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シリーズ・地域と命とくらしを破壊するTPP―その本質を考える
TPP賛成?反対?

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どう考えますか? TPP   全国市町村長へのアンケート結果より

 4月28日付で更新した「全国市町村長に聞く―TPP問題」に引き続き、全国の市町村長から寄せられたご意見を掲載します。(本紙編集部で抜粋させていただきました)

【お詫び】
 千葉県市原市市長の佐久間隆義氏の氏名に誤りがありましたので、訂正させて頂きました。関係者の皆様に多大なるご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

【北海道八雲町・川代義夫町長】
食料ばかりに注目が行き過ぎている。食料保全も当然大切だが、外国人労働者を受け入れ、日本の技術を全て外国に渡すのか、よく議論する必要があるのではないでしょうか。
【北海道仁木町農政課 三沢世紀さん】
本町は農業を基幹産業とする町であり、TPPに参加することにより、市場に価格差の大きい輸入農産物が入ってくることになる。多くの農産物が市場を失い、農家経済を悪化させ、まわりまわってすべての部門に悪影響を及ぼすことが想定される。
【北海道浦臼町・岸泰夫町長】
町の主産業は農業。農家には、少子高齢化、農業離れ、集落崩壊、価格低下、農業者の高齢化、先行き不透明、など挙げればきりなし。農業主体の過疎地の自治体も崩壊の危機にある。
【北海道北竜町・西野陽一町長】
TPPは、わが国がこれまで開放困難と位置づけてきた分野の規制廃止も含んでおり、食生活や産業、雇用など国民生活全体に劇的な変化をもたらし、国の形を変え国民生活と国家存立を危うくする大問題と考える。
【北海道訓子府町・菊池一春町長】
町の農業に壊滅的な影響をもたらし関連企業の営業は立ちゆかず、地方自治体、町づくりの根幹に関わり強く反対したい。貿易の自由化にはメキシコ、NZ、豪州などでも農業だけでなく、健康、労働、文化、雇用、環境政策にも悪影響をおよぼし反対運動が起きている。TPPは誰のための政策なのか疑問を感じる。
【北海道興部町・硲一寿町長】
本町の一次産業である、酪農、畜産、水産業はすでに海外との取り引き(生産資材、製品)の中で経済活動を行っていて、根底から全否定は不可能と考える。しかし、このTPP交渉の背後に何があるのか? 日本国としてどのように食糧自給率を高めて行くのか? 外交上の問題点等々を十分に私達に説明する義務が国にはあり、その上で交渉に参加するのが行政手続上、不可欠と考える。
【北海道本別町・高橋正夫町長】
電化製品や自動車等の優良な日本製品の輸出増についても、日本同様モノ余り(デフレ傾向)の米国の輸出増加戦略とのバッティングなど、思うように輸出が伸びないことも懸念される。多くの地方都市がそうであるよう第1次産業及びその関連企業で成り立っている産業構造下においては、根本的な打開策を講じないままTPP締結となると地域経済が受ける打撃は非常に大きなものとなる。
【秋田県男鹿市・渡部幸男市長】
TPPへの参加・不参加は短時間での拙速な判断ではなく、国民の間で十分な議論を重ねることが必要と考える。
【福島県下郷町・湯田雄二町長】
日本のGDPにおける第1次産業の割合が1・5%であり、この1・5%を守るため98・5%を犠牲にしているなどの「第1次産業VS他産業」という考え方ではなく、各分野を並列的に考慮し、食の安全と食文化をどのように守っていくか、また、農地の国土保全効果に果たす役割について議論すべきであると思う。国民的な議論なしのTPP参加には賛成しない。
【福島県猪苗代町・津金要雄町長】
基本的に自国で生産したものが利用されず、他国で生産したものが使われるようになれば、どうなるか自明のことである。
【埼玉県加須市・大橋良一市長】
本市の主たる産業は農業(埼玉県内第1位の水稲作付面積と収穫量)である。国内自給率の向上や産業としての農業を確立するためにも、TPPへの参加を表明する以前に、国として必要な農業政策が十分講じられていない状況であることから、現状では参加に反対である。なお、農産物に関して国は、東日本大震災に伴う原発事故による風評被害払拭に向けた対応を最優先に進めてほしい。
【埼玉県久喜市・田中暄二市長】
TPP協議への参加で、米・豪などの農産物輸出国から農産物の関税撤廃を求める強い要求が出されると予想される。関税を撤廃した場合、その生産基盤が完全に崩壊する契機となりかねない。
 他方で、輸出国としてのわが国にとってメリットが存在している点も否定できないので、政府は参加の効果をあらゆる要素について具体的に数値で示して広く国民に周知し国民レベルの慎重な議論を通じて合意形成を図ってから判断するべきと考える。
【埼玉県吉見町・新井保美町長】
グローバル化する世界で多くの国が自由貿易を行っていこうとする趨勢のなか、わが国だけが関税をかけ続けることができるのでしょうか。農業は食糧の安全保障、景観の維持、国土の保全など極めて重要な産業だ。この分野が、国際競争力が弱いとすれば、強い分野で得た利益の一部を弱い分野にまわし、日本の産業を総合的に振興する、そういう施策をとった後にTPPに参加すべきだと考えます。
【千葉県市原市・佐久間隆義市長】
日本がTPP交渉へ不参加の場合、臨海部に数多くの企業が立地する本市では、市民生活や関連産業への影響が、少なからず懸念されるものと考えている。しかし、国では、高いレベルの経済連携の推進と食料自給率の向上や国内農業振興とを両立させ、持続可能な力強い農業を育てるための「食と農林漁業の再生推進本部」を設置したところであり、今後の国の動向を見守って行きたいと考えている。
【千葉県八街市・北村新司市長】
農業の現状や安定的な農産物の供給、世界の資源の管理から見て、国内農業への深刻な打撃、食料自給率の低下が避けられないため、これ以上の自由化には反対。
【東京都稲城市・石川良一前市長】
水田を中心とする農業は日本の文化であり、文化防衛という視点で反対する。
【長野県岡谷市・今井竜五市長】
アンケート到着後、東日本大震災が発生し、未曾有の大災害となっております。この災害は国全体の社会、経済活動にも大きく影響するものと思われ、TPP参加問題は今一度検討していかなければいけないと思っている。国は十分な検討をしていただきたく、また、地域が判断できる統一した参考資料の公表を望みたい。
【長野県川上村・藤原忠彦村長】
この行為により、国内の野菜生産の体系が大きく変わると予想される。本村は農業立村であるが故、現体系の崩壊は、この村の存続にも関わること。影響は本村全体に及ぶものと考えられる。
【長野県信濃町・松木重博町長】
結果としておそらく失業者が増し、社会不安になってゆくと心配しています。
【兵庫県新温泉町・岡本英樹町長】国内農業は壊滅的な打撃を受けるとともに、食料自給率の向上や食料の安全・安心な安定供給などの政府の方針に逆行して食料の安全保障を脅かす重大な問題である。産業構造をどうするか将来戦略を確立することが先決である。
【香川県琴平町・小野正人町長】
わが国の「食の安全性」という観点から、現時点でのTPP参加には慎重を要する。「国土の保全」「日本特有の風土」の維持・保全からも問題・課題あり。一方で今後10年先の農業が高齢等により、どうなるかという方向性を見い出さなければ、単にTPPの議論をしていても意味がない。
【愛媛県伊方町・山下和彦町長】
食料自給率50%を掲げる政府は、食料の安定供給の確保、農村振興等に十分配慮し、これまでの姿勢を貫徹してもらいたい。
【愛媛県鬼北町・甲岡秀文町長】
日本人は農耕民族。国の根幹を崩すTPPには絶対反対である。農業の実態を知らずに農業を語ることはいかがなものか。
【高知県安芸市・松本憲治市長】
当市は日本一の施設園芸の産地、農業立市のまち。農業を守り育てることが、市長の責務である。農業が壊滅的な打撃を受けると市が倒産する。
 国のTPP(農業対策)対応が見える時点で十分な検討も加えたい。
【熊本県宇土市・元松茂樹市長】米以外の農作物に対する影響や農業関連産業・農業関連団体等に与える影響についてまともな検討すらなされていないように感じる。参加の可否を決定する前に議論を尽くすべき。このまま参加をしてしまうと日本の農業は崩壊し、地方は破綻する。
【熊本県苓北町・田嶋章二町長】
TPPへの参加によって、農林水産業が大きな打撃を受けることは、日本の食の安全保障の見地から絶対に容認できない。食料自給率を向上させ安定供給を推進するために、持続可能で足腰のしっかりとした日本農業を育てる必要がある。だたし、単に「TPP反対」ではなく何をどうすべきか! 自治体と農業団体が、一丸となって政策の要望はもとより農家の育成にしっかりと取り組むべきである。
【宮崎県綾町・前田穰町長】
内需拡大に取り組むべきである。地域主権を確立するには農林業の安定振興が大事である。
【宮崎県西米良村・黒木定蔵村長】
平和で安全な暮らしの継続は全世界の人々が願う共通の課題であり、その実現のために政治も経済も存在する。しかし、各々の国や地方には歴史的・文化的背景の違いや立地条件・自然環境等、守り育てるべきものが沢山ある。
 一部の利益追求や過剰競争によって富の分配が片寄る様な政策は許されない。共存し共栄するシステムを構築すべきである。段階的展開が必要であり、今の日本にTPPは百害ありで一利なし。世界中の人々にとっても同じ事である。
【鹿児島県日置市・宮路高光市長】拙速な対応には反対。十分な国内議論が必要。東日本大震災対策を最優先すべきでTPP論議は復旧後にすべきである。
【鹿児島県いちき串木野市・田畑誠一市長】
本市は、工業も食品加工業が多い。日本の農林水産業が壊滅すると安心安全な製品をつくることが困難となり、ブランド力、競争力が低下し、事業に悪影響を及ぼす。このため、本市の雇用にも悪影響が出る。
【鹿児島県三島村・日高郷士村長】
経済的に世界総支配を目指すアメリカ型自由経済において、独創的日本型経済は困難になる。為替を固定相場にするのであれば、参加してもよいが、変動相場では大反対。
【沖縄県石垣市・中山義隆市長】
農家の生産縮小に伴う所得の減少が本市予算の歳入に及ぼすと考える。被保険者農家の未納が増える恐れも。食の安全が叫ばれ、生産者の顔写真入りでの食品等が提供されている日本において、TPP参加により食品等の安全に悪い影響があると考える。
【沖縄県竹富町・川満栄長町長】
本町では農林水産業は根幹。島の存亡にかかわる重大な事項(島嶼型海洋性自治体)。国は自給率向上に努力すべき(最優先課題)。離島をどう守るかを最初に政策として出すべき。


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(2011.05.12)