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BSE対策見直し、8月にも評価書のたたき台  プリオン専門委

 BSE(牛海綿状脳症)対策の見直しを議論している食品安全委員会プリオン専門調査会は7月24日の会合で評価書のたたき台を示し、とりまとめに向けた議論を開始した。ただ、この日は厚労省が諮問した対策見直しについての是非を書き込む結論部分は示さず、8月中に開かれる次回会合で提示する。

◆飼料規制などを一定評価

 厚労省の諮問を改めて整理しておこう。
 月齢制限については現在の「20か月齢」から「30か月齢」に引き上げた場合のリスク。 食肉処理の際に除去すべき特定危険部位(SRM)の一部については現在の「全月齢」から「30か月齢超」とした場合のリスク、である。このほかにこの2つのリスク評価をした後、さらに月齢制限を引き上げた場合のリスクについて厚労省は諮問している。
 プリオン専門委員会はこれまで7回の会合を開き、各国のBSEの発生状況や、飼料規制、SRMの除去の実態や管理など食肉の安全性、BSEの病原体の感染によるヒトの変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の最近の発生状況やリスク、非定型BSEについての知見などを専門的な文献をもとに審議してきた。
 酒井健夫座長(日大獣医学科教授)は前回までの議論を次のようにまとまた。
 ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の発生はBSEの発生との関連があり、BSE発生が減少するなかvCJD発生も減少。また、牛にくらべてヒトでは感受性が低い(感染性が弱い)。
 非定型BSEの確認例は8歳以上が中心。感染によるものではなく孤発性と考えて評価することが可能。
 米国やカナダの飼料規制には一定の有効性を認めることができる、など。
 これらをふまえ、諮問内容のようにBSE対策を見直した場合の食品健康影響評価を行っていくことが可能である、とした。ただし、3つめの諮問事項である月齢制限を30か月齢からさらに引き上げた場合のリスクについては検討手法が不十分であるとして、今回は30か月齢に引き上げた場合のリスクについて先行して評価することを決めた。


◆事実関係のみ記述

 ただ、この日示されたたたき台は評価書といっても、専門文献などに発表された事実の記述が中心で、専門家がそれらをどう評価するのか、国民にとって分かりにくい点も多い。
 BSEは1992年に世界で37万頭あまり発生しているが、その後、大幅に減少し、2010年には45頭、2011年には29頭にとどまっている。たたき台ではこの理由について、英国をはじめ各国の飼料規制の導入が要因だとしている。
 日本では2001年からこれまでに36頭が確認されているが、09年以降はゼロ。03年以降に生まれた牛からは陽性牛が確認されていないことから、03年からはBSE感染を起こすような飼料は流通していないとしている。
 こうしたことから「国内外ともにBSEの発生リスクが大幅に低下していることがうかがえる」としている。
 ただし、飼料規制については国によって違いがある。日本では特定危険部位(SRM)の飼料への使用は全面的に禁止されているが、米国では30か月未満の脳や脊髄などの反芻動物以外への利用は認められている。また、米国では食肉処理の際のSRMよりも、飼料規制の際のSRMのほうが範囲が限定されているという。こうした事実を記載はしているものの、これはどう評価されるものなのか、不明だ。


◆検査体制はどう評価?

 日本での現在の規制、すなわち「20か月齢」を基準としたのは、21か月齢と23か月齢でのBSE発生例が確認されたからである。
 その後、研究が進みこれらの牛の脳を牛型の遺伝子を組み込んだマウスへの接種実験などが行われたが、評価書では「感染性が確認されなかったという知見が得られた」とされている。
 BSEは潜伏期間が4〜6年と考えられており、たしかにわが国での発生例も比較的高齢牛が多い。そのなかで21か月齢で発生が確認されたのだが、それは他への感染性がない事例だったとの実験結果が得られたという。これをわれわれはどう理解すればいいのか、その点についても記述はない。
 また、多くの国民が関心を持っている米国の実態については、何度も指摘されているように健康な牛についての食肉検査は日本と違ってそもそも実施されていない(カナダも同じ)。
 そのほかBSEのサーベイランスについても年間3000万頭以上をと畜する米国だが、高リスク牛を対象に年間4万頭程度で実施されているにすぎない。日本は01年から11年まで1200万頭以上の検査が実施されてきた。
 ただ、米国のこのような食肉検査の未実施やサーベイランスの取り組みについてはOIE(国際獣疫事務局)基準を満たしているものと評価されている。


◆説明責任を強調

 こうした内容のたたき台をめぐり、この日の議論では各国の状況やこれまでに得られたBSEやヒトのvCJDなどに関する科学的知見といった項目ごとに委員会としての評価を整理した「まとめ」の部分を記述すべきではないかとの意見も複数出された。
 そうした「まとめ」をもとに結論部分となる食品健康影響評価をまとめる作業を進めるべきだとの指摘だ。
 ただ、最終的な評価をどんな視点から記述するかも焦点になる。BSEの発生は世界的にも減少していることは事実で、各国が何らかの飼料規制やSRM除去などの対策を取っていることもまた事実ではある。これを時系列的にみれば、ピーク時にくらべ統計的にはBSEやvCJDの発生が減ってきているとなる。
 しかし、リスクを比較する場合、こうした「単に時期の比較」だけでいいのか、という意見も委員から出された。日本と他国をくらべるのであれば、「国内と国外の(リスクの)比較が必要ではないか。統計値でいけば(BSEの発生等)下がっている。が、それでいいのか」という指摘だ。
 酒井座長はリスク評価については次回以降にたたき台を提示して議論する方針を示した。その際は委員間で「共通の情報と認識で進めていきたい」と話し、この日、欠席した委員からも意見を聞いて起草委員を中心に評価書づくりを進める。諮問どおり月齢制限の引き上げを認める答申となるのかどうか。酒井座長は「国民の方々が納得できるものにしなければならない。説明責任がある」と強調していた。


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