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私と農業

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二十一世紀ナシの進化と発展に心よりエール

その3(最終回)

 故郷鳥取の県花は二十世紀ナシの花です。二十世紀は鳥取県を代表する農産物で、春の日差しを受けながらの人工受粉作業は風物詩となっています。母が近隣の集落へ受粉作業の手伝いに行っていたことを思い出します。子供の頃、秋の運動会に食べた二十世紀の味は格別でした。

 故郷鳥取の県花は二十世紀ナシの花です。二十世紀は鳥取県を代表する農産物で、春の日差しを受けながらの人工受粉作業は風物詩となっています。母が近隣の集落へ受粉作業の手伝いに行っていたことを思い出します。子供の頃、秋の運動会に食べた二十世紀の味は格別でした。味噌蔵に隠し置いてあったナシをこっそりかぶりついて食べたことも懐かしい思い出です。今でもその頃の味が忘れられません。
 故郷を離れてからは、毎年9月になると生家から懐かしい味が贈られて来るのが楽しみでもありました。
 千葉県から鳥取県に二十世紀が導入されて100年、黒班病の克服など多くの課題も産官学協同で解決し、今日の二十世紀栽培法が定着しました。鳥取県民の支えも大きな力でした。
 近況を確かめるべく「二十世紀梨記念館」の館長、井上氏(大学の同級生です)を訪ねてみました。
 子供の頃の味について聞いてみたところ、今流に言えば「完熟二十世紀」とのことでした。なるほどおいしかった訳である。
 全国で梨栽培は約1万5000ha、主産地は千葉、茨城、鳥取、福島、長野、栃木の6県で約8000ha。青ナシは14%、赤ナシは75%の構成比です。青ナシの二十世紀は鳥取県が半分を占め、他県は赤ナシの幸水や豊水が栽培の中心となっています。2004年現在で、青ナシはピークの1980年に比べて半減、赤ナシは約2倍に伸長しています。
 理由は、消費者が緑色の果実を好み、生産者は早い出荷ほど価格が高いので、甘み不足の未熟のうちから出荷してきたが、幸水や豊水中心の時代になり、消費者は甘さを求める傾向が強くなっているからです。
 鳥取県では、二十世紀の前に出荷できる青ナシと幸水や豊水より甘さの強い赤ナシの新品種を育成し、新しいナシ産地の再生に取り組んでいます。
 果物には季節感があり、食べ頃があります。ナシは若者に人気が高いので、新品種で体質強化を図り、本来の味を備えた「旬」の二十世紀で、新たなる100年をめざしたいですね。
 二十世紀ナシがさらなる進化をとげ、ますます国内外の消費者に好まれるナシとして発展することを期待して、心よりエールを贈りたいと思います。

その1その2はコチラから)

【著者】松長政幸
           明治製菓株式会社顧問

(2009.10.27)