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「地域社会のため、JA共済制度を守り育てる」 懇話会で今尾氏が講演

 農協、漁協、森林組合、生協、信用金庫など協同組合関係機関のOBらで組織する協同組合懇話会は、9月19日、東京・新橋の共栄火災本社ビルで40余人の参加者を集め、定例研究会を開いた。

◆日本は規制改革で改悪された

 今回の研究テーマは、「共済に対する米国の意見書と韓国の共済制度の問題点」として、共済総合研究所の今尾和實理事長を講師に招いて行われた。
 TPP(環太平洋経済連携協定)をめぐる動きの中、農林漁業、医療、保健、共済など国民生活の根幹を揺るがすような熾烈な規制緩和と自由競争化の攻勢がある。とくに、共済制度に対する影響分析やその対応策について関心が高まっているだけに、時宜に適した報告だった。
 今尾氏は、1985年9月のG5のプラザ合意に遡り、「ドル安と貿易収支是正を狙った米国の遠大な戦略による世界経済の流れを捉えて、米国主導の過度な自由主義経済の推移に注目すべき」だとした。わが国は、前川レポートが出され急速な規制緩和が図られ、郵政民営化、再度の労働法改正による雇用条件の悪化、医療制度改革による医療の劣化など、国内経済と市民生活への不当な国際化が進み「規制改革で改造された日本」になったと指摘した。
 そして注目すべきは、日本のJA共済と全労災等制度共済を名指しで批判し、改革を強要した「在日米国商工会議所(ACCJ)の意見」に対する反論である。
 JA全共連と全労災制度共済が、金融専門家(金融庁)でない省庁の検査基準の、緩く透明性・厳格性の低い監督下にある、との批判に対しては、金融庁の管轄ではないのは事実だが、JA共済は農協法の適用の中にあり、監督官庁である農水省は、「協同組合の社会的役割を熟知、指導も専門的である」とし、問題はないと明言。そもそも内政干渉で許しがたいと痛烈に反論した。

◆韓国農協の組織改編を直視すべき

 さらに今尾氏は、韓国農協中央会の組織改編問題にも言及した。
 本年3月の農協法改正により、経済事業と金融・共済事業が分離され、それぞれが持株会社に運営が移管された弊害を取り上げた。農協中央会からの経済、金融、共済事業分離問題は、もともと韓国では、1994年から論議されてきた懸案事項であったが、米韓FTA交渉が拍車をかけたのは否定できず、他山の石と厳粛に直視すべきだとした。
 今尾氏は、TPPや日米FTAなどの外圧は、大きな危険性をはらんでいることを見据え、地域社会、組合員のために賀川豊彦の相互扶助理念を礎にしたJA共済制度を守り育てなければならないと結んだ。
 質疑応答の中で、東日本大震災に当たって、被災組合員に対して1兆円にも及ぶ共済金を速やかに支払い、地域社会の復興に懇切で多大な貢献を果たしたと高く評価する見解が出され、全共連に対して、「一層モラリティの高い共済事業の発展を期待する」とのエールが贈られた。


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