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「買い物弱者」の分布マップを作成 対策への活用に期待

 農林水産政策研究所は近年問題になっている「買い物弱者」が全国のどこに存在するのかを示すツールとして、GIS(地理情報システム)を活用した「食料品アクセスマップ」を作成、5月15日に公開した。

 このマップは各都道府県の市区町村で生鮮品販売店舗への徒歩でのアクセスが困難な人口割合を表したもの。ここでは「買い物弱者」を店舗までの距離が直線で500m以上離れていることとし、約500m四方の区画ごとにその人口割合を推計し、頻度を色分けして地図上に落とし込んだ。
 日常の買い物を不便とする買い物弱者は全国に約600万人いるとされるが、実際にどの地域にどれだけの人がいるのか、これまでわからなかった。同研究所は今回マップを作成したことで、地方自治体には実情の把握を、店舗運営する事業者側へはマーケティングデータとしての活用を期待したいとする。

◆都市近郊にも存在

 このマップからは過疎や高齢化が進む地方部だけでなく、都市近郊部でも買い物を困難としている人口が集中していることが読み取れる。
 東京都で見れば23区内は店舗までの距離が500m以上という人口割合は「20%以下」だが、瑞穂町や奥多摩町、日の出町などでは「80%以上」という場所が目立つ。また町田市や八王子市などにも「80%以上」が集中して存在する場所があり、都市部での買い物弱者対策も必要な課題といえる。
 しかし、問題の深刻度はやはり地方ほど高い。同研究所が2010年の夏に全国1750の自治体に実施した食料品アクセスに関する意識調査の結果からも、店舗までの距離が500m以上という住民は高齢化率が高い県ほど高い傾向にあることがわかった。また、高齢化が進む地域ほど店舗までの距離が長く、「高齢化」と「店舗までの距離」という2点が食料アクセス問題を深刻化させている。

東京都の食料品アクセスマップ

(図)東京都の食料品アクセスマップ

◆JA店舗の縮小も一因

 買い物弱者の原因は何か――。この意識調査では9割の市町村が「住民の高齢化」を挙げており、次いで「地元小売店の廃業」(69.7%)となっている。その他「交通機関の廃止」(34.4%)という交通弱者の問題や、「助け合い等の地域支援機能の低下」(17.0%)、「協同組合等サービス縮小」(6.1%)も挙がっている。
 これらの問題をより明確にするため、県別に各原因が全国平均より高い水準にある項目をまとめたところ、「協同組合等サービス縮小」では特に鳥取、福井、愛媛が高く、四国では全県が全国平均より高かった。これらの地域ではJA等の店舗の急速な縮小が実施されたからだと分析している。
 同研究所は「移動販売や直売所の新設、乗り合いタクシーなど、買い物弱者を支援する活動はさまざまあるが、自治体の補助や住民同士の助け合いなど買い物だけでない機能をプラスした取り組みが問題解決に必要になってくる」としている。
 高齢化や店舗の撤退、自治体の合併といった大きな流れのなかで、総合事業を強みとするJAには中山間地や農村部に住む独居老人・高齢者に対する見守り活動や福祉など、買い物だけでないプラスアルファの対策をさらに求めたい。

食料品アクセスに関する市町村の意識調査から

(表)食料品アクセスに関する市町村の意識調査から

 

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