、「農業」「くらし」「経営」の3つの戦略を策定し実践する。
 策定にあたっては、すべてのJAが現在の事業や活動が「めざす姿」に向かっているのかどうかの検討に取り組む。
 また、その策定と実践を中央会・連合会が支援することにしている。


◆地域営農ビジョン運動を展開

 第1の戦略の「地域農業戦略」の柱は、集落で徹底的に話し合って組合員農家の営農の向上と地域農業・農地の継承を図る「地域営農ビジョン」の策定と実践だ。
 JAグループはこれまで地域水田農業ビジョンの策定と実践に取り組んできたが、政府が推進する食と農林漁業再生のための基本方針に盛り込まれた地域農業マスタープラン「人・農地プラン」の策定を視野に、これと一体的に水田農業以外も含めて地域農業のビジョンを自らの手で策定しようという運動である。
 狙いは▽担い手経営体の明確化と農地集積、▽多様な担い手の役割発揮、▽地域の特色ある産地づくり、▽農を通じた豊かな地域づくりの4つ。地域農業をリードする集落営農組織、法人など担い手経営体を育成すると同時に、ベテラン農家や兼業農家なども農業を担う姿を追求。また、地域に応じた特色ある作目をつくることや、農の営みを通じた地域づくりもめざす。
 こうした地域営農ビジョン運動を支援するJAの事業構築も課題とする。具体的には、担い手経営体の経営計画を支援する販売部門と営農支援部門との連携による事業提案、地産地消などの促進による多様な担い手の役割発揮のための支援などだ。


◆JA支店が支える地域社会づくり

 第2の戦略の「地域くらし戦略」は、JAが総合事業を通じた地域のライフラインの一翼を担うかたちで、豊かで暮らしやすい地域社会の実現」をめざすもの。
 今回の議案では「JA支店を拠点としたJA地域くらし戦略の実践」が柱だ。高齢者生活支援、体験農園・農業塾、子育て支援、JA女性大学などくらしの活動や生活事業を組織基盤強化対策として位置づけ、支店を核に地域コミュニティの維持と強化などを実践する。
 これらの事業を活動基盤とし「人・モノ・情報」が交流する「JA交流事業」との考え方も打ち出していくほか、介護保険事業、JA助け合い活動などを「JA版地域包括ケアシステム」を構築する取り組みも進める。


◆利用の深化と組合員拡大

 「農業」と「くらし」の2つの戦略を実践するため第3の戦略として策定・実践するのが「経営基盤戦略」である。
 世代交代をにらみ、議案では組合員のJA利用の深化というタテの取り組みと、組合員拡大による事業の裾野の拡大というヨコの取り組みを「組合員ステージアップ戦略」と名付け、これをJAが策定することを提起した。
 世代交代に向け正組合員の継承をめざした提案をすることや、農地・資産の相続相談、次世代のJAづくりのための地域活動への参加、さらには管外に住む次世代への地元農産物宅配など事業利用の働きかけといった具体策を検討、実践する。
 そのためJAではこうした働きかけの対象となる組合員情報を共有することや、多様なニーズに応えるための商品の企画開発のほか、支店を核にした取り組みを進めるための支店長や支店の裁量強化、こうした次世代対策のための取り組みを「価値ある投資」として位置づけ、活動コストを予算に組み込むことなどもJAの課題としている。
 そのほか人材の育成も重要課題として取り組む。


◆脱原発と国民理解の促進も

 今回の議案では「将来的な脱原発に向けた循環型社会」の実践も掲げる。安全な農畜産物を提供することがJAグループの使命であることから、原発事故をふまえて脱原発を盛り込んだ。同時に再生エネルギー利活用と地球環境問題への取り組みも提起していく。
 こうした取り組みを進めるためにも、JAの広報活動を重視し、農業、農村、JAへの国民理解の醸成を図ることも課題とした。
 組織協議のほか、一般意見の募集や地区別JA代表者会議も行い、8月の専門委員会、議案審議会を経て、9月の全中理事会で大会議案を正式決定する。第26回JA全国大会は10月10、11日。

めざす姿を実現するための戦略と実践事項


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