農政・農協ニュース

農政・農協ニュース

一覧に戻る

BSE対策の見直しを了承  厚労省の審議会 委員、国民への十分な説明を求める

 厚生労働省の食品衛生分科会・伝達性海綿状脳症対策部会合同会議が11月6日に開かれ、BSE対策の見直しについて審議した。審議会では対策の見直し内容について了承したが、委員からは国民の意見を聞くことや十分な説明を求める指摘が相次いだ。

◆国内措置の変更は来年度から

 10月22日の食品安全委員会の答申を受けて厚労省は国内措置、輸入規制ともに「月齢規制」と「特定危険部位(SRM)」の範囲を見直す。
 国内では検査対象の牛を現行の「20か月超」から「30か月超」へと引き上げる。除去すべきSRMもこれまでは全月齢の頭部(舌と頬肉は除く)、せき髄、回腸遠位部だったが、今後は30か月齢以下の牛では「扁桃」と「回腸遠位部」だけをSRMとし、除去の対象とする。このため30か月齢以下の牛の扁桃以外の頭部やせき髄は流通させることも可能となる。せき柱についても30か月齢を超える牛についてのみ食品衛生法の規制対象とする。ただし、せき柱の範囲についても見直すことにしており、近く食品安全委員会に見直し案の評価を依頼する。
 厚労省はこうした国内措置の見直しについて今月から意見募集(パブリックコメント)を行う。その後、再度審議会に報告をし省令の改正等を行う。厚労省の担当者は、食肉処理施設などでの検査対象月齢の変更に伴う体制整備や、特定危険部位の分別管理体制などにかかる期間をふまえ、「新制度は新年度から施行したい」との考えを示した。

nous1211070401.gif

(上の図はクリックすると大きな画像が開きます)

◆国内での検査はどうなる?

 国内でのBSE検査は平成13年の1頭目の確認で全頭検査体制がスタート、その後、食品安全委員会の評価をもとに平成17年8月から現行の「20か月齢超」となった。しかし、実際は地方自治体は全頭検査を実施してきている。その理由として厚労省は「20か齢超」基準では9割が検査対象となったため、全頭検査をしても自治体の負担が少なくてすんだことや、近隣の自治体に追随したことなどを挙げた。しかし、当時の多くの国民の不安に応えるものだったいえる。
 これが今回、「30か月齢超」に引き上げられると処理される食肉の7割が検査不要になるという。ただし、和牛の場合は平均出荷月齢が生後30か月だといい、このため和牛ではBSE検査をした牛と検査不要の牛が出てくる可能性もある。もちろん生産現場の努力も含め飼料規制等の対策によって国内のBSE発生は09年以降は確認されていないが、食肉流通の場では混乱も招きかねないことも考えられる。これに対し厚労省担当者は「(全頭検査は)科学的に必要のない検査だということを国民に説明していく必要がある」と話す。

◆輸入条件は二国間で協議

 一方、輸入規制については月齢制限を「30か月齢以下」に引き上げる。輸入できる国は米国、カナダに加え、フランスとオランダからも可能となる。
 また、SRMの範囲については30か月齢以下を前提として「扁桃」と「回腸遠位部」に見直す。国内の基準と同様だ。
 厚労省は米国など関係国に食品安全委員会からの答申内容をすでに通知しており、今回示した条件に基づく対日輸出基準とその管理プログラムなどの提案を求めていくという。提案が示されれば2国間で個別課題についての協議を進めていくことになる。

◆リスク管理に厳しい声

 「30か月齢」は多くの国でBSE対策の基準となっており、「米国でも30か月齢が区切り。(今後の対日輸出は)通常のオペレーションに組み込まれていいくことになる」(厚労省担当者)などと日本への輸出条件は各国とも受け入れやすいものだという。ただし、ビーフジャーキーや挽肉などの加工品については分別管理が難しいとしており輸入が認められることはないとみられる。
 しかし、そもそも月齢の確認は日本のようにトレーサビリティシステムがあるわけではなく「歯列」による確認だ。また、食品安全委員会が行った意見募集でも米国の飼料規制について厳しい意見が多数寄せられたほか、輸入条件違反事例も多いことなどが懸念されている。さらに今回の食品安全委員会の答申は各国の飼料規制が確実に行われていることを前提にした評価である。
 これらをふまえこの日の会議では委員からリスク管理機関である厚労省の対応が問われるとの指摘も出た。
 これに対して厚労省は「月齢は相手国しか分からないこと。安全性確保は第一義的に業者だが、輸出国政府との間で遵守体制の確認をつめていきたい」と話したほか、定期的な査察なども行っていることなどを述べるにとどまった。

◆意見募集は実施せず?

 また、今後の手続きは国内措置と異なり意見募集(パブリックコメント)は実施せず、二国間協議と現地調査を行い国民への説明を行うとしている(図参照)。国内措置の変更には省令改正を伴うため、その前に意見募集することが法律で義務づけられているが、輸入規制の変更についてはその義務づけがないからだという。
 これに対しては委員から「本当に理解を求めようと思うなら十分な手続きをとるべきだ」との強い指摘が出た。厚労省は法律に基づく意見募集はできないものの、何らかのかたちで国民からの意見を聞くことを検討すると表明した。国民が十分に納得できる対応が必要だ。


(関連記事)
食品安全委員会がBSEの規制緩和を厚労省に答申 (2012.10.23)

BSE対策の見直し「反対」が過半 意見募集結果 (2012.10.19)

BSE対策見直し、8月にも評価書のたたき台  プリオン専門委 (2012.07.31)

病原体はどこから来たのか? 非定型BSEとは?  まだ不明な点が多いBSE 対策の見直しを考える (2012.06.29)

(2012.11.07)