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福島県民の苦悩の日々は続いている 福島の現状と今後の課題テーマにIYC全国委が学習会

 2012国際協同組合年(IYC)全国実行委員会は、9月13日、東京のJAビルで「福島の現状と今後の課題」をテーマに、第4回IYC学習交流会を開催した。

 この学習会は、「東日本大震災や原発事故により、地域社会崩壊の苦境に立たされる中で、福島では地元協同組合が地域復興に向け奮闘を進めているが、復興に向けた課題は依然として山積み」しており、「地元協同組合の取り組みを学び、今後協同組合または個人としてできそうなことを考えあう」ことを目的に開催された。


◆生産者と消費者はともに被害者

小山良太准教授 学習会ではまず、小山良太福島大学経済経営学類准教授が「東日本大震災・原発事故の復旧・復興から国際協同組合年を考える―放射能汚染から食と農の再生―」をテーマに基調講演を行った。
 このなかで小山准教授は、原発事故による放射能汚染問題は福島県だけに限定される問題ではなく、本来は国が責任をもって対処すべきだが、国はその責任を果たしていないと指摘。放射能汚染と損害状況の現状分析がないなかで復興計画・除染計画(福島県除染費用4400億円、飯舘村試算3200億円)を実施したり、法的根拠がないままでの放射性物質検査体制(米作付制限地域における野菜の生産「自粛」)、さらに国・県・市町村・農協などの役割分担がなされていない(復興庁の役割不明確、自主検査と国のモニタリングに関する法的根拠がない)などの問題が生じているという。
 そのため適切な情報が消費者に届いておらず、消費者の不安が増大し「風評」被害となっていると指摘したうえで「生産者、消費者双方が被害者である。被害者同士が対立しあう関係は悲劇」だと語った。

(写真)
小山良太准教授


◆詳細な汚染マップと作物選択の体系性確立を

 こうした問題を解決するためには、「安全性」を向上させる検査体制は必要だが、そのためには、現在のように各省庁がそれぞれ独自の調査や検査を行っている状態を是正するために、放射性物質「検査」における「法令の整備が緊急に求められる」。
 さらに食品における放射性物質規制値の厳格化に対応するためには生産段階での低減・抑制措置が必要であり、そのためには農地一枚ごとの汚染マップが必要不可欠であるとし、チェルノブイリ原発事故後のベラルーシやウクライナが詳細な汚染マップの作成と土壌分析を行い、土壌と作物ごとの放射性物質移行(蓄積)関係を明らかにし、作物選択の体系を構築した事例に学ぶべきだと強調した。


◆土壌スクリーニングプロジェクへ支援を

会場には多くの人が集まった。 その後、地元協同組合の取組事例として、JAそうまの山田登原発損害賠償・補償対策班長が「『咲かそう、そうま』復興・再生をめざす『タネ』まき」と題して、東日本大震災(地震・津波)、原発事故被害に立ち向かう現地の状況を報告し「みんなでタネをまきましょう。光あふれる『未来』のために」と結んだ。
 福島県生協連の佐藤一夫専務理事は「原発事故はまだ収束しておらず、福島県民の苦悩の日々は続いています」と語り、福島県の生協のこれまでの取組みを紹介するとともに、福島県生協連・福島大学うつくしまふくしま未来支援センター・JA新ふくしま・地産池消ふくしまネットとの協同事業として、JA全中や日本生協連などの協力を得て、福島の農地の放射性物質分布調査を行う「土壌スクリーニングプロジェクト」への支援を訴えた。
 また、日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)の田中羊子東北統合本部長が「震災復興のとりくみから見えてきたこと」と題し、日本労協連の被災地における取組事例を報告した。

(写真)
会場には多くの人が集まった。


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