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時論的随想 ―21世紀の農政にもの申す

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(66) 協同組合法制の整備を今こそ

・政府の方針は?
・法制化しては触れず
・3年前の総理あいさつの精神はどこへ?

 本年は国連が宣言した国際協同組合年(IYC)である。その宣言を行った時の国連総会決議は、"全加盟国...に対し、この国際年を機に協同組合を推進し、その社会経済開発に対する貢献に関する認知度を高めるよう奨励"するとともに"適宜、協同組合の活動に関する法的行政的規制を見直し...急速に変化する社会経済環境における協同組合の成長と持続可能性を高める"よう"各国政府に対して...促し"ていた。

◆政府の方針は?

 本年は国連が宣言した国際協同組合年(IYC)である。その宣言を行った時の国連総会決議は、“全加盟国…に対し、この国際年を機に協同組合を推進し、その社会経済開発に対する貢献に関する認知度を高めるよう奨励”するとともに“適宜、協同組合の活動に関する法的行政的規制を見直し…急速に変化する社会経済環境における協同組合の成長と持続可能性を高める”よう“各国政府に対して…促し”ていた。
 この国連決議に沿って、JAグループ、漁協、生協、有識者などでつくるIYC全国実行委員会は、今年の1月、“協同組合に関しての原則を明らかにして、関連法規の統一的理念を示す”協同組合憲章の草案を示し、草案を参考に憲章をつくることを政府に要請した。“これを受けて、政府はインターネット上の「政府広報オンライン」で協同組合に対する基本的考え方を示した”ことを9・28付日本農業新聞が報じた。同報道によると“政府広報に掲載された政府方針の趣旨”は、

(1)協同組合の価値と原則の尊重
 協同組合にさまざまな政策を適用する際は、協同組合の価値と原則にのっとった協同組合の価値に留意する。
(2)協同組合による地域社会の持続的発展への貢献を重視
 協同組合が地域の持続的発展に貢献することを重視。地域づくりや震災復興などに当たっては、地域経済の有力な主体として位置付ける
(3)協同組合を事業や経営の担い手として位置付け
 多くの人が事業や経営に参加できる仕組みが求められていることから、公的部門と営利企業部門だけでなく、民間の非営利部門としての協同組合の発展に留意する


となっている。

◆法制化しては触れず

 ここにあげられている(1)、(2)、(3)は、IYC実行委憲章草案が“協同組合政策に取り組むにあたって、基本理念をふまえたうえで”“尊重すべき”原則として示した5原則のうちの3原則であり、草案はこの3原則とならんで、“協同組合の設立の自由を尊重する”“協同組合の自治と自立を尊重する”を掲げていたのだが、それについてはふれていない。国連が“全加盟国に…奨励”したことに応えるにはこの程度で充分としたのであろう。
 問題は、国連が“各国政府に対して…促し”た“協同組合の活動に関する法的行政的規制を見直”すことについては何の言及も無いことである。協同組合に関しての法的整備の問題については、IYC実行委の憲章草案でも“協同組合が新しい公共の担い手として取り組めるよう、協同組合に関する法制度について必要な見直しをおこなうとともに、協同組合に共通する法制度についての検討を進める”としていたことだった。が、これについては目下のところ政府からは反応は無いようだ。
 IYC実行委が求めている憲章制度について、“政府は「関係する省庁が多岐にわたるため、各協同組合が関係省庁と相談して了解を得る必要がある」(内閣官房)と積極的な姿勢はみられない”と日本農業新聞は報じていた。“協同組合に共通する法制度についての検討”など、ましてや論外、ということなのであろうか。

◆3年前の総理あいさつの精神はどこへ?

 次の一文をご記憶の本紙読者は、多数いらっしゃるだろう。

 “今後、日本がめざすべきは、すべてを政府に依存する政府万能主義でも、格差を生み出し、弱者を切り捨てながらすべてを民間にゆだねる市場原理主義でもない。国民生活を第一とする国民主権、住民による行政を実現する地域主権、そして自立を目指す個人が他者を尊重しながらお互いが助け合う自立と共生、これら三つの理念を実現することにより、国、地方、自治体、国民がそれぞれの役割を生き生きと果たしながら社会全体を構成していく、この姿こそめざすべき日本の在り方だ。”

 09・10・10付本紙が紹介した前回のJA全国大会における鳩山元総理の“あいさつ”の一節である。
 今回のJA全国大会で政府を代表してどういう“あいさつ”がされるのか、現時点では知るよしも無いが、民主党初代総理のこの精神が民主党に引き継がれていたとしたら、協同組合に関する“法的行政的規制を見直”すことを“促し”た国連の議決を無視できるはずはなく、IYC実行委員会の要請に応えて内閣官房が自ら“多岐にわたる”“関係省庁と相談”したことであろうし、“あいさつ”では当然にその問題への対処方針も語られることであろう。が、そういうことは期待できそうにない。JAグループ4連 トップインタビュー 「インタビューを終えて」で記しておいたように、JAにとって“総合経営もできる一般協同組合法制の検討をすすめることが必要になっている”のに、である。政府のこの対応ぶりを問題にすべきだ。

 

【著者】梶井 功
           東京農工大学名誉教授

(2012.10.15)